【金木犀はズルい】ていねいに書く雑文~その149~20221024
【金木犀はズルい】
キンモクセイの香りが広がってきて「秋だね」なんて、ちょっと目を細めながら、ちょっとセンチメンタルな顔をしながら言う。
1年の中でこれほど香りがピックアップされる木はないだろう。桜の香りもアジサイの香りもヒマワリの香りも漂ってはこないし。
みんなキンモクセイのことになると「うふふ」とニンマリする。でもわたしがキンモクセイを認知したのは実はここ数年で、妻に教えてもらい「これがキンモクセイかぁ」と知った。これが噂のキンモクセイなのねと。
まぁ、たしかにいい香り。どの木がキンモクセイか知るのは遅かったが、香りとしては知ってるやつだった。ただ、だからと言って散歩中に目の端にキンモクセイを見つけても「どれ、今年のキンモクセイの香りは・・・」と足をのばすことはない。もちろん「キンモクセイ巡りの散歩」に出ることもない。
たぶん、大体の人はそんなもんなんじゃないだろうか。いや、キンモクセイの香りは好きだ。芳香剤とかに「キンモクセイの香り」があれば、一度は手にしたい。でも、キンモクセイは自然に香ってくるからいいものな気がする。部屋の窓を開けたら、風にのってとかがベストな気がする。
「あー、今年はキンモクセイの香りをかげなかったな」は「あー、今年は桜見れなかったな」にはやはり遠く及ばない気がする。
キンモクセイのよさは、冬に向けてなんだか葉っぱが色づいてきて、ちょっと寂しさがあるシーズンだからこそ際立つ。春に香ってもそれはやっぱり桜のかげに隠れちゃう。そんな感じ。
たぶん、キンモクセイの花がきらびやかなものじゃないってのもあると思うけど、香りってのは主役になりにくい。香水はいいにおいかもしれないけど香水のニオイがキツイのはイヤだもんね。食べ物のニオイで食欲は刺激されるけど、それは味があってこそ。くさいけど旨いなんてものもあるぐらいだし。
タイトルで「ズルい」と書いたのは、別にアンチキンモクセイだからじゃない。何か秋になると急にキンモクセイの話して「季節感」出してくるのはズルいなと。ズルいというより上手いと言った方がいいかも。
香りってのは主役じゃない。「キンモクセイが香ってきましたね」にはイチョウ並木が綺麗でしたとか、山の紅葉黄葉が綺麗でしたとか、そういう直接的な分かりやすさにはない、「違いの分かる人感」があるなと。たぶんそんなこと誰も狙ってないんだけど。こっちが勝手にそう思ってるだけで。
個人的には「コーヒーは香りですよ」なんて言われたら「なるほど」よりも「ムムッ?」が勝るような、そんな感じ。
キンモクセイはズルい。たぶん、オシャレなんだろうねキンモクセイ。
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