わたしとそっと011

Sotto9周年企画「わたしとそっと」 第1回~ボランティア・Mさん~

 私たちは、NPO法人京都自死・自殺相談センター Sottoです。
京都で「死にたいくらいつらい気持ちを持つ方の心の居場所づくり」をミッションとして掲げ活動しています。
この連載企画「わたしとそっと」は、Sottoの設立9周年を記念し、Sottoのことを深く知る人々にインタビューし、「わたし」の目線からSottoについて語ってもらう企画です。

 第1回のご相手は・・・Sottoのベテランボランティア・Mさん。
はんなりした雰囲気で場を和まし、他のボランティアさんからも頼られる存在。
そんな彼女にSottoのこと、訊いてみました。


▲Mさん

ーMさんはSottoのボランティアとして古株ですよね。はじめどのような経緯でSottoに入ったんですか?

ボランティアの1期*1やから・・・もう何年前から活動してるんやろ(笑)。
そもそもは家族が自死したのがきっかけで。あとほんまのことを言うと、Sottoが西本願寺の近くにあったからというのもあります。元々仏教好きなんで。

そこでたまたま、こういう団体がボランティアを募集するというので、私にはすごくタイムリーでした。ただ、1期生として研修を受けて・・・ほんまのところ、びっくり仰天してしまって。「えぇ、こんなことやるの?」って。

*1 〇期・・・ボランティア養成講座を受けた期のカウント。延べ10回開催しているので、現在Sottoには1~10期生まで存在する。ちなみにこの記事を編集している私は8期生です。期ごとにメンバーに何となく特徴があるというのがSotto内での定説(?)。

ー研修の内容に、でしょうか?

はい。まずロールプレイ*2で衝撃を受けました。若い人は学校でロールプレイみたいな形式のことをやったりすることがあるかもしれないけど、私は学校を出たのは何十年も前だし、ロールプレイとかワールドカフェ*3とか、そういうことを多くやる研修の内容にまずびっくりしたまま、研修を終えたという、戸惑ったまま終わったという感じです。

*2 ロールプレイ・・・Sottoのボランティア研修では、研修生とスタッフとで電話のかけ手と受け手になり、実際に電話相談を受けることを想定したやり取りを行う。これを何度も(何度も)繰り返し、Sottoの相談員としての姿勢を身につけていく。
かけ手はただ役を演じているというより、実際に自分が「苦しい」「死にたい」と思うところまで気持ちを落としてからロールプレイを始める。気持ちが高ぶり本当に涙が出たり、終わったあともなかなか素に戻れないといったこともある。
*3 ワールドカフェ・・・4~5人程度のグループに分かれ、大きな一枚の模造紙にアイデアを自由に書きこみながらテーマに基づいて対話を行う形式。トーキングスティックを持っている人のみ発言でき、割り込みはできない。また他人の意見を否定してもいけない。
Sottoではたとえば「どんな時に死にたくなる?」「死にたいとき、何と言われたら楽になる?」といったテーマが設定されることがある。

「これはとても無理だ」と思ったんです(笑)。途中で辞めはしなかったけど、毎回毎回しょげて帰って、自分でも「毎回よく来てるな」と思うくらい。あまりにも自分ができな過ぎて、研修で言われることが難しすぎて。

自分のいた世界と全く違うことをやっているところだったから。考え方も。
それは「本当に当事者の気持ちを考える」っていうこと。私が良かれと思う気持ちじゃなくて。

それまでは、私は(人に対して)私が良かれと思う気持ちで接してきたんだけど、それがここでは違うんだと気づいてびっくりしました。3期生が入ってくる頃かな、それまで言われてきたことが分かるようになってきたのは。それまでよく(ボランティアとして)残してくれたと思いますね。

ーそうやって悩みもしつつ1期からずっと活動しているMさんから見て、Sottoのどういうところが今の社会で必要なんだろうと思いますか?Sottoの存在意義って言ってもいいかもしれません。

一番に思うのは、人に対しての寛容さ。それが半端じゃない。人をどういう風に助けようとか、具体的にどうしようというところではなく、本当にただそばにいるっていう、そういうところがユニークなものだと思います。

もはやついていけないくらいの寛容さ。自分もそうあれたらいいと思います。完全にはできないけど、そこに近づこうと思って活動してますね。

ー一般的な意味合いでの「支援」というと、その人を具体的に助けるっていうことが目的になることが多いですね。そこでSottoは「ただそっとそばにいる」を目的にしている。そこは特徴的ですよね。

Sottoに来るまで私は、別にそれまで人を助けようとか思って生きてたわけではなかったけど、Sottoで自分の中の「助けてあげよう」っていうような恣意的な部分に気づいたんです。

研修を受けてロールプレイをやっていると、自分の恣意的な部分ばかり出てくる。「あっ、言ってしまってるな」っていう。衝撃的で、自分を見つめ直さざるを得なかったです。

ーなるほど。Mさんはたけさん(Sottoの代表・竹本*4のあだ名)とも長い付き合いですよね。何かたけさんのぶっ飛んでるエピソードはありますか?この人すごいな、と思ったこととか。

そうねぇ、半分悪口みたいになるけど(笑)。

*4 竹本・・・浄土真宗本願寺派の僧侶でありながらNPO法人Sottoを設立し、最近は電力会社の起業をするなど、とにかく圧倒的な行動力を持つ竹本。豪快だが繊細な心を持つ人でもある。パワフルさにスタッフさえ面くらうこともあるが、皆が最後に頼りにするのはやっぱり彼。

ーえっ、書ける範囲で(笑)。

こちらが何を言っても「やってみればいいんじゃない」っていつでも言うところ。「難しいな」ってまず思わないところ。うん。本当の優しさっていうか、それがあるんだと思う。人に対する優しさが。って言っても私の研修のときは厳しかった(笑)。そう言うと「そうやね~」とただ言われるけど(笑)。

ーそんなに厳しかったんですか。

1期生のときはめちゃくちゃ厳しかった。ロールプレイしていると情け容赦なくて。それに比べたら今は優しくなったかなぁ。

ー初期はそんなに大変だったとは・・・。
ここで最後に、話は変わりますが、MさんがSottoで気に入ってるのはどういうところでしょうか。

うーん、Sottoの中には年功序列がないじゃないですか。私は年功序列の世界で生きてきたから、Sottoのそういうところが居心地よかった。若い人とも対等に喋れるので。

でも、外に出ればまた年功序列の世界。Sottoの中の、年功序列のない世界というのは一つの理想だと思います。現実はなかなかそうではないんですけど。

ー確かに、Sottoは年功序列っていうのはないですね。年は関係なくものを言える空気がある気がします。そこはいいところですよね。世間はそうではない、っていうのも実際そうだと思います。
今日はありがとうございました。いつも一緒に色々と活動してますが、改めてこんな風にお話を聞く機会はなかったので、個人的にも新鮮で楽しかったです。

いえいえ~、こちらこそ。ではでは。

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 いかがだったでしょうか。楽しんで読んでいただけたならば幸いです。
第2回は4月14日(日)更新予定、インタビューの相手は・・・お楽しみに!
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