『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』
お悩み相談、はじめました~!
なんだか「冷やし中華、はじめました」みたいな見出しになってしまいましたが、本書は、最前線でがんばっておられる校長先生、副校長・教頭先生、教職員の方々から寄せられた質問やお悩みに、わたしなりにアタマをひねりにひねって、答えてみたものです。
たとえば……
〇「現場でできる働き方改革なんて限界に来ています。」
〇「勤務時間の過少申告など、残業の見えない化が起きています。どうしたらいいですか。」
〇「自分の考え方、やり方を変えようとしない年配の経験豊富な先生をどうアップデートしたらよいですか。」
〇「新型コロナで飲みニケーションもなくなって、先生たちが孤立し、個業化しています。何から始めたらよいでしょうか。」
〇「過去問をとにかくやれなど、教育委員会が示す学力向上対策に納得がいきません。」
などなど。
もちろん、経験豊かなみなさんが「うーん」とうなっているような問題に対して、わたしが言えることは、たかが知れているかもしれません。
ただ、多少なりとも、みなさんが気づいていなかったことを申し上げられたり、参考になることをお届けできたりするといいなと思っています。
わたしは、校長や教職員、教育長等向けに講演や研修をよく行っています(多いときは年間100回超)。「ご指導をお願いします」なんて言われることは多いのですが、毎回、恐縮してしまいます。教育関係者の方は「指導」という用語を本当によく使いますが(そもそも学習「指導」要領ですしね)、正しいことを教え諭すみたいなニュアンスを感じて、わたしはどうも好きにはなれません。世の中、正しいと決まっていることばかりではないですし、現場の先生方が悩んでいることは、複数の正義や価値観のせめぎ合い、ジレンマだったりもしますから。妹尾から言えることは、よそ者から見えた気づき、ちょっとしたアドバイスというくらいです。この本もそんな性格のものと捉えていただければ、幸いです。
「ジョハリの窓」という有名な話がありますよね?
お互い、見えているものが違いますから、学び合いになればと思うのです。
実は、わたしは小学生の頃、新聞の人生相談の欄が好きでした。ませたガキンチョだったかもしれませんが、「にんげん、年をとっても、こういうことで悩むんだ」とか「みんなそれぞれに大変やなあ」と思ったものです。本書で紹介するお悩みに共感される読者も多いのではないでしょうか。
ちなみに、「四十にして惑わず。五十にして天命を知る」とは孔子の言葉だそうですが、孔子自身の生き方を見ていると、40歳、50歳を過ぎたあとも放浪を続けていて、悩み多き人生だったんじゃないかと思います。歴史に残る大先生でもこうですからね、いわんや凡人をや、です。
『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』と、威勢のよいタイトルにしましたが、「ちょっと気がラクになった」「明日から少しちがった視点でアプローチしてみよう」と思っていただける一冊になれば、幸いです。校長、教頭だけでなく、複雑で一筋縄にはいかない問題に直面している先生たち、また、教員以外のスタッフ、教育行政職員、保護者等にとっても役立てれば、嬉しいです。
複眼的思考のトレーニングに:正解はひとつではない
先ほども述べましたが、今回取り上げた質問や悩みのほとんどには、決まった正解、模範解答があるとは思えません。世の中の多くの問題や人々を悩ませてきた難問というのは、そういうものです。歴史上、哲学者や思想家がたくさん出てきたのも、「よっしゃ、これでバッチリOK」なんていう正解がないからでしょう。
対照的に、学校での勉強、授業などでは、子どもたちに、正解がひとつと決まっている、先人の知識・知見を教えるという側面が強いですよね。このためか、学校の先生たちには、ひとつの正解を探そうとする癖、マインドが強いように思います(もちろん、すべての人がそうだと、安易に一般化するものではありません)。わたしが講演したときにも、「本校で○○したいんですけど、いいと思いますか」「効果的な事例を教えてください」といった質問がかなり寄せられます。「正解主義」といいますか、ひとつの正解を探そうとする癖でしょうか。
「正解はいつも一つ」とは限りません。本書にはない視点や考え方、アプローチも広く歓迎です(「複眼的思考」と呼んでもよいでしょう)。
そこで、より幅広い考え方や視点を紹介したいという思いもあって、本書では有識者との対談も収録しました。ただし、繰り返しますが、識者の捉え方も多くの考え方のひとつに過ぎません。取扱注意。
「わたしだったら、こう考える」「もっといい方法がある」といったアイデア、それから「うちの学校もこういうことで困ってます」「もっと深刻な悩みがあるんですけど」など、ご意見、お悩みは、いまも絶賛募集中です。お気軽にお寄せください。
さて、前口上はこのくらいにして、さっそくお悩み相談に入っていきましょう。本書の使い方もさまざま。たとえば、職場での会話や教職員研修などで、「妹尾はこう解説しているけど、あなただったら、どう答える?」というワークをやってみても、おもしろいと思います。もしくは、寝っ転がりながら、興味のある箇所から読みはじめていただいてもOKです。
(本書「はじめに」より)
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刊行記念オンラインイベント動画も公開中!
刊行を記念して、本書著者の妹尾昌俊さんと、京都市立岩倉北小学校で学校改革を進めておられ、本書クロストークにもご登場いただいた三浦清孝校長先生に語り合っていただきました。小社YouTubeチャンネルからご覧いただけます!
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