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印刷会社の片隅で版下にあそばれるパートタイムの日々

交通事故の入院から、退院した後は、荒れ放題だった四軒長屋の借家には戻らず。(長屋は取り壊される予定だった。)
親戚の家に身を寄せた後、親戚の借家で、友人とふたり暮らしをはじめた。

印刷会社のパートの求人を見つけ、そこで働くこととなった。
それまで、接客業中心のアルバイトばかりだったわたしにとっては、はじめての経験ばかり。受験して進学するまでの、半年くらいの短い期間だったけど、会社というものの端っこを垣間見ることができた貴重なひと時だった。

配属先の部署は「版下校正課(版下係)」
「版下」と呼ばれる、印刷原稿を作成する部署で。主な仕事は、校正された原稿を見ながら、版下を完成させていく作業だった。
(今はDTP全盛だけど、版下ってまだ、作ってるんだろうか?)

まずはじめにカッターナイフを渡されて。作業のやり方の説明を受けた後、練習をした。
版下台紙に薄くカッターを入れ、文字が印字された紙の表面だけを、薄皮をはがすように剥ぐ。剥いだ部分に、今度は訂正された文字を同様に剥いで貼り付ける。
作業がうまくいくと、ぱっと見(印刷すると)修正箇所がわからなくなる。
半日ほど練習して、カッターナイフと友達になった。

仕事はとても楽しかった。
校正済みのコピー原稿を見ながら、紙とカッターと戯れて、版下を完成させていく作業に、わたしは夢中になった。

一番多いのは、スーパーなどの折り込みちらしで、前回のちらしのデータを基に、指示どおりに一部の商品を差し替えたり、場所やサイズを変更する等の修正を加え、新しいちらしを完成させていく。
そのほかにも、パンフレット、書籍、名刺、広告、広報…ありとあらゆる印刷物があって、飽きることが無かった。(年賀状の時期には、年賀状の数を数えたり、仕分けしたりする作業もあった。)

タイムカードがあって、机があって、ロッカールームがあって。なんだか本当の会社みたいで(本当の会社だってw)わくわくした。
ちょうど1学年年上の、新卒女子の社員2人組が、いつも声をかけてくれて、一緒にお昼休憩をとっていた。(接客業では基本、皆で一緒に休憩をとるということはなかったから、すごく新鮮な感覚だった。)
お昼には社員食堂で、具沢山の温かいスープが無料で提供されていたのも嬉しかった。

仕事納めに、ちょっとした大掃除があったり、カレンダーが配られたり。
そんなイベントがあるたびに、会社みたい(だから会社だって。)とドキドキしながら、その雰囲気を満喫していた。

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