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滋賀から目指せJリーグ ! おじさんサポーター、レイラック滋賀とゆく その③

  Jリーグを目指す滋賀県のサッカークラブ「レイラック滋賀」のファンになって18年目。いつの間にか白髪が増え、体力もすっかり落ちたけど、クラブはいっこうにJ入りできず。それでもめげないオジさんサポーターは、めげないクラブと今年も歩んでいきます。

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やってきたレジェンド

 4月16日、滋賀県東近江市の布引グリーンスタジアム。この日の対戦相手は、南からやって来はりました。その名は「沖縄SV」。今季JFLに参入したばかりのクラブですが、とんでもない選手がいるんです。その選手とは2006年ドイツワールドカップに出場、ドイツやアルゼンチンなど海外クラブでも活躍した元日本代表のストライカー・高原直泰さん。まさにレジェンド。高原さんはクラブ代表をつとめ、しかも監督兼選手として所属しています。

 試合前、ウオーミングアップにさっそく高原選手が登場や! ランニング姿を見るだけでも力強く、軽やかな動きです。職場の階段を上るだけでハアハアと息が切れ、日々のデスクワークで肩こり腰痛の激しいオジさんと同じ40代とはとても思えません。当たり前やけども高原選手、本当に格好ええですね。

 ウオーミングアップを終えた高原選手

 アマリーグのJFLとはいえ、往年の名選手のプレーが見られる機会が結構あります。過去にも布引スタジアムには、南アフリカW杯に出場した駒野友一さん(当時FC今治に在籍)も対戦相手として来場しています。レイラック(当時はMIOびわこ)にも、かつて清水エスパルスやガンバ大阪などで活躍し、日本代表経験もある高木和道さんが在籍していました。JFL全体を見渡すと元Jリーガーも多数在籍しており、そうした選手のプレーを身近に見ることができるのも醍醐味の一つです。対戦相手とはいえ、オジさん世代にとっては大スターである高原選手が滋賀に! レイラックの勝利を願いつつも、高原選手の好プレーを観たい、という気持ちも抑えきれません。

滋賀といえばこの歌を

 さあ、レジェンドを迎え撃つレイラック。選手入場です。ここは滋賀県、われらがホーム。レイラックサポーターは毎試合、選手入場の際に応援用に一部歌詞を変えた「琵琶湖周航の歌」を合唱します。滋賀といえば、やっぱりこの歌でしょう! オジさん、滋賀県内の支局に2度勤務した経験があるから、周航の歌はバッチリやねん。最初の赴任地(彦根市)で、社内でもカラオケ大好きで知られた上司に仕込まれましてん! 滋賀のみならず、全国各地で愛されているこの曲、歌詞もメロディーも素敵ですよね。

 全国各地のクラブと対戦するJFL。周航歌を歌うと、オジさんのテンションは自然に上がります。琵琶湖沿岸の街並みが頭の中に浮かんできて「選手もサポーターも、滋賀を代表して戦うんや」という思いが、自然とこみ上げてきます。万感の思いを胸に、オジさんは「われーはーうーみのーこー」と声を張り上げに張り上げ、「さすーらーいのー」で張り上げすぎて裏返ってしまいます。

レイラックサポータ手作りのチャント(応援歌)の歌詞カード

 試合中、サポーターの声援が途切れることはほぼありません。レイラックには選手ごとに応援歌(チャント)があります。ほかにも劣勢の場面やチャンスの時、試合の状況に応じたチャントが幾種類も。コールリーダーの声にあわせ、太鼓とドラムが巧みにリードしてくれるので、オジさんの外れた音程もごまかせてるはずや。コロナ禍では声出し応援ができませんでしたが、その分も選手に届け、と思い切り声を張り上げます。どの歌も、横断幕もサポーターさんたちが、思いを込めて作成しています。オジさんも太鼓やドラムに合わせて「しーがしーが、レイラック滋賀!」と叫び、またまた声が裏返りました。

暫定首位

 試合は、先制点をあげたレイラックが優勢に進めます。背番号「10」を背負った高原選手は、後半から登場。得点こそなかったものの、さすがは元日本代表、ゴール前では鋭い動きで、会場を幾度も沸かせます。高原選手の好プレーを観たいなあ、と思っていたオジさんですが、いざピッチに出てくると「シュート打たせるな、抑えてくれ」と祈りました。あのレジェンドが目の前で、滋賀の小さなスタジアムでプレーしている感激に浸りながらも、やはりここは真剣勝負やねん。

 さすがの名ストライカー、ボールが渡ると何か起こりそうな雰囲気を漂わせます。高原選手と競り合うことが多かったレイラックDFの平井駿助選手(この日は先制点も!)は「ゴール前での動き出し、一瞬の動きがさすがでした」と、試合後に感嘆しきりでした。ちなみに平井選手、今季J1横浜マリノスからレンタル移籍中の俊英です。長身ながらスピードも持ち合わせ、沖縄SVの猛攻の芽を摘み取っていきます。まだ20歳とチーム最年少ですが、和歌山県出身ということで「関西のノリ、大丈夫なんですよ」と早くもチームに馴染んでいる様子です。

若いけど頼りになる平井選手

 そして攻める沖縄をいなすと2点を追加。3-0として見事勝利しました。それにしても3-0で勝つって、何年ぶりやろ? サンガを応援している「新米サポーター」の後輩がサガン鳥栖に3点差で勝って喜んでたけど、こんな気持ちやったんかな。ウチも3-0で勝ったよ後輩!

サンガが3得点で勝利した試合はこちら

 そしてこの試合終了時点でなんと、暫定首位に立ちました!昨年は最下位に沈んだクラブだけに、スタッフ、クラブ関係者も興奮を隠せません。オジさんはただただ驚くだけでした。

敵も味方も思いはひとつ

 快勝の喜びに浮かれながら反対側のスタンドに目をやると、沖縄SVのサポーターさんたちの姿がありました。残念な敗戦となりましたが、あいさつに来た選手を「次、頑張ろう」と拍手や声援で励ましています。試合前に伺うと、この日は沖縄出身で他府県在住の方々が集ったそうです。今は遠く離れていても、故郷を思う気持ちがひしひしと伝わってきます。

沖縄SVのサポーターのみなさん

 オジさんが琵琶湖沿岸の景色を思い浮かべたように、沖縄サポーターさんたちも、もしかしたら南国の海や空を心に描いて応援していたのかもしれません。応援するクラブは違ってもいても、応援する気持ちはきっと同じ。点差が開いても、最後まで諦めず声を涸らしていた姿に、相手チームながらオジさんの目頭は熱くなりました。アウエーで沖縄で対戦する時も、きっといい試合になるのでしょう。

 試合が終わると、レイラックのサポーターのみなさんは、横断幕を片付け(オジさんもお手伝いしています)、帰路につきます。オジさんがチャントを歌っていた最中、太鼓を叩いていたサポーターの一人、大学生のいっささん(18)も幕を片付けています。甲賀市在住のいっささん、子どものころからずっとレイラックを応援しているんです。

-どういうきっかけでサポーターになったんですか?

いっささん「小学1年の時に、MIO(昨年までのレイラックの名称)のサッカースクールに入って、その時のコーチが選手だったので観に行くようになったんです。いつも教えてもらっているコーチが試合に出るという、違った姿を見られるのが楽しいなと思いました。それで試合を観に行くようになって、3年生からは応援(声出し)もするようになりました」

-おお、それは筋金入りですね。でもJFLを応援している、って友達に珍しがられないですか?

いっささん「Jリーグじゃないんだ、と言われて腹が立つこともあります。でもプレーのレベルも決して低くないです。JFLは働きながらサッカーをするので、決して環境には恵まれてないですし、有名な選手も多くありません。それでも選手たちは頑張ってプレーしています。レイラックには小学生の時からお世話になっていますし、ずっと応援しています。これからもずっと応援していきます」

 オジさんがレイラックを応援し始めたころ、まだ幼かったいっささんが、今や立派な青年になり、太鼓を叩いて応援をリードしています。レイラックはまだ小さなクラブですが、少しずつ、少しずつ歴史を積み重ねているんやなあ。オジさんも、いっささんたちと応援を続けていきたいなあ。


江藤 均

次回は「こんなお店がスタジアムに!」です


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