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二十四節気の養生法【2023 雨水】

 空から降ってくるものが水に変わるころが「雨水」です。
 暦便覧には「陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となれば也」とあります。 
前回も書きましたが、まだまだ太陽の南中高度が低いので「春」とは言えまだまだ暖かくなりませんね。北からの寒気が降りて来て真冬に戻ったり、南から暖気が入って来てポカポカ陽気になったりを繰り返し、少しずつ南中高度も高くなり陽射しも強くなって空から降るものが雪や氷から水に変わって春の気が進んで行きます。

今月の癒しの庭園 「河合神社」

 今月は河合神社をご案内します。河合神社と聞いてご存知の方は、これまたかなりの京都通か古典文学好きの方でしょうね。
 今回は、綺麗に手入れされた白砂や見事な植栽、景石などが配されたお庭ではありませんが、ぜひこの河合神社をご案内したいと思います。

下鴨神社の表参道
糺の森の小川で遊ぶ錦鯉と鴨たち

 河合神社とは、下鴨神社の表参道から糺の森に入ったすぐの左手にあり、下鴨神社の摂社で女性守護の神様として信仰を集め、古くから美麗の神として知られており、美しくなりたい方や美しさを保ちたい方にはぜひお参りしていただきたい神社なんですよ。鏡型の絵馬に普段使っている化粧品でお化粧をして裏に願い事を書いて奉納すれば、外面もさることながら内面も磨かれ美しくなるそうです!「美しくなる水」も販売されていましたので、美しくなりたい方は是非飲んでみましょう(笑)

手鏡型の絵馬

 男性の方には「じゃあオレには関係ないな」と言われそうですが、実は、ここは「方丈記」を描いた鴨長明と大変ゆかりがある神社なのです。
 日本三大随筆の一つで有名な「方丈記」ですので読まれた方も多いと思いますが、私などは中学か高校の古典の授業で習ったような…でも内容はサッパリ???って感じでしたが、歳を重ねてから興味を抱いて読んでみて、そういうことが書かれてあるものだったのかと改めて感銘した次第です。

河合神社

 「ゆく川の流れは絶えずして、もとの水にあらず、よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたる例なし。世の中にある、人と栖と、またかくのごとし」
ココこそは学生時代に習った記憶がある有名な書き出しの一文ですね。
あまり詳しい意味もわからず、世の儚さを教えているような感覚でなんとなく気に入っていた記憶があります。

琵琶を楽しむ鴨長明

 鴨長明(ながあきら)は、下鴨神社の禰宜さんの息子として生まれ、跡取りとも考えられていましたが、相続争いに敗れそして妻子とも別れ夢や希望を失い、さらに京都でのさまざまな大災害に遭遇して人々の暮らしや有様などを経験して世の儚さを悟り、やがて出家して一人小さな庵で暮らし、好きな琵琶と和歌を楽しみながら方丈記を執筆し、質素ながらも心豊かな晩年を過ごした姿が描かれています。

 私事乍ら、先月にようやく長年の住宅ローンを完済し、ヤレヤレと肩の荷が下りたところですが、払い終わるとアチコチが傷んできていて修繕にまたお金がかかりそうです。(泣)
 阪神淡路大震災の前年に購入して暮らし始め、毎月毎月、今月もなんとか銀行に召し上げられずに支払いが出来たなぁとやり繰りを続けて30年が経ちましたが、私の前にだれがこの地で暮らしていたのかも知らず、また100年いや50年後でさえ誰が住んでいるかもわからない、小っぽけな土地や家のために人生の最も働き盛りで元気旺盛な時期を費やしてきたのかと思うと空しい気がします。サラリーマンで毎月給料が振り込まれていた時にはなんとも思いませんでしたが、会社を辞めて自営をはじめてからは本当に毎月の住宅ローンの支払は精神的ストレスで、よく持ち堪えられたなぁと感慨深いです。

 しかし、鴨長明が「方丈記」を執筆した今から800年ほど前も、今とほとんど変わらないような毎日だったようで、とても身近な事に思えてきます。
 長明自身、相続争いに敗れ妻子を失い、神社の息子が出家して仏門に入り、世の中では京都の1/3を焼き尽くした大火が起こり、立ち直る間もなく辻風(竜巻)や遷都による街の荒廃、続けて飢饉が発生して食料が不足し物価は高騰して、餓死者が多数出て疫病が流行し、さらにその3年後には山は崩れ海は傾き、土は裂けて岩は谷底に転げ落ち、余震は3か月間も続いたと記録されるほどの大地震が発生するなど、大災害が次から次に起こり、京の都の人々の暮らしは凄惨を窮めたようです。
 阪神淡路大震災や東日本大震災が起こり今まさにトルコでも悲惨な大地震が人々を襲い、コロナが世界中に流行し、戦争が起こり、あらゆる物価が高騰しています。800年前の日常も今も、自然の営みは毎日毎日粛々と続き、人々の苦しみや不安は何もも変わらないようですね。

鴨長明が晩年住んだ、バラバラにすると荷車二台分の小さな庵

 原文には『人のいとなみみなおろかなる中に、さしも危き京中の家を作るとて寶をつひやし心をなやますことは、すぐれてあぢきなくぞ侍るべき。』と書かれ、「災いの多い京都で大金をかけて住まいを作って、心を悩ますことは馬鹿馬鹿しいことじゃないか」と言っています。

 出家した長明は、荷車二台に分解して積めるほどの庵をつくって、好きなところに荷車を引いて行って庵を建て、世の中の富や地位、見栄や嫉妬に煩わされることなく、四季折々の花鳥風月を愛でながら静かに憂いなく心豊かに過ごしたようです。
 自分自身、相続争いや親族に裏切られるなどの世俗を経験し、またさまざまな大災害での悲惨な有様や遷都による人々の右往左往のなれの果てを見て来て、要らぬことに惑わされず、穏やかに自由に過ごすことに価値を置いてストレスの無い暮らしを手に入れていったのでしょうね。
 ようやくこれまでの人生の大半をかけて手に入れたマイホームに執着しているのを見て長明は「お前さんもバカだなぁ」と笑っているでしょうかね。まだまだ世を捨てて過ごすことは出来ませんが、いろいろなものに執着することなく四季折々の花鳥風月を愛でて心豊かに過ごしたいものです。

八咫烏も祀られサッカーの神様でも有名

 もう一つ平家物語の「祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、正邪必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢の如し。たけき者もついには滅びぬ、ひとえに風の前の塵におなじ。」とどこか通じるところがあるようで、無常観や自然の摂理、また自然への畏怖心や有難さを感じられてとても気に入っています。
 皆さまもぜひ改めて「方丈記」を読んでみられてはいかがでしょうか。
ゲームばっかりして朝起きてこない子どもにイライラしたり、夜帰ってこない夫にカリカリしたり、思うように動かなくなった自分のカラダに落ち込んだり…と、ストレスフルな毎日をお過ごしかも知れませんが、大災害を目の当たりにすると実はそんなストレスフルな日常こそが有難いことなのかも知れません…。
 古典にしては短い文章だそうで、現代語訳もたくさん出ており、今ではYouTubeなどでの朗読などもあるようです。ストレスを感じている時こそ、800年前に暮らしていた人とそう変わらぬことを想像出来てちょっと緊張や不安がほぐれます。いろいろな養生法がありますが、やはり執着心や嫉妬心を捨て「手放す」ココロが大切なんでしょうね。

雨水の養生法

 春の主気は「風」。天地の気が流動するとが生まれます。そして春ので陽気が生まれ発散して、この柔らかなが万物を温め、すべてのものが生まれ育まれてゆきます。
 風は疏散という性質があり、「其疾如風」(そのはやきこと風のごとし)と言うように動きが素早く、軽ろやかで、方々に散り散り、散じやすく、より遠くまで運ぶ(飛んでいく)などの特徴があります。
 しかしこのが正常さを失うと六淫風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪の6種の邪気)となり、風邪によってさまざまな災害や症候を引き起こします。風邪(ふうじゃ)がカラダを侵襲すると「邪風が至ると、病が風雨のように突然現れる」と言われ、寒・熱・暑・湿・燥邪のどの邪気とも簡単に結びつきやすく、突然にあらゆる病気を招くので「風は百病の長」と言われるのです。

春は風が外邪を運ぶ

春の養生の一つは、「養陽防風」

 中医学では、風邪(ふうじゃ)を外風内風に分けます。
 外風は、外からの風による邪気で、風によって運ばれてくるウィルスなどによる感染症や花粉症などの病気の元になります。
 養生法は、気血を補いウィルスや花粉を寄せつけないバリア力(衛気)を高めることです。衛気とは、体表を覆うバリアでこれが分厚くなると外邪を跳ね返すことが出来、逆に衛気が低下してバリアが薄くなるとウィルスや花粉症がたやすく体内に侵襲し邪気に負けやすくなるというイメージです。
つまり免疫力のことを昔の人は衛気と言ったのですね。
 まだまだ寒いこの時期は”カラダを温めて陽気を養い、気血を補って免疫力を高める”時期なのです。冬から夏への…陰から陽への大きな気の変革期で大気も荒れやすく、カラダの中のバランスも乱れやすい時期なので、体内の環境をしっかり調えることが大切と教えています。
 衛気バリアを分厚く強固にするには、「気・血・水・熱」のバランスを保ち、巡りを調えることが大切です。過不足したり巡りが悪くなると衛気バリアが薄くなり外風などの邪気に侵され、体調を崩しやすくなります。
「養陽防風」の養生を守り、衛気を分厚くして免疫力を高めウイルスや花粉を跳ね返す強いカラダづくりを心がけましょう。

季節の養生法で衛気バリアを分厚く

衛気を分厚くしウイルスや花粉を跳ね返すために!

①.益気補血 睡眠や営養をしっかり取って不足しがちな気・血を養う。
②.健脾利湿 お腹の調子を健やかにして水の巡りを調える。
③.活血化瘀 適度な運動で気血の巡りを調える。
④.補温養陽 入浴や防寒で冷えを防ぎ、温め食材で内側から補温する。
⑤.疏肝理気 五感を癒しストレスを減らして、毎日を心地良く過ごす。
これらを日ごろから心がけ、衛気バリアを分厚くしましょう。

花粉症も体質によって症状は異なる

 この季節で特にツライのは「花粉症」ですね。しかし花粉が誰にでも有害なもので、みんなが花粉症になるわけではなく、花粉症になりやすい体質的傾向があります。

1.鼻の花粉症

水っぽい鼻水は「冷え(陽虚)」、粘りがある鼻水は「熱(湿熱)」の症状
 サラサラした鼻水がツーッと垂れ流れるのは風寒湿邪がカラダに入り込んだ初期症状。まだ寒く冷えのある陽虚なので、食事や服装で身体をしっかり補温することが大切です。
 逆に、鼻が詰まったり、粘っこく黄色い鼻水は、余分な熱がこもり炎症が起きている状態で陰虚湿熱。余分な熱を冷まして湿熱邪を追い出そう。

◎鼻の花粉症に効くツボ

■冷え(陽虚)タイプ 上星、印堂、迎香、上迎香、合谷、風池、太淵、肺兪
(お腹の冷えには、足三里、脾兪
熱(湿熱)タイプ  上星、印堂、迎香、上迎香、合谷、天柱、風池、列缺
(ストレスが強い(肝鬱気滞)時は、太衝

◎おすすめの食材

■辛味食材で風邪発散、熱タイプは清熱利湿の薬膳
ネギ、生姜、ニラ、玉ねぎ、にんにく、ふき、舞茸、しめじ、金柑、三つ葉、こんにゃく、茗荷、レタス、海苔、はまぐり、しじみ、竜眼など
※今の自分の体質の寒熱虚実を診て、温熱性や寒涼性の食材で陰陽調和する食材を選びましょう。

2.目の花粉症

かゆみや充血がひどいのは余分な熱(風熱)がある
 白目は「肺」と深い関わりがあるため、風邪や花粉が身体に入り込んで肺の機能が弱くなると、目のかゆみや充血などの症状が現れます。
目のかゆみや充血は、炎症を起こしている「熱(風熱)」の症状。目の症状が強く出ている場合は、風邪を発散しながら余分な熱を冷ますよう心がけましょう。

◎目の花粉症に効くツボ

■目の周りのツボ 攅竹、魚腰、晴明、瞳子髎、承泣
■首の後ろのツボ 天柱、風池
(頭痛や頭重がある時は、太陽

◎目の花粉症におすすめの薬膳

■風熱邪を発散し清熱解毒する涼性・苦味の食材
菊花、ミント、桑の実、セロリ、タラの芽、クレソン、菜の花、ふき、ほうれん草、ごぼう、だいこん、きゅうり、冬瓜、苦瓜、緑茶など
※今の自分の体質の寒熱虚実を診て、温熱性や寒涼性の食材で陰陽調和する食材を選びましょう。

3.皮膚の花粉症

湿疹や蕁麻疹で赤く腫れて、熱っぽくて痒い
 中医学では、皮毛と「肺」は密接に繋がっていると考えます。そのため、風邪によって花粉が身体に侵入すると、肺の働きが低下し皮膚にもかゆみや湿疹などが現れやすくなります。
これも目のかゆみや充血と同様に「熱」の症状なので、風熱邪を発散しながら熱を冷ますことが大切です。

◎皮膚の花粉症に効くツボ

ストレスが多い(陰虚火旺)タイプ 合谷、曲池、太衝、期門、血海
湿邪が多いタイプ(湿熱) 中脘、足三里、内庭、内関、豊隆
■熱っぽくかゆみがひどい時 霊台、督兪、筋縮、肝兪、脊中

◎皮膚の花粉症におすすめの薬膳

■皮膚の熱を取り除く清熱解毒やさっぱりした平性の食べ物
白きくらげ、百合、はと麦、菊花、小豆、緑豆、トマト、きゅうり、春雨、もやし、梨、柿、西瓜、キウイ、バナナ、昆布、れんこん、アロエ、桑の実、ほうれん草
など
※今の自分の体質の寒熱虚実を診て、温熱性や寒涼性の食材で陰陽調和する食材を選びましょう。

京都伝統中医学研究所の

"雨水におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.「滋陰養血」の薬膳茶&食材

陰を補い血を養うオススメの薬膳茶&薬膳食材は、
 薬膳茶では、「なつめ薬膳茶」、「カラダ潤しちゃ」、「健やか茶」、「増血美肌茶」など
 薬膳食材では、「新彊なつめ」、「金針菜」、「竜眼」、「枸杞の実」、「松の実」、「マイカイ花」、「桂花」、「茉莉花」など 
 薬膳鍋セット「四物鍋スープ」、「手足冰凍改善鍋」、「冬の美薬膳鍋」は、薬膳食材もセットになってオススメ。
肝を過剰を調えるオススメの薬膳茶&薬膳食材は、
 薬膳茶では、「理気明目茶」、「なつめ薬膳茶」、「なつめ竜眼茶」、「からだを温める黒のお茶」など
 薬膳食材では、「黒きくらげ」、「新彊なつめ」、「枸杞の実」、「竜眼」、「金針菜」、「紅花」、「マイカイ花」など

2.風邪(カゼ)におすすめの薬膳茶&薬膳食材

辛温解表…カラダを温めて邪気を追い出す
「薬膳火鍋」、「手足冰凍改善鍋」、「からだを温める黒のお茶」、「なつめと生姜のチャイ」、「黒薔薇茶」、「紅花」、「竜眼」、「マイカイ花」、「桂花」など
辛涼解表…余分な熱を冷まして邪気を追い出す
「理気明目茶」、「五望茶」、「菊花」、「百合」など
どちらのカゼにもおすすめなのが、やはり「なつめ薬膳茶」です。弱った胃腸を調え、気血を補い、疲れたカラダを癒してくれます。

3.漢方入浴剤

 ヨモギがたっぷり入った「からだポカポカあたため乃湯」もこの養陽防風にオススメ。浴室内にヨモギの香りが充満して芳香浴でも癒されます。

中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
 次回は、3月6日「啓蟄」です。 そろそろ虫や動物が冬眠から目覚める頃。陽の気が旺盛になってきますね。
春の気は「風」、強い風が吹く季節ですので、しっかり養陽防風してお過ごしくださいね♪ 
 

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