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二十四節気の養生法【2023 啓蟄】

 弥生三月、いよいよ草木萌動く季節になってまいりましたね。
 今日は春の3番目の節気「啓蟄(けいちつ)」ですね。「蟄虫啓戸」厳しい冬の間、大切な正気を漏らさないよう、土の中で冬ごもりをしていた虫たちも地上に出て来る季節ということですね。
 また、立春が過ぎ啓蟄のころには大気が不安定になり、雷が鳴ることがよくあり、この雷を「虫出しの雷」と言うそうで、雷に驚いて虫たちが這い出てくるので中国では「驚蟄(けいちつ)」と書くそうです。
暦便覧には「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也」とあります。

 各地で梅の花も満開になりつつあり、甘い香りが小鳥たちを引き寄せていて、まもなく桃の花もつぼみをほころばせ桃始笑ころになりますね。
地域によって多少の違いはありますが、日本の花鳥風月はどこも本当に素晴らしいですね。

 陰気が旺盛だった冬から、陽気が旺盛になる夏至に向けて「気」は移ろい変わって自然を彩ります。
 春の主気は「」、東からの暖かい風で枯れていた山々も青く色づいてきますね。しかし邪気となると「風邪(ふうじゃ)」となり、中国大陸では大風が吹いて砂漠の黄砂が砂嵐となって街を覆います。日本でも九州など大陸に近い地域では、毎年黄砂に悩まされますね。私の住む京都でも風の強い日や風向きによっては、洗濯物や車が砂で汚れることがあります。
黄砂が街を襲うようになるといよいよ「春」の到来ですね。

古の昔から中国各地を襲う黄砂

今月の癒しの庭園 「京都御苑の梅林」

 今月はお庭ではなくこちらも皆様ご存じ京都御苑…京都市民の憩いの場「御所」です。ここには「梅林」があって、この季節は梅の花が京都の人々を楽しませてくれます。

 京都御所は、「鳴くよウグイス平安京」でご存じ794年の遷都以来、1869年明治天皇が皇居に移られるまで千年以上もの間、天皇の住まいとされていた場所です。南北は丸太町通りから今出川通までの約1.3㎞、東西は寺町通から烏丸通までの0.7㎞と広大な広さで、しかも京都のど真ん中にあります。
江戸時代にはたくさんの宮家や公家の屋敷が立ち並んでいたようですが、遷都に伴って取り除かれ皇宮地となり、その後国民公園として開放され明治時代からさまざまな植栽が行われて、今では多様で豊かな樹林があちこちに形成され四季折々を彩っています。

200本の梅の木が植えられた梅林

 梅林は、歴史で習った「蛤御門の変」で有名な蛤門から入ってすぐのところに、梅林や桃林があり良い香りを放っています。

京都御苑散策マップ

 梅林の中にある「出水の小川」。もう少しすると水遊びを楽しむ子どもたちの姿が見られます。京都の夏は恐ろしいほど暑い!

出水の小川

紅白の梅や蝋梅も見ごろとなっています。
ベンチに座っていると、川のせせらぎや小鳥のさえずり声が聞こえ、あたり一面に甘い香りが漂って、目も鼻も耳も癒されます。

メジロが遊んでます

東山を見通せる広い砂利道の先には大文字山が望めます。

 梅林のすぐ横には立派な枝垂桜があります。今はここにあることすら感じられない姿ですが、もうしばらくすると見事に満開になるでしょうね。

 今回は後ろ髪をひかれつつ立ち寄りませんでしたが、最近新しく甘味処やカフェなども出来ているそうで、桜のころにまたゆっくり出直したいです。やっぱり舌も癒してあげないと!(笑)

啓蟄の養生法

 「啓蟄」は、もう春の三つ目の節気ですが、太陽の南中高度も徐々に高くなり、気温も上がって草花も萌え始め、春らしくなるのはこれからですね。今までは春と言ってもまだまだ寒く冬の養生も同時に行う必要がありましたが、これからは本格的な春の養生が大切になってきます。

蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)

春の養生は「風」と「肝」がポイント

 陰陽五行の法則からみると、春は「(もく)」に属する季節です。木の性質は「曲直(きょくちょく)」と言って、幹は天に向かってスクスクと伸び、枝や葉、蔓(つる)などは横に横に伸び広がり、また根は地中深く伸びていくように、伸び伸びと伸び広がっていく特徴があります。 
このように伸び伸びと伸び広がる性質を持ったものは「」のグループに所属し、「」も木のグループで万物が生まれ伸びやかに育つ季節で、新陳代謝も活発になり、体内の陽気も動き始めます。
 また、「」と「」も春と同じ木のグループなので、春の養生法は「養陽防風」と「疏肝理気」で「」と「」がポイントになります。風邪(ふうじゃ)の侵入を防ぎ体内の陽気を養い、肝気を疎通させて気の巡りが滞らないようを調えることです。

カラダの中ある「風」

 中医学では、カラダの中にも風が吹くと考えます。
前回は、外風についてお話ししましたが、外風は黄砂や花粉、ウイルスなど外にある風邪が体内に侵入してさまざまな症状の原因となるものです。
 風邪(ふうじゃ)というと、このように自然界の風(かぜ)による弊害のイメージですが、内風と言ってカラダの中にも風が発生し心身に 影響を与えると考えます。
内風とは、カラダの中で発生する風邪(ふうじゃ)のことで、自分自身の食生活や生活習慣、精神状態や果ては物事の考え方や性格などその人の気性が原因の場合もあります。

肝って何???

春は「肝」を養い伸びやかに

 中医学でいう「」とは、体内で「疏泄を主る」「蔵血を主る」働きのことをと言います。臓器の名称ではなく作用や働きのことを言い、疏泄を主るとは、気を全身の隅々にまで巡らせる働きのことで、蔵血を主るとは、血を貯蔵し全身に血を巡らせて栄養を送り新陳代謝をコントロールする働きのことです。また肝は、精神や感情の調節も担っています。

 春は年度末を迎えて移動や転勤、卒業や入学や新学期、新しい会社に入社、また転居や移動など環境の変化も多く、その準備にも忙しく、ワクワクと同時に不安なこともあり、イライラしたり情緒不安定になりやすく、昔から「木の芽立ち」と言われるように、春は感情の調整機能を持つ「」を傷めやすい季節です。

「肝」の働きが失調すると

 疏泄を主ることが出来なくなり、気の巡りが滞り肝鬱気滞となり、その状態が続くとカラダの陰陽バランスが乱れ陰が陽を抑えきれなくなって陽気が暴走してカラダの上部に上昇し陽盛体質になり風が発生します。
陽盛は、余分な熱が溜まり実証に属します。

 そしてもう一つは疲労や睡眠不足、不規則な食事など冬の養生が足りないと肝主蔵血出来ず「肝血虚(かんけつきょ)」になります。蔵血を主ることが出来ず、血を全身に巡らせることが出来ないので全身を養えなくなります。陰血不足(血虚)による内風は虚証に属します。

このように肝が失調すると、カラダの中で風が起こりさまざまな体調不良や症状をおこしますが、これを肝風内動といいます。

 肝血虚になると気(エネルギー)の上昇も足りなくなり、元気がない、やる気が出ないなど気鬱や不安、ため息が多い、かすみ目、視力低下、眼精疲労、手足のツリや痙攣、まぶたがピクピクする、枝毛やキレ毛、薄毛、爪が割れやすい、爪の色が白っぽい、フワフワした揺れるようなめまい、不眠、生理不順、無月経などの症状が現れます。
 
 肝陽上亢は、熱が盛んになることが原因で良く起こりますが、これを熱極生風といい、上半身に気や熱が上昇し、イライラしやすい、怒りっぽい、すぐキレる、首や肩のコリや脹り、グルグルめまい、メニエル、不眠、脇肋脹痛(胸やお腹の脹った痛み)、眼痛、眼充血、眼底出血、網膜剥離)、鼻血、不正出血(崩漏)、不眠、多夢、頭痛、自律神経失調、情緒不安定、脳出血などの症状が起こります。

 特に女性は、生理不順や生理痛など「血の道証」と言われる婦人科系の諸症状が出やすくなるのも「」の失調の特徴です。

内風によるよくある未病

 中医学では、入院や治療が必要なほとではないけど、なんとなく体調が悪いという状態を「未病」と言います。肝風未病は進行状況により、肝鬱気滞、肝陽上亢、肝火上炎、肝陽化風、血虚生風、陰虚化風などに分けられます。
 内風の症状は、タイプの多さや変化のが激しいなどで、なかなか改善するのは難しいといわれます。とくに精神状態などに影響されることが多いので複雑化しやすいです。生活環境を変えたりストレス源を排除することは難しく、さらに気性や性格まではそう簡単には変わらないのでどんどん悪化していきます。

肝が傷むと脾や肺が傷む

 肝の働きが低下すると、五行の相生相剋により調和が保たれている状態が乱れ、肝木が傷んで脾土を過剰に攻撃(相乗)したり、本来金剋木で肺金が肝木を剋すのに肝木が肺金を逆襲(相悔)する作用が生まれます。
 それによって肝気犯脾、肝脾不和と呼ばれるストレス過剰や怒りによる食欲不振や消化不良、胃腸炎などが起こったり、肝気犯肺と言いストレス過剰による過換気症候群や喘息や咳が止まらなくなるなどが起こります。

春の養生でココロもカラダも健やかに

 肝血虚の養生は、「養肝補血」で、血を補う肝を養う気鬱を発散することが大切です。
 肝陽上亢の養生は、「平肝理気」で、上昇した気を下におろす、肝の余分な熱を冷ます、気の詰まらないようにし、全身に巡らすことが大切です。

「養肝補血」と「平肝理気」

 出来るだけ早い段階で、イライラやストレスを解消する食生活や生活習慣、生活環境を見直し未病を癒し、根本的な体質改善をすることが大切です。
 なにかにキレて瞬間湯沸かし器のようにいきなりカッとなるタイプも頭の血管が切れたりしやすいので非常に危険ですが、それよりももっと困るのが沸々と怒り続けるタイプです。「あのことが許せない」「なんで自分だけこんな目に…」「自分がこうなったのはあのせいだ」「あの人のせいだ」など、過去のことを引きずりずっと許せないで怒りの感情を長期間抱き続けるタイプの人は内風を発生しやすいタイプです。  
 上を見たらキリがなく下を見てもキリがない、「足るを知り」、煩悩、執着、嫉妬を捨て、物事にこだわりすぎず、出来るだけ日々穏やかなココロで過ごすよう心がけるべきです。このような感情を抱き続けるのは自分の肝を傷めることになるだけです。
 また、何事もテキトーにしろということではありませんが、物事をきっちりしないと気が済まないタイプやせっかちなタイプの人ほどこの陽盛内風を起こしやすいタイプです。

春の養生法で次の季節を健やかに

 中医学の知恵を生かして、病気にかかったり体調を崩したりする前に、「春の養生法」でしっかりカラダを整えておきましょう。
 中医学では、今の季節の養生をしっかり行っておくと次の季節を楽に過ごせると考えます。梅雨から夏に健やかに過ごすためにも、春の養生をきっちり行っておきましょう。

 陽の気が生まれる朝は、早めに起きて春の陽気を取り入れ、散歩やウォーキング、ストレッチや朝日をたっぷり浴びながらの太陽礼拝のヨガなどがオススメです。少し動きのあるヨガなど軽めの運動で「気」を巡らせましょう。疲れない程度がポイントです。深呼吸もストレスを解消し「気」を巡らせるのに効果的です。
衣服はあまりぴっちりした服などで締め付けずゆったりした服装や髪などもポニーテールなどで締め付けずゆったりがおすすめ。また、剋痧(かっさ)や髪をとかして頭皮を刺激すると、陽気を発散できて気分もスッキリ。
 お風呂でリフレッシュしながら、精神の安定や「肝」の養生に効くツボを刺激するのもおすすめです。
食材選びや適度な運動など、心身ともに元気を養う春の養生法を暮らしに上手く取り入れて、気持ち良く春を過ごしてください。

春におすすめの薬膳食材

 春は、カラダの陽気を養い、風邪(ふうじゃ)を防ぎ、肝の働きを健やかにして気の巡りを調えることが養生法なので、温性で、発散作用のある辛味、脾を補養する甘味、そしてに帰経する食材がオススメになります。
 肝を補うために「酸味」も使われますが、酸味は収斂・固渋作用があり陽気の成長や気の発散・疏泄を抑えるので、特に肝陽上亢がひどくイライラしたりストレス満載でいつも怒っていると言う人にはオススメですが、肝血虚や冷えると言う人は酸味食材は控えましょう。

春におすすめの薬膳食材

京都伝統中医学研究所の"啓蟄におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.「肝血虚」タイプにおすすめ薬膳茶&食材

 薬膳茶では、「そろそろダイエット茶」、「プレママ応援健やか茶」、「増血美肌茶」などですが、なんと言ってもイチオシは「なつめ薬膳茶」。
 薬膳食材では、「新彊なつめ」、「竜眼」、「枸杞の実」、「金針菜」、「蓮の実」、「黒きくらげ」、「紅花」など。 
 薬膳鍋セット「四物湯スープセット」は薬膳食材もセットでオススメ。
いろいろお豆のスィーツセット」でいろいろお豆のお粥もOK。

2.「肝陽上亢」タイプにおすすめ薬膳茶&食材

 薬膳茶では、「理気明目茶」、「気血巡茶」、「崑崙雪菊茶」、「茉莉龍珠茶」、「麗香龍珠茶」、「五望茶」、「カラダ潤し茶」など。
 薬膳食材では、「枸杞の実」、「はと麦」、「白きくらげ」、「山査子」、「緑豆」、「菊花」、「マイカイ花」、「茉莉花」など。

 3.漢方入浴剤

 ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」も、芳香浴で気の巡りを調えてくれるのでオススメ。

中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。

薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。
薬膳茶&薬膳食材専門店 京都 楽楽堂  本店公式サイトhttps://www.kyotorakurakudo.com
京都伝統中医学研究所 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/iktcm/
京都伝統中医学研究所 ヤフー店 https://store.shopping.yahoo.co.jp/iktcm/

 次回は、3月21日「春分」ですね。「暑さ寒さも彼岸まで」 いよいよ春が訪れますね♪ 年度末から新年度に替わる最も忙しくて環境が変わる時節です。慌てないようにしっかり準備して、ココロにもカラダにも余裕を持たせましょう。気候が荒れやすいので注意してお過ごしください。

 


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