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『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』

働き方改革はもう限界、教師の育成がうまくいかない、先生同士のコミュニケーションが足りない、教頭の仕事が忙し過ぎる……。
本書では、学校の先生方が抱えるリアルなお悩み解決へのヒントを、全国各地の学校の先生からの相談に乗り、支援している妹尾さんが、これまでの経験を活かしてお答えします。
先生方の数だけ悩みがあり、正解もひとつではありません。発想を転換し、ちょっと視点をずらしてみたら、お悩み解決への道筋が見えてくるかもしれません。
本書「はじめに」より、学校現場で日々さまざまなお悩みに向き合っておられる学校現場の先生方へ、著者妹尾さんからのメッセージ、そして本書に込められた思いをご紹介します。

お悩み相談、はじめました~!

 なんだか「冷やし中華、はじめました」みたいな見出しになってしまいましたが、本書は、最前線でがんばっておられる校長先生、副校長・教頭先生、教職員の方々から寄せられた質問やお悩みに、わたしなりにアタマをひねりにひねって、答えてみたものです。

 たとえば……
〇「現場でできる働き方改革なんて限界に来ています。」
〇「勤務時間の過少申告など、残業の見えない化が起きています。どうしたらいいですか。」
〇「自分の考え方、やり方を変えようとしない年配の経験豊富な先生をどうアップデートしたらよいですか。」
〇「新型コロナで飲みニケーションもなくなって、先生たちが孤立し、個業化しています。何から始めたらよいでしょうか。」
〇「過去問をとにかくやれなど、教育委員会が示す学力向上対策に納得がいきません。」
などなど。

 もちろん、経験豊かなみなさんが「うーん」とうなっているような問題に対して、わたしが言えることは、たかが知れているかもしれません。
 ただ、多少なりとも、みなさんが気づいていなかったことを申し上げられたり、参考になることをお届けできたりするといいなと思っています。

 わたしは、校長や教職員、教育長等向けに講演や研修をよく行っています(多いときは年間100回超)。「ご指導をお願いします」なんて言われることは多いのですが、毎回、恐縮してしまいます。教育関係者の方は「指導」という用語を本当によく使いますが(そもそも学習「指導」要領ですしね)、正しいことを教え諭すみたいなニュアンスを感じて、わたしはどうも好きにはなれません。世の中、正しいと決まっていることばかりではないですし、現場の先生方が悩んでいることは、複数の正義や価値観のせめぎ合い、ジレンマだったりもしますから。妹尾から言えることは、よそ者から見えた気づき、ちょっとしたアドバイスというくらいです。この本もそんな性格のものと捉えていただければ、幸いです。

 「ジョハリの窓」という有名な話がありますよね?
 お互い、見えているものが違いますから、学び合いになればと思うのです。

 実は、わたしは小学生の頃、新聞の人生相談の欄が好きでした。ませたガキンチョだったかもしれませんが、「にんげん、年をとっても、こういうことで悩むんだ」とか「みんなそれぞれに大変やなあ」と思ったものです。本書で紹介するお悩みに共感される読者も多いのではないでしょうか。

 ちなみに、「四十にして惑わず。五十にして天命を知る」とは孔子の言葉だそうですが、孔子自身の生き方を見ていると、40歳、50歳を過ぎたあとも放浪を続けていて、悩み多き人生だったんじゃないかと思います。歴史に残る大先生でもこうですからね、いわんや凡人をや、です。

 『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』と、威勢のよいタイトルにしましたが、「ちょっと気がラクになった」「明日から少しちがった視点でアプローチしてみよう」と思っていただける一冊になれば、幸いです。校長、教頭だけでなく、複雑で一筋縄にはいかない問題に直面している先生たち、また、教員以外のスタッフ、教育行政職員、保護者等にとっても役立てれば、嬉しいです。

複眼的思考のトレーニングに:正解はひとつではない

 先ほども述べましたが、今回取り上げた質問や悩みのほとんどには、決まった正解、模範解答があるとは思えません。世の中の多くの問題や人々を悩ませてきた難問というのは、そういうものです。歴史上、哲学者や思想家がたくさん出てきたのも、「よっしゃ、これでバッチリOK」なんていう正解がないからでしょう。

 対照的に、学校での勉強、授業などでは、子どもたちに、正解がひとつと決まっている、先人の知識・知見を教えるという側面が強いですよね。このためか、学校の先生たちには、ひとつの正解を探そうとする癖、マインドが強いように思います(もちろん、すべての人がそうだと、安易に一般化するものではありません)。わたしが講演したときにも、「本校で○○したいんですけど、いいと思いますか」「効果的な事例を教えてください」といった質問がかなり寄せられます。「正解主義」といいますか、ひとつの正解を探そうとする癖でしょうか。

 「正解はいつも一つ」とは限りません。本書にはない視点や考え方、アプローチも広く歓迎です(「複眼的思考」と呼んでもよいでしょう)。
 そこで、より幅広い考え方や視点を紹介したいという思いもあって、本書では有識者との対談も収録しました。ただし、繰り返しますが、識者の捉え方も多くの考え方のひとつに過ぎません。取扱注意。

 「わたしだったら、こう考える」「もっといい方法がある」といったアイデア、それから「うちの学校もこういうことで困ってます」「もっと深刻な悩みがあるんですけど」など、ご意見、お悩みは、いまも絶賛募集中です。お気軽にお寄せください。

 さて、前口上はこのくらいにして、さっそくお悩み相談に入っていきましょう。本書の使い方もさまざま。たとえば、職場での会話や教職員研修などで、「妹尾はこう解説しているけど、あなただったら、どう答える?」というワークをやってみても、おもしろいと思います。もしくは、寝っ転がりながら、興味のある箇所から読みはじめていただいてもOKです。

(本書「はじめに」より)

【本書の目次】
はじめに
Chapter1 「現場でやれる働き方改革は限界です」
 [1]やれることはやりつくし、現場でできることは限界に来ています
 [2]働き方改革、もっと文科省から呼びかけてほしいです
 ◇クロストーク 学校に伴走する、教育委員会にできることは 遠藤洋路
 [3] 働き方改革、なんでも縮小、やめていいのか
  ■ポイント解説1 Why & How 働き方改革

Chapter2 「生徒の在校時間が教職員の勤務時間からはみ出してます」
 [1]生徒在校中に業務を効率的に行う工夫はありますか?
 [2]部活の地域移行、ほんとうに進みますか?
 ■ポイント解説2 勤務時間をはみ出す教育活動
 [3]職員の犠牲の上に成り立つ修学旅行でいいんですか?
 [4]残業時間の「見えない化」が起きています

Chapter3 「反省もしない、成長しようともしない先生に手を焼いています」
 [1]自分のやり方を変えないベテランの先生をどうすれば
 [2]人事評価で2をつけたい教諭がいます
  ■ポイント解説▢3 フィードバックを取りに行く意味
 [3]若手のうちから働き方改革というのもギモンです
  ■ポイント解説4 努力大好き、生産性無視の教育現場と教育行政
 ◇クロストーク 耳の痛いことを伝え合える学校になるには 中原淳
 [4]従来の仕事にしがみつく事務職員、どうすればいい?
  ■ポイント解説5 仕事でラクをするマインドと方法
  ■ポイント解説6 誰のための、なんのための仕事なのか

Chapter4 「雑談のない職員室、職員が孤立しがちです」
 [1]コロナ禍のコミュニケーションに悩んでいます
 [2]つっこんだ話ができない職員室
  ■ポイント解説6 教職員の対話と参画
 ◇クロストーク 主体的で対話的な職員室にするためには 赤坂真二
 [3]中堅世代が職場に少なく、なんでも仕事が回ってきます

Chapter5 「教育委員会のやり方に納得いきません」
 [1]教育委員会が示す学力向上対策に納得がいきません
 [2]なんでもそろえようとすることに、違和感があります
 ◇クロストーク なんのためかを問い、学び続ける校長に 森万喜子・三浦清孝
  ■ポイント解説8 特定の結果のみを追う弊害
  ■ポイント解説9 教育・学びの転換

Chapter6 「教頭がしんどすぎます」
 [1]なんとかしたい「教頭はつらいよ」
 ◇クロストーク 教育委員会の改善が教職員の幸せにつながる なかむらアサミ
 [2]教頭が困っているのは、困った校長のせいかも
 [3]教員がたいへんだからといって、ほかの職員は負担増?
  ■ポイント解説10 仕組みで解決
  ■ポイント解説11 教頭の負担軽減は教育委員会の業務改善とセット

Chapter7 「昨夜はある保護者への対応に3時間かかりました」
 [1]学校運営協議会、どう進めていけばいいですか
 [2]働き方改革を進めるにも、保護者の声が心配です
 [3]昨夜は、ある保護者への対応に3時間かかりました
 [4]地域の会議にどれぐらい出ればいいですか
  ■ポイント解説12 家庭・地域との関係づくり

おわりに

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刊行記念オンラインイベント動画も公開中!

刊行を記念して、本書著者の妹尾昌俊さんと、京都市立岩倉北小学校で学校改革を進めておられ、本書クロストークにもご登場いただいた三浦清孝校長先生に語り合っていただきました。小社YouTubeチャンネルからご覧いただけます!


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