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シンガポールの公教育が変わる意味

今日は教育のお話です。

シンガポールがついに今年から公教育の変革に乗り出すようです。
以前から噂は聞いていましたが、ついに来たかと言う感じです。元ネタが世界経済フォーラムの動画なので、信ぴょう性は高いと思われます。


すでに試験を減らす試みが行われているようです。



よく誤解されますが、フィンランドやオランダ、英国などの公教育が変わる中、 マレーシアもシンガポールも日本同様、公教育は昔のままでした。アジアでも「公教育が」変わる、というのは大きな意味があると思います。

よく誤解されますが、マレーシアにくる日本人の多くが利用しているのは欧米のインターナショナル・スクール(インター)がほとんどです。公教育は日本と同様の古いシステムです。シンガポールでもマレーシアでも、インターを選択する家庭があります。

今日はマレーシアから見た、世界の教育の潮流とアジアの公教育のお話です。長文です。しかし、私に取材できるのはごく一部でして、世界全部を見渡すことは不可能です。気づいたことがあれば、ぜひ知識をシェアしていただければ助かります。

350年続いた古い教育がアジアでも終わる


「先生が黒板に向かって生徒に一斉に知識を教える」手法の起源には諸説ありますが、実は1600年代にチェコのコメニウスという人が始めたようです。

彼は特権階級等のある種の人々だけの知能の開発であった教育を不公平として「大衆にも教育を」と提唱した人である。つまり、一人の教師でも100人の生徒を指導できると提言したのだ。彼の手法は、同一年齢、同時入学の生徒たちに同一内容の授業を一斉に多人数で教え、同時卒業を目指す方式であった。実はこれが今の学校教育の基礎となっている。しかし、彼がこの手法を提唱してから350年が経ち、世の中は大きく変わった。
(大前研一「世界への扉を開く“考える人”の育て方-国際バカロレア(IB)教育が与えるインパクト」 )

この手法は、日本にもよく適応しました。子供が多く、生徒に対して先生の数が圧倒的に少ない中、効率よく、軍人や工場労働者を教育できたのですね。

アジアの人は真面目なのか、この方法を独自にエスカレートさせていきます。
シンガポールや韓国での競争教育や、日本の偏差値偏重教育につながっていくわけです。ここで重要視されたのは、大量の知識を暗記することでした。

知識偏重教育は、マレーシアの欧米系教育関係者からはよく「アジアの伝統的なスタイルの教育方法」などと揶揄されてきましたが、それなりに効果を上げてきました。

マレーシアでは現状、中華学校や公教育などの「アジアの伝統的教育」と、新しい欧米式の教育、さらにはモンテッソーリなどのオルタナティブ教育が混在しています。おかげで、ここにくる外国人はいろんな教育を選択できるわけです。

一足先に改革が進んだ欧米の教育

知識を伝達する事が今までの教育であった。しかし、今や誰でもが瞬時で情報や知識を獲得する時代となった。
(大前研一「世界への扉を開く“考える人”の育て方-国際バカロレア(IB)教育が与えるインパクト」 )

2011年、デューク大学のキャシー・デビットソン氏の「今年、小学校に入学する生徒の65%は、大学卒業時に現在存在しない仕事に就くだろう」という予測が世界中で大波紋を起こします。詳細は本を読んでもらいたいのですが、各国での教育改革が始まりました。

オランダ、フィンランド、英国などの国では、教育方法が見直されていきます。

本書によれば、当時、シスコやMSなどの企業がオーストラリア、フィンランド、英米などの教育機関や政府とリサーチした21世紀に必要なスキルセットというものがあります。

批判的思考力と問題解決能力、コミュニケーションとコラボレーションの能力、自律的に学習する能力、ICTを扱うことのできる能力、グローバルな認識と社会市民としての意識、金融、経済に対する教養、数学、化学、高額、言語や芸術といった分野への理解を深める、創造性である。
(大前研一「世界への扉を開く“考える人”の育て方-国際バカロレア(IB)教育が与えるインパクト」 )

これが、新しい教育に共通する価値観です。

最右翼がスイスで生まれたIBです。IBは全人教育で、バランスのとれた人物を目標とします。日本でもIBは文科省の一つの教育の理想像とされ、2020年までに国はIBを200校増やす目標を立てています。

主なポイントは、知識を詰め込む教育から、考える教育へシフトしたこと。教科書を使わない教育を取り入れたこと。哲学やボランティア活動などを必須とし、人格教育にまで踏み込んだ点だと思います。

イギリスも大きく教育制度を変えていますが、IBに比べるとペーパー試験を重視しています。オーストラリアやカナダも同様に、「自分で調べ、考える人」を作ろうとしています。米国は公教育が強く、インターナショナル・スクールはまだ少ないのですが、試験が少なく、日本のシステムに少し似ています。オランダの公教育は、校長の権限が強く、学校によって教育方針が全く違うそうです。

また、モンテッソーリやイエナプランなど、オルタナティブな教育スタイルも選択肢として注目を集めています。

なおマレーシアの各種教育方式について詳しく知りたい方はこちらのnoteで更新中です。

シンガポール=アジアの詰め込み教育の象徴だった

シンガポールの公教育と言えば、競争主義で知られていました。幼少期からアカデミックを基調とする競争が始まり、学力で小学校を卒業時に振り分けます。

実はマレーシアの公教育も似ています。小学校入学前に簡単な読み書き、計算を教え、小学校6年生で進級のための試験があります。

この知識偏重教育、日本の偏差値教育と同様に、マレーシアでは根強い支持があります。日本でも「ゆとり教育」が批判されましたが、欧米系のインターに転校すると、親からは、どこか遊んでいるように見えてしまうようです。

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