夢はいつまで追えるのか
わたしはいま大学四年生だ。私はそろそろ夢を諦めるべき場所にいるような気がしている。
就職活動を終え来年の春には晴れて社会人になる。私の中で社会人になるということは今までのように思い描いていた夢にすぐに行動を移せるわけではないことを意味している。したいことのためにお金を稼ぐのではなく生きるためにお金を稼いでいかなくてはならない。私の金銭事情から夢追うフリーターにはなれないから、私が就職するときそれは夢を諦めるときだ。
わたしの夢が見つかったのはだいぶ遅く大学一年生の頃。しかもその夢は現実性が低く大抵の人に言ったら鼻で笑われるだろう。私は韓国アイドルになりたかったのだ。自分の存在が誰かの生きる糧になれる。そんな存在が私は心底羨ましかったし、そうなれるならどんな辛い練習だって私は乗り越えられると思った。
しかし韓国アイドルの寿命は短く20歳そこらででダンス経験もない歌も大してうまくない私がオーディションに受かるはずがなかった。あなたには何ができるの?そう言われると私は何も答えられないのだ。大して秀でてるものがない自分が誰かの生きる糧になることなんておこがましいにも程がある。それでも私はあの儚いキラキラした一瞬の中に自分の理想を抱いていた。必死で夢への道をつかもうとした。
そこで私は本気で考えた。どうしたらあの中に行けるんだろう。正当なルートではきっと不可能に近い。私には若さも技能も足りないのだから。どこかでネームバリューを手にして渡るしかない。そう考え私は手当たり次第韓国とある程度疎通のある日本の事務所を受けた。インスタグラマーになろうと投稿を頑張った。サロンモデルになった。必死にダンスレッスンとボイトレに通って、自分皆気に励んだ。しかしどれもこれもうまくいかないのだ。努力が足りない。そう言われるときっとそうなのだろう。でもきっと夢を叶えるには運だって必要なのだと思う。私がもっと小さいときからこの夢を見ていたならもしかして希望があったのかもしれない。私があのとき事務所のスカウトを断っていなければあそこに立てていたのかもしれない。
大学四年間無理だったら諦めよう。そう思って頑張ってきたけれどその無理がとうとうここまで来てしまった。夢への道はこんなにも閉ざされて歩けていないのに現実への道をしっかりと歩いている自分がなんだかとても惨めで、結局口だけだったような気がして駅のホームで突然涙が出てきたことがある。でも努力だけでは夢は実らないのだ。
あなたがしたいことはなんですか?就職活動で聞かれるたびに私は苦しかった。こんなリクルートスーツを着てひっつめ髪で当たり障りのない回答をして、3年前思い描いていた私はステージでキラキラと輝いているはずだったのに。しかしそれはもう叶わないに近いのだ。面接が進むたびに自分に言い聞かせた。
内定を貰ったとき私はこの夢はもう見ることができないんだと夜中にアイドルの動画を見ながら号泣してしまった。私はこれから夢など見ずに現実だけと向き合って生きていかなければならないのだ。努力を重ねていろんな人に「どの事務所に入ってるの?」「なんで一般人なんかやってるの」と言われるようになっても私はアイドルなんかにはなれないのだ。実らない努力ほど虚しいこともなれなかったものに例えられて褒められることもとても悲しく惨めだった。夢は夢で終わったのだ。
さよなら夢を描いていたわたし。いつかまた。