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続・ほろよい歳時記

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京都と滋賀の二拠点から、酒蔵のある風景を旅して呑んで。四季折々に好きなものを愛で、酔いしれる暮らし。毎日新聞に連載していた「すみれのほろ酔い歳時記」の続編。
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#古民家生活

祭りと共に過ぎ去った春の日々。

祭りと共に過ぎ去った春の日々。

あの白銀の景色から、季節は巡って、窓から、溢れんばかりの眩しい緑が迫っている。
日々、刻々と移り変わる季節の色を、この山の装いに眺めている。

中でも愛する山色は、桜の咲くころ。
もくもくと湧き立つような山の色を、脳裏に焼き付けようと必死。
自然の織りなす色々を、絵の具にのせていくことが何よりの喜びです。

今年も描いた、唐招提寺のうちわまきへの奉納画二対も、
萌えいづる春の色。
神々の宿る〝山笑

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湖北、冬色の日々

湖北、冬色の日々

ほぅ――と、言葉を無くして、今朝も、我が家の窓から雪景色を見つめていました。
木之本は、今が一番美しい季節かもしれない。
この街のどこにいても、清廉な白のベールをまとった山並みが見える。

新年早々から、京都や神戸へ、仕事で泊りがけで往復する日々が続いていた。せわしない出張から帰る度に、白銀の山々に迎えられ、心が静かに震えた。

雪がすべてを覆い隠した街道の景色は、歴史の武将たちが眺めていたものと

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秋色に染まる北国街道 ―「 街道まつり」

秋色に染まる北国街道 ―「 街道まつり」

今年の紅葉シーズンの到来は早いらしいけれど、湖北の紅葉はそれよりももっと早いようで。
街道から眺める山並みも、すっかり秋の装い。

夕刻、秋色をまとう、木之本のお地蔵さま。

我が家の玄関先に迷い込んでいた銀杏の葉は、どうやら近所の神社からやってきたみたい。
お参りがてら行ってみると、眩しい程の黄色が、秋空に映えていました。

ちょうど、秋の連休中には、木之本の街道まつりが催されていたので、お昼ど

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お蚕さんと糸取りの里――賤ケ岳のふもと、大音地区。

お蚕さんと糸取りの里――賤ケ岳のふもと、大音地区。

今春から滋賀銀行の季刊誌「かけはし」で、湖国の街道を巡るイラストコラムを連載しています。10月発行の秋号では、北国脇往還を取材しました。

なかでも興味深かったのが、賤ケ岳のふもとにある大音地区の糸取り工房です。

糸取りをする時期は、6月から7月まで。
私が取材したのは、今年最後の糸取りの日でした。
工房を訪ねると、カタカタと糸を紡ぐ音が心地よく響いていました。

ここ大音での糸取りの歴史は古く

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ぼくは、美味しいお酒になるために生まれた。

ぼくは、美味しいお酒になるために生まれた。

朝7時―。
雲一つない青空が広がっていた。まだ昨夜のお月様が、ぼんやり青空に浮かぶ。

今日は、酒蔵の蔵人さんに引率してもらって、無農薬栽培の酒米の農家さんの元を訪ねることに。

酒蔵から小さな車ミゼットを借りて、夫婦ふたりでぎゅうぎゅうに座って運転する。ところどころ刈り取られた田んぼと、頭を重たげに実らせた稲穂。黄金色の田んぼ道を、軽やかに疾走する軽トラについていく。

木之本から高月を過ぎて、

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にょろりんの綱渡りを見た。(怖いもん見たさ)

にょろりんの綱渡りを見た。(怖いもん見たさ)

昼下がり、我が家自慢の庭を眺めながら、主人と一緒にお昼ご飯。
「あ”―っ!」
と、主人が指さす先に、にょろりんが…

気持ち悪さに、ぞっとしながら、怖いもの見たさでシャッターを切ってみる。この自然全てを受け入れるのだと言い聞かせて…。

でもやっぱり、ぞっとする…苦手だわ、にょろりん。
なんとか苦手を克服するべく、しばし観察。

身体を波打たせながら、松の木から電線を綱渡りして行く、にょろりん。

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蛍灯

蛍灯

夜回りに行った際、ご近所さんから、蛍が見られるとの情報をもらい、さっそく翌日、時計が8時をまわってから夜のお散歩へ。
お酒と、ポケットにお猪口を偲ばせて。

街道をまっすぐ、大通りを2つ越えたあたりの川で、だいたい10分くらい歩く…という情報を頼りに、歩いて行きました。
だんだんと街灯もなくなって、真っ暗な夜道を進む。畦道の草原、懐かしいにおい。雨の降らない梅雨入りでも、蛙の合唱はとても賑やか。

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蔵の女将さん直伝の桑酒モヒート

蔵の女将さん直伝の桑酒モヒート

木之本の元気なお母さんたちが集まって、こんど地元で開催する日本酒会のための試食会におよばれして来ました。
皆さん家事をすませられてから、夜になって、近所の酒蔵にいそいそと集合。北国街道沿いの老舗酒蔵、山路酒造さんで、女将さんのご厚意で趣ある店内の一角をお借りしての和やかな試食会が始まりました。

お母さんたちの持参した籠から、次々と食材が出てきて、机に素敵なお料理がひろげられてゆきます。お酒も、山

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賤ヶ岳、天国へと昇るリフト。

賤ヶ岳、天国へと昇るリフト。

GWに、木之本から車で10分ほど、賤ヶ岳を訪れた。
ふもとの駐車場から、リフト乗り場への階段を登るとき、どこからか流れ聞こえてくるノスタルジーな音楽。幻聴かと思うほど、自然にとけこむ導入BGM。そして階段を登り切ったとき、目の前の情景に思わず感嘆の声を上げた。

射干の花畑が一面に広がり、山の上までずっと続いている。その上をゆっくりと流れ来るリフトには、時折運ばれてくる人影が。無事生還を成し遂げた

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