見出し画像

二十四節気の養生法【2022秋分】

 今日は秋分の日。秋の四番目の節気。9月23日から10月7日(寒露の前日)までの2週間が二十四節気の「秋分」です。秋分二至二分の一つ。太陽黄経が180度を通過した時で 昼と夜の長さが同じになり陰陽が調和されている状態と考えます。
陰陽調和の状態を「中庸」と言い「過不足や偏りが無く、いつも変わらない状態」とされ、孔子も「中庸の徳が最も尊い」と教えています。
 暦便覧には「陰陽の中分となれば也」とあります。
 日本では「秋彼岸」と言って仏教的な行事の一つでもあり、秋分の日を中日として前後3日の7日間がお彼岸で、太陽が真東から昇り、真西に沈むのでその先にある西方極楽浄土にいる亡くなったご先祖様を敬いお墓参りをしたりおはぎをお供えして供養をしたりします。
(しかし、お彼岸の行事はほかの仏教国にはないそうですね)
 また「暑さ寒さも彼岸まで」とも言われ、冬の寒さや夏の暑さもお彼岸の頃には収まってくると言い伝えられていますね。
 古来中国では、「龍は春分に天に昇り、秋分に淵に潜む」と言われます。
天空で霖旱を司る龍も稔りの秋で仕事を終え淵に潜んで来年の春を待つように季は巡っていますね。 

今月の癒しの庭園 城南宮「神苑 源氏物語 花の庭」

 今回のお庭は、京都市伏見区、名神京都南ICのすぐそばにある城南宮という神社のお庭です。平安京に都が遷都されたときに国の安泰と都の守護を願って創建された神社で、幕末の戊辰戦争の発端となった「鳥羽・伏見の戦い」の際に薩摩軍が布陣を敷いて錦の御旗が翻ったところだそうです。
私の自宅もここからすぐ近くなので、城南宮の庭や花を愛でに季節ごとに良く訪れたことがあります。
 地元では、城南宮は「方除の神社」として知られ、地鎮祭など建物の工事などに方除祈願に良くお参りされます。

 伏見は、昔は「伏水」と書いたそうで、酒処伏見の銘酒づくりには欠かせない名水が各所に湧き出ています。
その中の一つが、城南宮にお参りの際に手を清める禊修(みそぎ)の手水が「菊水若水」という名水です。では、まずはこの名水で穢れを祓ってお参りしましょう。

 本殿を取り囲むように神苑が広がり、良く手入れされ季節ごとに美しい花に彩られます。特に春を告げる初春には紅白のしだれ梅が咲き乱れ、梅のとても良い香りに癒されます。また毎年春には、宮中で催された雅やかな曲水の宴が平安貴族の装束に身を包んだ歌人たちにより、王朝の雅な世界が再現されます。(※写真は公式HPより拝借しました)
春の訪れを感じにぜひ来年の春にお越しください。

春の訪れを告げるしだれ梅と落ち椿
うららかな平安の庭で催される曲水の宴

 神苑入り口から150本のしだれ梅が植えられた「春の山」を過ぎると、平安貴族のお庭を模した平安の庭が広がります。立派な錦鯉が水を切って優美に悠然と泳ぐ大きな池に段落ちの滝から清流がそそぎ、遣水が流れています。

 池の淵にはこの季節の花として、桔梗や女郎花がキレイに咲いています。

 源氏物語にも登場する吾亦紅も季節を思い起こしてくれます。バラ科の植物で、根が地楡(ちゆ)と呼ばれる理血薬の漢方生薬として血熱による血便や血尿、不正出血、崩漏下血など出血性症状の治療に使われます。

 今回、季節の花としてぜひご覧いただきたかったのは秋の七草のひとつ「」の花です。中秋の名月に萩とススキを月見団子とともにお供えして月を愛でる秋の訪れを知らせてくれる花ですね。古くから親しまれ、万葉集などでも詠まれ、邪気を払う魔除けの植物ともされており、萩の幹で箸を作り宮中行事にも使われていたそうです。
 私の大好物「おはぎ」が、萩の花が咲き乱れている様子を見立てたという説もあるので萩が好きなのかも知れません(笑)
今や任天堂と言えばポケモンやゲーム機で有名ですが、私の子どもの頃は任天堂と言えば花札やトランプというイメージでした。この花札の猪の絵札に描かれているのが「萩と猪」でどちらも縁起の良い物として描かれているそうです。

 ススキはまだ完全に穂が開いていませんでしたが、もう少しすれば見ごろになると思います。台風一過の秋の風に揺られて風情があります。

 平安の庭から曲水の宴が行われる苔の庭に続き杉苔が敷き詰められてキレイです。

 参道を挟んで反対側に渡るとこちらも良く手入れされた室町の庭が広がります。茶道・生け花・能楽など室町文化が開花した室町様式の池泉回遊式庭園です。

 立派な錦鯉が優雅に泳ぐ池に白糸の滝が流れ落ちる音が心地良く響き、不老長寿を表す黒松、赤松が生え、季節にはツツジやサツキ、藤の花が華やぎを競います。
 残念ながら池の鯉と季節の花を愛でながらお菓子とお抹茶をいただけるお茶席「楽水軒」は、コロナ感染予防のため閉鎖されていました(泣)

 通路の反対側には、広々とした芝生が広がる枯山水の桃山の庭があり、奥には立派なソテツが武将たちが覇を競った桃山時代の豪壮な気風を漂わせています。季節にはしだれ桜やツツジがキレイに咲き乱れるでしょうね。

 桃山の庭からカキツバタが続く小径に入るところには、今の季節を彩る百日紅がキレイに咲いていました。その奥には白い夏椿(沙羅双樹)の木が植わっています。以前に来た時に白い花がキレイに咲いていたのを思い出します。

 カキツバタが咲く頃には長い小径の横を紫のカキツバタの花と赤やピンク、白いツツジがキレイでしょうね。
カキツバタの小径の反対側には、ここにも萩の花がキレイに咲き秋の風に揺られています。

 沙羅双樹の木からカキツバタの小径を通り抜けると最後に「城南離宮の庭」が広がります。平安後期の離宮をイメージした白い砂を池に見立て、ところどころに石を配した枯山水の庭です。

 城南宮の神苑、いかがでしたか!? 広大な敷地にそれぞれの時代に合わせた趣のある作庭でとても見ごたえがあります。春先から紅葉まで四季折々に草花が咲き乱れ、日頃のストレスを癒してくれますね。

さて、では秋分の養生法です

 秋分は二至二分の一つで、冬至は陰極、夏至は陽極、秋分と春分は夜と昼の長さが同じになる陰陽調和の日。 
陰陽調和は「陰平陽秘(いんへいようひ)」と言い、カラダや健康にとってとても大切な状態です。中医学では、八網弁証と言ってカラダの状態を「寒熱、虚実、表裏、陰陽」に分けて診て、それぞれバランスがとれている状態を「健康」と考えます。
 寒熱は、冷えすぎたり余分な熱がこもりすぎるとバランスが崩れて病気になります。虚実は、気・血・水という生命エネルギーが虚(不足)や実(流れが滞る)になりバランスが乱れて体調が崩れ、表裏とは経絡を通じて繋がった体表の諸器官と内奥(五臓)との気血の巡りが乱れると病気になると考えます。そして総合的に陰陽のどちらにバランスを崩しているかを診て、そのバランスの崩れを漢方薬、鍼灸、推拿、薬膳、気功で陰平陽秘の状態に戻すのが伝統中医学です。陰にも陽にも偏り過ぎないことがとても大切なのです。

 秋分の時期のココロの養生で大切なことは、楽観的な気持ちや神志の安らぎを保ち、万物を収斂し枯死させてしまう秋の気を受け過ぎないで、穏やかで寛容なココロで過ごすことが大切です。五行の金の気質は従革(じゅうかく)と言って万物を収斂させて実らせたり変化させる気質を持っているものですが、秋もこの金の気質の影響を受けているので、気を内に向けすぎてついつい物思いに耽ったり物悲しい気持ちになって気分が沈みがちになりやすくなります。そんな季節の気質に引っ張られて必要以上に落ち込んだり悲観的になると鬱になったり孤独感に襲われたりします。季節の気に合わせて暮らすことは大切なのですが、何ごとも過ぎたたるは及ばざるが如しです。気分が高まる音楽を聴いたり楽しい映画やお笑い番組などで意識的にアゲアゲで過ごす工夫も必要です。

 カラダの養生としては、中国では「重陽の節句」(旧暦9月9日新暦10/4)には遠くまで見渡せる山に登って秋の景色を楽しむそうです。ハイキングやウォーキングは身体に良いだけでなく、秋の景色を楽しむことで、心(ココロ)も晴れ晴れとして憂うつな気分やマイナス思考を解消してくれます。
また、歳とともに激しい運動は控え、気功やヨガなど気血の巡りが良くなる運動を取り入れましょう。

 飲食の養生でも、陰陽のバランスを重視します。そのためにはまず自分のココロも含めたカラダの状態を知ることが大切です。
今の自分のカラダがに偏っているのか?に偏っているのか?を知り、そのバランスの乱れを調えてくれるものを食べることが陰平陽秘の食養生です。漢方薬や鍼灸、推拿というと専門的な知識や正確な技術が必要ですが、食事は毎日食べているもので、そこに中医学の考えを加えてカラダのバランスを陰平陽秘にすることが「薬膳」なのです。
 病気になるのも健康になるのも、「食べ物」です。今食べているものを見直し、体質や不調を改善してくれるものを摂りましょう。
まずは体質診断をして、今の自分の体質を知り、その体質を立て直して陰平陽秘するためにどのような食べ物を摂るべきかを知ることが大切です。

 体質チェックをして各項目で思い当たるものにチェックをつけます。チェックの数が一番たくさんついた体質から3番目に多い体質までぐらいが、今の貴女の体質だと考えます。今の体質がどんな傾向かを知る目安となるものなので、どれが悪い良いという風に考える物ではありません。
 
 普通にスーパーなどで売っている食べ物にも、また漢方薬や薬膳に使われる漢方食材などにも、どちらにも同じようにカラダを冷やす寒涼性のものと温める温熱性のもの、そして冷やしも温めもしない平性の3種類の食べ物があります。
 寒涼性の食べ物は、陰を滋養し、余分な熱を冷まし、ほてりやのぼせを取り、血熱を冷まし、カラダの中の余分なものを解毒する作用があり、トマト、キュウリ、苦瓜、冬瓜、大根、緑豆、小豆、レンコン、スイカ、バナナ、サトウキビ、マンゴー、ビワ、リンゴ、梨、柿、桑の実、ヘチマ、マコモダケ、たけのこ、クワイ、ワラビ、金針菜、海藻類、昆布、カニなどが含まれます。
 一方温熱性の食べ物は、陽を補い、血の巡りを良くし、経絡の詰まりを取りのぞき、冷えを散じて解消させる作用があり、唐辛子、山椒、カラシなどは熱性で温め作用が強く、ニンニク、カボチャ、ネギ、生姜、ニラ、サクランボ、ライチ、竜眼、あんず、ざくろ、栗、なつめ、クルミ、茴香、エビ、鶏肉、羊肉、鹿肉、ハムなどは温性に含まれます。
 そして平性の食べ物は、冷やしも温めもしない食べ物で、主食になる米や小麦、ジャガイモやさつまいも、やま芋、さと芋などの芋類、黒豆、大豆、インゲン豆などの豆類や、タマネギ、キャベツ、ニンジン、白菜、落花生、黒ゴマ、豚肉、豚足、牛肉、スッポン、ウズラ、卵、ウズラの卵、鯉、ハチミツ、ミルク、スモモ、イチジク、ブドウ、銀杏、百合、蓮の実、白きくらげ、黒きくらげなどは平性の食べ物に含まれます。 

 自分の今の体質を知ったうえで、その傾きを治し陰陽のバランスを調えてくれるものを適度に飲食するように心掛け、陰陽のバランスを崩すものは避けることが食養生で、そのように体質の陰陽バランスを調える食事を続けることで体質を改善し、未病と呼ばれる体調不良を改善していくことを薬膳と言います。

 人それぞれや同じ人でも季節や生活環境、生活習慣などその時々で体質が変わって当然で、陰陽のバランスを調える物は絶えず異なるので、その時その時の自分の体質に合わせて陰陽調和されるものを食べるようにしましょう。例えば陰虚体質の方は、カロリーが多く滋養分の高いものは避けるべきであり、痰湿体質の人にとっては、脂っこいものは避けるべきです。肝鬱気滞体質の人は激辛やスパイシーな物は避けた方がよく、皮膚病やぜんそくにかかっている人(気虚体質)などはエビ、カニなどの海産物は避けた方が良いです。下痢気味など脾胃が冷えている脾陽虚体質の人は、生ものや冷たいものは避けます。
水でも飲んだ方が良い人と飲まない方が良い人(体質)があります。どんなにカラダに良いと言われているものでも、実証の人が更に実証になったり、虚証の人が更に虚証になるようなものを食べると余計体調が悪化するので、「その食ベ物」は今の自分のカラダを陰陽調和させるために必要な食べ物かどうかを知って口にすることが大切なのです。中医学では「虚ならば補し、実ならば瀉し」、「寒は温め、熱は寒する」と考えて陰陽調和を図る考えがあり、飲食物の組み合わせなども原則として陰陽の調和を重視します。

 薬膳のポイントは、冷えるからと言って温熱性のものばかり食べたり、逆にほてるからと言って寒涼性のものばかり食べるのではなく、平性の主食を中心に季節の旬のもので寒涼、温熱をバランスよく配し、全体でみて冷える人は少し温熱性を多めに、ほてる人は少し寒涼性を多めにすることです。

 食事で病気になるのは、多食、少食、偏食です、食べ過ぎも良くありませんが、無理なダイエットなど食べ無さ過ぎも良くありません。そして好きなものばかりの偏食もカラダを壊す原因と考えます。
食べ物でも「陰平陽秘」を考えてバランスよく食べましょう。

京都伝統中医学研究所の"秋分におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

「益気補陽」陽を補いカラダを温めるための薬膳茶&食材
 食べ物では温熱性や「」を補う補気類、助陽類や温裏類、香辛料などを合わせてを補います。
陽虚体質は、くるみ、ナッツ、栗、なつめ、松の実、なた豆、蓮の実、ニラ、ネギ、ニンニク、山いも(長いも)、キャベツ、玉ねぎ、アスパラガス、黒キクラゲ、白キクラゲ、枸杞の実、黒ゴマ、エビ、ナマコ、イワナ、ウナギ、カツオ、タラ、アワビ、カキ、マテ貝、ムール貝、ホタテ貝、羊肉、鹿肉、鶏卵、うずら卵、烏骨鶏、豚肉、桂花、桂皮(シナモン)、花椒、生姜、クローブなどがオススメです。
陽を養いカラダを温めるオススメの薬膳茶&薬膳食材は、
薬膳茶では、「なつめ薬膳茶」、「なつめ竜眼茶」、「からだを温める黒のお茶」、「なつめと生姜のチャイ」、「肝腎かなめ茶」、「全部食べる薬膳茶 調補気血茶 桂棗黒豆茶」など、
薬膳食材は、「新彊なつめ」、「黒きくらげ」、「白きくらげ」、「枸杞の実」、「桂花」、「松の実」、「蓮の実」、「紅花」などがオススメです。 「薬膳火鍋紅白スープセット」、「手足氷凍改善鍋セット」、「四物湯スープセット」などのスープも冷えたカラダにオススメ。
ほっこりポカポカ乃湯」でゆったり入浴や足湯なども温まります。足湯の場合は42~3℃の熱めのお湯で冷めてきたらさし湯で調整してじんわり汗をかくぐらいに温まりましょう。

お彼岸と言えば ”おはぎ” は忘れられませんね
 各地方で、呼び方や製法などが違うようですが、炊いたもち米を丸めて餡子で包んだものや餡子をもち米の中に入れて外側に黄な粉をまぶしたものなどいろいろなおはぎがありますね。

もち米 性味:温性/甘味 帰経:脾・胃・肺 
    効果効能:健脾益気、健脾和胃、祛寒補肺
小豆 性味:微寒/甘味 帰経:心・小腸
    効果効能:利水消腫、清熱利湿、退黄、解毒排膿
きなこ 性味:平性/甘味 帰経:脾・胃・大腸
    効果効能:健脾利湿、益気補胃、滋陰潤肺
※美味しいですが、どれも甘味なので食べ過ぎは脾を傷め湿を溜めます。くれぐれも食べ過ぎに注意しましょう。…と自分に言い聞かせています(笑)

薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。
薬膳茶&薬膳食材専門店 京都 楽楽堂
https://www.kyotorakurakudo.com (ただいま開店準備中)
京都伝統中医学研究所 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/iktcm/
京都伝統中医学研究所 ヤフー店 https://store.shopping.yahoo.co.jp/iktcm/

 中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
 次回は、10月8日「寒露」です。各地で稲刈りで農繁期になりますね。農家の皆さま、ご苦労様です。
朝夕と日中の温度差が非常に大きくなりますので、かえって体温調整が難しく体調を壊しやすい時期でもあります。羽織るものを用意したり汗をかいたら早めに着替えるなど体温調整を小まめにして気をつけてお過ごしくださいね! 

 

 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?