二十四節気の養生法【2024 清明】
今日から二十四節気「清明(せいめい)」です。清浄明潔の略で「空気は澄んで、陽光は明るく万物を照らし、全てがはっきりと鮮やかに見える」頃という意味で、 暦便覧には「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也」とあります。清明節は中国ではとても大切な日で昔から祝日とされてきました。日本では、春分の日(お彼岸)にお墓参りに行きますが、中国や台湾、沖縄などでは「清明」の日にお墓にお参りして先祖を敬います。
清明の頃にシトシトと静かに降る雨を「杏花雨」と言います。これから温かい雨が多くなり万物が生長する季節になります。そろそろ田植えの準備がはじまる頃ですね。「春霖」とも呼ばれる春の長雨が続くと憂鬱になりますが、万物を育てる恵み雨ですので感謝、感謝ですね!
今月の癒しの庭園 「松尾大社 神苑」
各地で桜が満開ですね。今年は昨年より開花が遅かったので、各地で見頃となっているところやこれから咲き始めるところもあるでしょうね。
今月の「癒しの庭園」はソメイヨシノはまだ咲いていませんでしたが、松尾大社の『松風苑』をご案内します。
阪急電車の松尾大社駅前にはとても大きな大鳥居があります。上の写真はちょっと小ぶりな二番目の赤鳥居です。
京都を護る五社の一つに数えられ西の守り神とされており五社めぐりをされる方もたくさんいらっしゃいます。
四条通りの東の端の八坂神社はご存知の方も多いでしょうが、松尾大社は四条通りの西の端にあります。
左右の随神に護られた楼門をくぐると亀の手水舎があり、手や口を清めて拝殿に進みます。松尾大社では亀と鯉は松尾大神様のお使いとして親しまれているそうです。龍の手水はよく見かけますが、亀の手水は珍しいですね。
拝殿には今年の干支の大きな龍の絵馬が飾られています。その後ろに室町時代初期に建てられた本殿がありこちらは重要文化財に指定されています。拝殿に上がる階段の右手にも「撫で亀さん」と呼ばれる神使の亀があり、頭や甲羅を撫で撫でして霊威にあやかりご利益を授かります。
本殿に参拝し、庭園拝観の受付をして庭園に進むと入り口の前にも「神使の庭」と書かれた小さなお庭がありそこにも亀と鯉がまつられています。
松尾大社の庭園は「松風苑」と名付けられていますが、昭和の作庭家として有名な重森三玲氏により設計され作庭されました。彼の絶作とされ「上古の庭」「曲水の庭」そして「即興の庭」「蓬莱の庭」の四庭で構成され見応えがあります。
「曲水の庭」は、平安時代の曲水式庭園をイメージし高低差を利用してくねくねと曲がった水路をゆっくりと水が流れる曲水に、吉野川産の青石で石組みを施しサツキの大刈り込みを配し石橋を架けて変化がつけられています。
曲水に葉を落すと流れに乗って流れていくのを眺めているだけでも平安貴族の優雅な風情を感じられます。曲水の庭からすすむと吉野石と白川沙によって即興的に作られた「即興の庭」があります。枯山水式の小さな庭園ですが、通路を進むに従って三方向からの眺めを楽しむ意匠となっています。
通路に従って宝物館の「神像館」を拝見してすすむと「上古の庭」が現れます。松尾大社が出来る前から御神体とされてきた磐座(いわくら)をイメージして新たに作られ、庭園ではなく神々の意思によって巨石を据え神々を象徴したものとされています。奥の方に一面に植えられた丹波笹が高山の趣を表しています。
上古の庭を眺めながら、右手にある小川の横の通路を進んで山の方に廻ります。渓谷の北にある大杉谷の頂上に巨大な岩石があり、これが古代の磐座でそこから流れてくる清流が「霊亀の滝」から流れ落ちて、御手洗川を流れてやがて「亀の井」につながります。
霊亀の滝から流れ落ちた聖水は「亀の井」と呼ばれる神泉から湧き出ており、酒造家はこの水を使ってお酒を造られるので、松尾大社は醸造祖神とされています。延命の水とも呼ばれています。亀の口から流れ落ちる聖水をいただきました。
いったん上の庭園から出て境内を抜けて階段を降りると「蓬莱の庭」の入口になります。こちらは池泉式回遊の蓬莱庭園で神仙の世界を表しています。東海に浮かぶ不老不死の蓬莱をイメージした神仙島を池中に配し、正面奥では龍門瀑布が広い池に流れ落ち開放的で精神性の高い池泉庭園となっています。池にはたくさんの大きな鯉がゆったり泳いでいて、餌をもらえるかと歩いていく所についてきます。
あちこちに神使の亀のレリーフや池に大きな鯉がいたり、またお酒造りの神様で日本全国の酒造会社から菰樽の奉納がされています。大きな酒樽の横には狸の焼き物も…。
京都では今週の土日ごろが桜が満になるでしょうかね。この時期はあちこちに満開に咲く桜に癒されますね。今年も美味しいお弁当を持ってお花見に出かけましょう。
清明の養生法
本格的な春の訪れで陽気がポカポカしてきました。清明節の頃は春爛漫となり天候も良く春の陽差しを浴びて万物が明るく清らかで、柔らかく美しく見えるようになりますね。草木が芽吹き、花が咲き始め、あらゆるものが陽光を浴びて光り輝いて、人々の顔も少し和んだように見えますね。
しかしこの時期はだるさや眠気を感じる人が多く、これを春困と言います。気温の急激な変化や激しい寒暖差で体内の陰陽が失調し、なかなか調子が戻らない状態で常にだるくて眠たい感覚に襲われます。
出来るだけベッドに入る時間や起床時間を規則正しく保ち、体内時計のリズムを保つことが大切です。考え事をしたり不安や緊張状態ではなかなか寝付けません。考え事はベッドに入るまで、ベッドに入ったらもう考えないようにしましょう。そして心と体の緊張をほぐすために睡眠前に5分間ぐらい静かに瞑想や呼吸法を少ししてリラックスしてベッドに入ります。
寝過ぎることもあまり良くありません。特に片頭痛のある人は長すぎる睡眠も良くないと言われます。
痒みは風病
春は風邪(ふうじゃ)に傷められやすい季節ですが、「痒い」という症状も風邪による風病と考えます。
風邪の特徴として、発病や逆に症状がおさまるのが急で、また症状がアチコチに移動するということや、カラダの表面や上部に症状が出やすいという特徴があります。
一般的な皮膚疾患としては、かぶれ、湿疹や蕁麻疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、帯状疱疹などがあげられ、ほかにもニキビ、魚の目、タコ、水虫なども皮膚疾患とされています。
このようにカラダに発疹が出来たりして痒いといってもそれぞれ病名が異なり原因もさまざまで症状の変化が早く、とてもややこしい病気なので安易に考えず出来るだけ早く専門医を受診することが望ましいです。
今回は特によく起こる一般的な「じんましん」について中医学的な考え方などについてお話しいたします。
中医学的皮膚の構造と五臓の対応
中医学では、皮膚の各層は五臓の働きとも関連していると考えます。それ故に皮膚に異常が現れる皮膚疾患は、主に肺・脾・肝・腎の機能低下が影響すると考え、症状が現れている部分に対する対症療法とともに、本治という根本的な治療は関係する五臓の強化も行い体質改善します。
じんましんの病因病気
じんましんは突然発症する皮膚病のひとつで、皮膚のある場所が何らかの刺激を受けて赤く膨れる膨疹(ぼうしん)で、非常に痒みが強いのですがしばらくすると消えてしまうことがよくあります。
原因は、サバや動物の毛、アスピリンなどのアレルギー性蕁麻疹、衣服などに擦れて起こる機械性蕁麻疹、紫外線による日光蕁麻疹、汗によるコリン性蕁麻疹、温かい刺激による温熱性蕁麻疹、冷たい刺激による寒冷性蕁麻疹などが良く見られ、最近では納豆を食べるとクラゲに刺された時と同じ物質が体内で産生されて蕁麻疹が出たりストレスや緊張で精神的に大きな負荷がかかって心因性蕁麻疹が起こることがあるそうです。
中医学では、じんましんは黄帝内経、素問四時刺逆従論に「少陰有余、病皮痺隱軫」と書かれてありすでに古くから認識されていました。現在では「癮疹(いんしん)」「風癮疹(ふういんしん)」などと呼ばれます。
最も大きな原因として考えられるのが風邪(ふうじゃ)です。外にある外風に腠理が侵襲されると体表の衛気が乱れ発疹が起こり痒くなり、一方内風は血や津液が不足して血虚や陰虚体質になると血虚生風を引き起こし乾燥疹や掻痒を引き起こします。
外風によって花粉や黄砂などの邪気が運ばれてきて皮膚や髪についたり、鼻や口から吸いこんで肺を侵襲すると肺の働きが低下して全身バリア機能の衛気が損なわれ炎症を起こして発症します。春になって吹く強い風は遠くから外邪を運んでくるのでじんましんが起こりやすくなります。
中医学では、いまの体質的な偏りによりカラダのバランスを崩れており(陰陽失調)、そこに邪気が侵襲して症状を発症していると考えます。
じんましんは、主に「風熱証」(風熱が侵襲)、「風寒証」(風寒が侵襲)、「血虚生風証」(血が不足)、「脾失健運証」(脾虚でさらに風湿熱や風湿寒邪が侵襲)、「気滞血瘀証」(ストレスによる気血の流れが滞っている)などの体質(証)が考えられます。
中医学では、四診合診による診察に基づいて弁証され、それぞれの証に合わせた治法に従って中葯(漢方薬)が処方されます。
まずはお腹の調子を調えよう
中医学ではお腹、つまり消化器系全般を脾胃と言います。「脾は気血生化の源」と言われ、飲食した物から気血を作る機械(工場)のようなもの。脾胃の働きが低下すると、日常活動に必要な気血が作れなくなり気虚や血虚、気血両虚の体質(証)に傾いていきます。
また「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」とも言われ、脾胃が弱いと消化吸収が処理出来ず湿邪を生み、それが鬱滞するとやがて痰という非常に厄介な邪気に変わります。
じんましんはこの湿痰に風邪によって外から侵襲してきた熱邪や寒邪と結びつき、風湿熱や風寒湿という体質(証)に傾くことで発症することが多いです。
じんましんをもっとも発症しやすいのが湿邪が溜まりさらに熱を帯びている湿熱体質(証)です。まずはお腹(脾胃)の調子を調え、水の巡りを良くし余分な湿邪を溜めないようにしてじんましんを発症しにくい体質作りをしましょう。お腹の調子を低下させないためには、暴飲暴食、過食、少食、偏食を避け、余分な水分をガブガブ摂り過ぎない、冷たい物を摂り過ぎない、夜遅く(寝る前)に固形物を摂らないことなどで、働きを高めるには、穀物類、芋類、豆類など(平性の食べ物)を消化しやすいように煮たり炊いたりして柔らかく調理して食べることなどです。「気」をいっぱい蓄えているその土地や季節の物を新鮮なうちに食べることも大切です。
熱邪が旺盛になり血に入り込み血熱という体質(証)になると、皮膚が赤くはれ痒みが強くなります。まるでトゲトゲのドラゴン(竜)が血管に入って全身を駆け巡っているかのようにアチコチがとっても痒く掻きむしってしまい皮膚が破れて出血したりします。この場合は清熱解毒という治法を行います。
じんましんになりやすい体質におすすめの薬膳食材
じんましんによる痒みを治療するには現在ではやはり痒み止めのクリームなどを塗る方が早く痒みを抑えることが出来ます。痒み止めクリームが濡れる状態であれば、塗り薬を塗って早く痒みを止めた方が楽になりますからね。
しかし痒みがおさまっても、同じ体質(証)に傾いたままであれば、また何かのきっかけでじんましんを発症することになります。
「風熱証」(風熱の侵襲)、「風寒証」(風寒の侵襲)、「血虚生風証」(血の不足)、「脾失健運証」(脾虚でさらに風湿熱や風湿寒邪が侵襲)、「気滞血瘀証」(ストレスによる気血の流れが滞っている)に対して各治法に合わせた漢方薬を処方されますが、薬膳でもその治法に合わせた食材を摂ることで体質を改善します。
熱が旺盛な血熱に対する清熱解毒の食材は、うちわサボテン、かぶ、きゅうり、金針菜、空心菜、くわい、ごぼう、じゃがいも、じゅんさい、せり、ぜんまい、だいこん(生)、たんぽぽ、冬瓜、豆苗、どくだみ、トマト、なす、苦瓜、にんじん、はこべ、ひゆな、ふき、へちま、ほうれん草、みょうが、ミント、ゆきのした、よめな、レタス、わらび、カモミール、菊花、すいかずら、ハイビスカス、バラ、小豆、ささげ、そら豆、だいずもやし、とんぶり、緑豆、緑豆とうもやし、そば、はと麦、いわたけ、あおさ、昆布、てんぐさ、いちじく、柿、スターフルーツ、バナナ、梅干し、ごま油、茶、クラゲ、しじみなどがおすすめです。
1.「健脾和胃」におすすめ薬膳茶&食材
薬膳茶では、水巡茶、そろそろダイエット茶、ダイエット応援爽快茶、黒薔薇茶、全部食べる薬膳茶 意棗紅豆茶、酸梅湯など。
薬膳食材では、なつめ、竜眼、蓮の実、白きくらげ、百合、山査子、桑の実、緑豆など。
いろいろお豆のスィーツセット、白キクラゲのスィーツセットなどもオススメ。
自分の体質を把握しましょう
いま何を食べるべきか、どんな食材が自分の今のカラダに必要か、ということは自分の今のカラダがどのようにバランスを崩して傾いているかを知る必要があります。
じんましんでも湿熱体質(証)や寒湿体質(証)など同じ症状でも体質は全く異なる場合があります。自分の体質に合わせて湿熱体質なら寒涼性の食べ物を多めに摂り、寒湿体質なら温熱性の食べ物を多めに摂るようにして傾いたバランスを調えることが薬膳です。平性の食べ物(主食)を中心に自分の今のバランスを立て直すのに必要な食材を多めに摂って調整しましょう。
極端なことは逆効果です。冷えてるからと言って熱性の食べ物ばかり食べ過ぎるとすぐに反対の体質に傾いてしまいます。また同じようなものを長期間食べ続けるのも同様です。好きだからと言ってそればっかりしょっちゅう食べているとバランスは崩れていきます。
季節の旬のものを中心に、野菜もお肉もお魚もまんべんなく少しずついただいて気血を補い五臓を養って、常にバランスを崩さないようカラダの調子を調えることが養生薬膳です。
清明の風物詩
4月8日は仏教ではお釈迦様の誕生日を祝う花祭り(灌仏会)が行われ4月11日(木)は旧暦の三月三日で旧暦ひな祭りです。日本各地でも五穀豊穣を願って春祭りが開催されますね。
そして4月16日(火)は早くもという感じですが土用の入りです。もう次の季節(立夏)がすぐそこって感じですね。
土用は、季節の変わり目で特に脾を傷めやすい時節でもあるので十分注意してお過ごしくださいね。
京都伝統中医学研究所の"清明におすすめの薬膳茶&薬膳食材"
1.「健脾和胃」におすすめ薬膳茶&食材
薬膳茶では、なつめ薬膳茶、水巡茶、そろそろダイエット茶、カラダを温める黒のお茶、全部食べる薬膳茶 意棗紅豆茶、黒薔薇茶など。
薬膳食材では、なつめ、竜眼、蓮の実、はと麦、枸杞の実、緑豆、白きくらげ、さんざし、百合、松の実など。
2.「補気補血」におすすめ薬膳茶&食材
薬膳茶では、増血美肌茶、なつめ薬膳茶、健やか茶、全部食べる薬膳茶 桂棗黒豆茶など。
薬膳食材では、なつめ、竜眼、金針菜、枸杞の実、黒きくらげ、松の実など。
薬膳スープでは四物湯スープセットなど。
3.「行気活血」におすすめの薬膳茶&食材
薬膳茶では、気血巡茶、理気明目茶、水巡茶、麗香茉莉花茶など。
薬膳食材では、菊花、マイカイ花、紅花、はと麦、黒きくらげ、さんざし、ジャスミン(茉莉花)など。
中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
追記
今日からNHK文化センター京都教室で「くらしに活かす中医学」講座が再開しました。以前春夏と秋冬のシリーズで開催していた講座でしたが4年前にコロナで教室が閉鎖となり中止していましたが、またご依頼をいただき今日から6ヶ月間の講座が開始となりました。
わかりやすく中医学や薬膳を解説して出来るだけ毎日の生活に中医学の知恵を取り入れ健やかに過ごしていただきたいと願っています。
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次回は、4月19日「穀雨」ですね。生温かい雨が穀物を育てる季節。
日本のアチコチでは田植えの季節ですね♪ 恵みの雨に感謝しましょう!
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