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クランチ文体でバイオハザードre4 その4

縦書き前提の文章なので読みやすい様に今回からPDFのダウンロードも出来るようにしました。前回までの投稿にもPDFのダウンロードリンクを付け直しました。

前回はこちら↓


chapter 2-1 捕縛

『聖体を授かりし幸いなる子羊よ』

 まどろみ/もうろう/あいまい──響く声。

『目覚めは近い』

 うすもや/あやふや/こんだく──揺らめく蒼いローブ。

 ハッとうつ向く顔を上げ覚醒=レオン──意識を失っていたことに焦り。遅れて気が付く、コンクリート張りの部屋、そして両手は頭上に──手錠と鎖で吊るされる形。ジャケットが脱がされあらわになった、空のショルダーホルスターが無力さを強調している。

だが行動と思考を止めるなキープムービング──地獄を経験した者の経験則=必ず突破口はあるはず。まずはと言わんばかりに思いっきり引っ張る。予想外に腰の辺りまで下がる両手/背後から声。

「よせ、やめろ」──袋の中にいた男。
「おいアメリカ人アメリカーノ名前は」──続けてレオンに問う。

「レオン」

 端的に答える──部屋の端へ鎖を目一杯引きながら。地下での会話から何か情報を持っているはず、ならば名乗っておいた方が利点があると判断。

「寡黙なタイプか? 俺はルイス・セラ。お互い間違えたな、バケーションの行き先を」

 ルイスの下らない軽口を無視──手錠を壊せる道具はないかと周囲を探し回る。

「おい、やめろ! 引っ張られるだろ、こっちは怪我人なんだ!」

 ルイスがわめいた。言葉の意味を理解したレオンは自分の手錠から伸びた鎖を見上げる──二人を繋ぐ鎖が滑車により天井付近で行ったり来たり。今さら滑車に気が付くレオン──自分で思うより冷静でなかった証拠。鎖が動く度にパラパラと埃が落ちてくる。

行けそうだな──勢いをつけて鎖を引きはじめた。それを見て「読めたぜ……考えが」同調するルイス──レオンと対角なるように鎖を引きながら続ける。

「こういう状況は慣れっこか? 俺のカンだと……お前は誰かを探してる」

 疑問や憶測の様な話し方だが確信がある表情=薄ら笑いニヤニヤ。警戒して黙るレオンに駄目押し。

「そいつは多分……行方不明のお嬢さんセニョリータ?」

 またもや断定するような質問=当たってるだろニヤニヤ

若い女性セニョリータ? 話せ、今すぐ!」

 今、もっとも欲しいクリティカルな情報──堪らず声を荒げてレオンが鎖を引き寄せる。想像以上に怒気を発散するレオンを見てルイスが観念。

「分かったよ……小耳にはさんだんだ。お嬢さんセニョリータを連れていくって」

 しかし意地でも結論は後回し──会話は取引なんだぜとでも言いたげ。

「連れていく……どこへ?」──レオンがさらに問い詰める/引き寄せた鎖を緩める=これが対価だ。ルイスが「さあな」と前置きしながら「奴らが誰かを教会へ連れていった」──さあなと言う割に具体的な場所。

 そんな会話ディールをしながら二人で滑車に負荷を掛けていると──バキンッと滑車が天井から外れた。反応できずにルイスが後ろにスッ転ぶ/立ち上がる。レオンに文句を言おうとした途端、鎖をとてつもない勢いで引っ張られる/つんのめる──同時にゴウッと空を切る音。

受け身も取れずに胸から転倒──転がりながら起き上がる。ルイスが顔を上げると斧を振り抜いた体勢の村人が一人──数秒前まで自分の頭があった場所を狙い、村人が斧をフルスイングしていた。

 走り出す村人──咄嗟の連携=二人同時に鎖を前に投げ放つ/村人の顔面を鎖が打つ。レオンが鎖を腕に巻きつけ長さを調整して怯む村人に接近──村人の首に巻き付けルイスの対角へ。

 張りつめる鎖──二人の中心で村人が斧を振り回す/どちらにも届かず=首を絞められなお健在。レオンが鎖をさらに引き、その上に右膝を乗せる/全体重をかける──勢い良く締め上げる。レオンの膝が地面に到達すると同時に村人の首が折れた。


 倒れこむ村人に引かれてまたしてもルイスがつんのめる=仲良く地面へ。起き上がろうとしたルイスの目の前に鍵──斧野郎のポケットから。レオンは背中を向けて余韻に浸っている。まさかと思いつつ手錠の鍵穴へ──ごとりと地面に落ちる手錠。その音で振り返ったレオンに向けてアピール──両手を広げて=自由の身だニヤニヤ

「まだ話しは終わってないぞ」

 先に逃げるつもりだと察したレオン──走り寄る/村人に絡まった鎖のせいで近づけず。

、アミーゴ」

 ルイスが砕けた二指の敬礼の動作トゥー・フィンガー・サルートのついでに鍵を放り投げた
──言葉と裏腹にもう会わないだろうがなアディオスというポーズ。そしてレオンを残し颯爽とその場を後にした。



chapter 2-2 脱出


 ルイスの放り投げた鍵を拾い手錠を外す。改めて確認したがやはり装備は全て無くなっていた。人間相手なら徒手空拳でも戦闘出来るように訓練はしてきた。しかし村の住民達の異常性を考えるとやはり不安。

 まずは武器になるものを、可能であれば装備の奪還をしなければ──逆境でも歩みを止めない/止められない=根っからの不撓不屈サバイバー精神。見張りは一人ではないはず──足音は最小限に。部屋を出ると排水設備が見える通路──ごうごうみ排水の音。一度立ち止まり本部に通信開始=ここなら見張りに対して声を隠せる。

「HQ ターゲットの居場所をつかんだ。彼女は教会にいる可能性が高い」

《さすが、朗報ね》

「それから妙な男に会った、名前はルイス・セラ。胡散臭い奴だった。奴のこと、調べられるか?」

《ええ、分かった。少し時間をちょうだい。とりあえず……あなたは教会へ向かって》

 また連絡すると伝えて通信オフ──移動再開。その矢先、通路の先で倒れる血まみれの男が目に入る──まさかルイスか。しかし近づいて見れば全くの別人──身体中に刺し傷/肩口に果物ナイフ=すでに息絶えていた。「こいつは貰っていくぞ」──ナイフを引き抜きながらレオン。

 途中に倒された村人──ルイスの仕業だろうか。戦闘能力は有りと頭のメモに加えた。ルイスが先行したせいで、警備が厳重になっている可能性も考えられた──が予想に反して敵は少なく順調に進むこととなった。

 出口を求め進む道中で二人の見張りを倒す──ある疑問=警戒の割には注意力が無い/統率の割には連携が悪い。これまでの村人の行動を思うといまいち判断力が低い気がした=個々の意思ではなく、決められた命令で──しっくりきた。

 可能性──薬物等で思考力を奪い洗脳している。散弾銃をものともしない耐久力は麻薬による痛覚麻痺でも説明は出来る──だが脛椎損傷で死亡した後に動けるだろうか。脳裏をよぎる悪夢トラウマ──アンブレラのクソ研究の産物=生体兵器B.O.W.

 しかし現状に該当するウイルスの情報は記憶にない。
 足音が聞こえたので思考中断──見張りをもう一人発見。手早く仕留めるも突き刺したナイフが根本からポッキリ折れる──再び武器を失う。見張りが持っていた得物を拝借するか──しかし斧や鋤ばかりで携帯性や取り回しが最悪だ。とりあえずと斧を持ち出口を探しを再開。

 ふと壁に空いた穴から覚えのある品が見えた=テーブルに並ぶ自分の武器。鉄格子で閉じられた部屋──何とかして取り返さねば。その部屋への入口をさがすうちに太陽の光が差し込む門扉が見えてきた──だが外側から施錠。装備の回収したから考えることにして扉を後に。


 その後、見つけた入口の鉄格子は以外にもすんなり開き中へ──なんというか頭が悪くないかこいつら=あきれたように首をかしげるレオン。しかし思考力が奪われているという考えがより強くなる。

 テーブル上に並ぶ装備品を確認。ハンドガン/散弾銃/ナイフ──武器は問題なし。弾薬──九ミリが十発装弾された弾倉が三本/バックショットが五発。その他ライトや救急キットも不足無く揃っていた。しかしあることに気が付く──ジャケットが足りないことに。

「くそっ、お気に入りだぞ」

 悪態をつきながらテーブルに拳を叩きつける──カタンッとテーブルの端のほうから音。そちらを見やれば布や紙の切れ端などゴミが重なっていた──何となく切れ端をどけてみる。まさかの僥倖──カラカラと数発の九ミリと閃光手榴弾が一つ出てきた。

 レオンの予想──ルイスが没収された品か=迷惑料として回収。その時、部屋の外でガシャンと金属音──取り返した武器を手に音のした方へ。外鍵がされていた出口が開け放たれ一枚の紙が貼られている。

 誰かが居た──警戒しながら外へ。クリアリング──右/左=人の気配無し。紙を剥がして確認──見慣れない蒼く光沢のある紙に

『これは貸しだぜ。よそ者さんストレンジャー

の文字。ひとまず敵対者ではなさそう──だが助けた目的は不明。脱出は出来たが現在地も不明。

「どこだよ、ここ」

 ため息混じりにレオンがこぼす──不明な事ばかりが増えていく。

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