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あなたの世界の認識は多分間違っている

世界を「正しく」認識するのって難しいです。今日はそんなお話です。

今「ファクトフルネス」って本を勧められて読んでます。「どれだけ人が思い込みにとらわれて世界を見ているか」っていうお話です。

私の書籍が「ミクロから見た世界への驚き」だとしたら、この本は「マクロ(データ)から見た世界への驚き」って感じでした。

私の本では、1990年代、マレーシアで私が「発展途上国」のイメージを覆された経験を書きました。一方の「ファクトフルネス」はそれを裏付けてくれる本。今や世界のほとんどの国が「中産階級の国」になっている、という事実を、データから教えてくれる本です。

例えば、こんな質問が出てきます。

世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
A 低所得国
B 中所得国
C 高所得国
(答え:B)

(中略)
中所得国と高所得国の国を合わせると、人類の91%になる。そのほとんどはグローバル市場に取り込まれ、徐々に満足いく暮らしができるようになっている。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(日経BP)より引用

笑ってしまうのが、この本で出てくる「低所得」国のイメージの中にマレーシアが入ってることです。

この本はスウェーデンの医師によって(*当初アメリカと書いてましたので訂正)書かれているようで、読者がまさかマレーシアにいる日本人とは思ってないでしょう。本のグローバル化って面白い。

住んでみたらわかりますが、マレーシアの平均的な暮らしぶりは日本と大して変わらず、便利な面もあるほどで、1990年代からそうです。

そして生活費は想像するより安くない。

もちろん、ミャンマーなどからの難民や、少数民族で電気が来ていない村に住んでいる人たちもいるにはいるのですが、首都圏周辺は8割が中間層、というデータもあります。訪日観光客の半数以上がリピーターと言われるほど、可処分所得も上がってきました。

もちろん、マレーシアみたいな国の全体像を知るのは大変難しくて、全てを知ろうとしたら、少数民族の言語を含め、多言語に堪能でないとなりません。

しかし私は生活者として、日々、同じ驚きを感じているのです。

途上国の人もまた、さらに貧しい国をステレオタイプで見ている

でもですね、マレーシアにいるマレーシア人たちも、さらに貧しい国をこういうイメージで見ているんです。バングラディッシュとか、フィリピンとか、アフリカなどですね。

マレーシアの小学生たちは食べ物を粗末にするときに「そんなことしたら、アフリカンキッズに怒られるぞ!」と言うのです。そのアフリカですら、多分、今やマレーシア人が想像しているのとは違うでしょう。

一方で、私は旅行博で日本人の旅行代理店のかたに「フィリピンでもバングラディッシュでも今は中間層が増えて訪日観光が伸びてますよ」とか言われてええっと驚くわけです。

つまり、世界を見渡すことは、ホントに難しい。見えている世界、思っている世界は多分1%にも満たない。自分の見えているところを全てに応用して考えることは、たぶんできないです。

実は世界の90パーセント以上の人が中高所得国に住んでいる

この書籍には、こんなくだりもあります。

「世界の人口の何%が、低所得国に住んでると思いますか?」
この質問で最も多かった答えは「50%以上」で、平均回答は59%だった。
 正しい答えは「9%」だ。低所得国に住んでいるのは、世界の人口の9%しかいない。そしてついさっき、低所得国の暮らしは人々が想像するほど酷くないことを証明したばかりだ。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(日経BP)より引用

これも思い当たる節があります。私は以前途上国を支援するプログラムに参加していました。

そのとき日本から、タイ北部の貧しい村に行ったことがあるのです。そこでは人々が高床式の家でテレビもあり、半自給自足でのんびり暮らしていました。正直、これなら私も暮らせるかも、と思いました。

しばらくすると、ここは「もはや貧困ではない」と認定され、ボランティア団体自体がタイから撤退することになりました。

これを見て、私は「実は世界の貧困はどんどん解決されているんだな」と思ったわけです。

では最貧国の暮らしってどんなのかな? と思われた方、ぜひこの著者が書いた「崩壊国家」ソマリアの本を読むと良いです。かなり長い本ですが、とにかく軽妙な語り口で笑いも満載。常識を壊されました。

この人も「思い込み」を捨てて、「自分の目で見て、聞いたこと」を書いています。逆に言えば、「それだけ」だと点に過ぎないんだけど、それでも、実感を持って事実が迫ってくる面白さがありました。


人々の世界は思い込みでできている

このように、人々の世界って割と思い込みでできています。マスコミや書籍からの情報にしても、タイムラグもあるし、言葉の問題もあるし、やっぱり現実世界とはずれていっちゃうんです。

それほど世界が動くスピードは速いです。

書籍はそこそこ新しい知見を入れてくれますが、それでも著者の思い込みや誤認は必ず入ってきます。私の本もそうです。

私のやり方は、自分で生活して、目で見て、その国の人と話すことで、自分自身も一つのインプット装置になっていくこと。これを全員がやると、インターネットの世界に巨大なビックデータのようなものができて、世界がおぼろげながら見えてくるんじゃないのかな。
ミクロとマクロを行き来しつつ、自分なりに世界を理解していく。

旅はとても良いアップデートになると思います。

ではまた。

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「ファクトフルネス」気になる方はこちらです。

こちら私の本。似たようなことを、生活者の視点から書きました。よろしくお願いします。



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