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【シンポジウム】続比較社会漂流記① ~始まりのあいさつ~【京都自死・自殺相談センター】

シンポチラシ-1

チラシデザイン:カズマキカク

2019年9月7日に、NPO法人京都自死・自殺相談センターが開催したシンポジウム「続比較社会漂流記」の内容を編集し、ダイジェスト記事としてこれからお届けします。
このシンポジウムは、NPO法人京都自死・自殺相談センターSottoが、社会の中で人としての価値を比較して・されて生きることの苦しさや、そこから生じる死にたい気持ちについて考えを深めることを目的として開催しました。
2019年1月に開催したシンポジウム「比較社会漂流記」の続編ではありますが、今回のシンポジウムから読んでいただいても問題ありません。
マガジン:シンポジウム「続比較社会漂流記」ダイジェスト記事集

Sottoについて:京都自死・自殺相談センターSottoについて
前回の「比較社会漂流記」マガジン:シンポジウム「比較社会漂流記」ダイジェスト記事集

~登壇者プロフィール~

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▲左から竹本了悟(NPO法人京都自死・自殺相談センターSotto代表)・
野村清治さん(リメンバー名古屋自死遺族の会 代表幹事(共同))・
小林エリコさん(NPO法人コンボ職員・作家)・
松本俊彦さん(精神科医)

竹本了悟
(NPO法人京都自死・自殺相談センターSotto代表)
広島生まれ。浄土真宗本願寺派西照寺住職。防衛大学校卒業後、海上自衛隊に入隊するが僧侶となるため退官。龍谷大学大学院で真宗学を学ぶ。浄土真宗本願寺派総合研究所研究員を経て現在、TERA Energy株式会社代表取締役。2010年に京都自死・自殺相談センターSottoを10名の仲間と設立、代表を務めている。
野村清治
(リメンバー名古屋自死遺族の会 代表幹事(共同))
自死遺族当事者として、さまざまな自死遺族のわかちあいに参加し、また遺族会の運営に加わる。死にたい思い、遺族の思い、自死そのものについて、模索しながら現在に至るSottoとは立ち上げ時より関わりを持ち、2017年より理事。
小林エリコ
(NPO法人コンボ職員・作家)
1977年生まれ。茨城県出身。短大を卒業後、エロ漫画雑誌の編集に携わるも自殺を図り退職。その後、精神障害者手帳を取得。現在も精神科に通院しながら、NPO法人で事務員として働く。ミニコミ「精神病新聞」を発行するほか、漫画家としても活動。自殺未遂の体験から再生までを振り返った著書「この地獄を生きるのだ」(イースト・プレス)が大きな反響を呼ぶ。エッセイ「わたしはなにも悪くない」(晶文社)より刊行。大和書房webにて「家族劇場」連載中。
松本俊彦
(精神科医)
1993年佐賀医科大学医学部卒業後、国立横浜病院精神科、神奈川県立精神医療センター、浜病院精神科、神奈川県立精神医療センター、横浜市立大学医学部附属病院精神科などを経て、2015年より現職。日本アルコール·アディクション医学会理事、日本精神科救急学会理事、日本青年期精神療法学会理事。主著として、「自分を傷つけずにはいられない~自傷から回復するためのヒント」(講談社、2015)、「もしも「死にたい」と言われたらー自殺リスクの評価と対応」(中外医学社、2015) など。

続比較社会漂流記① ~始まりのあいさつ~

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野村:
本日コーディネーターを務めます野村と申します。今日はよろしくお願いいたします。
見ていただくと分かるかと思いますけど、ちょっと普通のシンポジウムとは違う、お茶を飲みながら話すような、そんな姿を今日は皆さんに見ていただくような感じになるかと思います。
見た目はゆるいんですけども、内容としては深く深く掘り込んでいけたらなというのが今日の思いであります。
皆さん、今のお気持ちというか、今日にかける思いなど、どうですか。
まずは小林さん。

小林:
はじめまして、小林エリコです。昨年度も呼んでいただいて、今年度もまた呼んでいただきました。
結構テーマは深いというか、あまり明るい話題ではないんですが、前回は結構面白く、ユーモア溢れる感じで話ができたのではと思います。
今日もまた皆さんに、帰るときに来てよかった、お土産ができたなと感じてもらえるような会にできたらと思います。
よろしくお願いいたします。

松本:
今日は少し京都の街中を歩いてこの会場にやってきました。
前回の「比較社会漂流記」で何を話したか、実は何にも覚えてないんですね。
好評だったと言われますが、記憶してないのに好評だったっていうのが一番怖くてですね。で、今日もまだ頭が真っ白なのです。
何よりも今僕が囚われているのは、前回の会場とは違って、この会場に喫煙所がないということなんです。
一応、依存症の治療が専門なんですが、私自身もニコチン依存症という病気を抱えておりまして、休憩時間に自分はどうしたらいいのかと、そのことに囚われております(笑)。

竹本:
皆さん、こんにちは。
開始前に、登壇者の皆でどういう配置が一番喋りやすいかと打ち合わせたんですが、実際に座ってみると、思った以上に近くてですね(笑)。
これから話が進むとこれが心地いい距離感になっていくのかなと思います。
すごく楽しみにしてます。

野村:
皆さんありがとうございます。
前回と同じメンバーということですが、実は僕だけ違うんですよ。
皆さんすでに(関係が)できあがっていて、さらに以前それが好評だったっていう場所に、コーディネーターだけ入れ替えるという、非常に恐ろしい企画をぶつけられてまして。
コーディネーター比較をされているような、何かすごく居心地の悪い状態になってます(笑)。

会場: 
(笑)

竹本:
そういうものも含めて比較っていうのが僕たちにはあるなと思います。
皆さん気にしたりすることはありますか、比較することで。

小林:
それはもうしょっちゅうですね。
作家になってからは、どっちの方が売れてるのか、あの人の方が売れてるな、そんなことばっかり気になりますね。
5月に出した『わたしはなにも悪くない』っていう本を、晶文社さんという出版社から出したんですね。

で、今回晶文社の営業さんと書店回りをしたんですが、同時期に発売された本で結構話題になっているものがあって。
書店に行くと、その本がまぁ大体私の本の横に置かれてるわけなんですよ。
どうやらその本はよく売れていて、3刷か4刷されていて。
めっちゃ悔しいって思ったんです。
それからですね。もう本当に落ち込んで。私の本、まだ初版*しか刷られてないので。
*2019年9月時点

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野村:
前回の『比較社会漂流記』を聴いたあと、僕も考えてたんですけど、やっぱり物事を評価する上で一つの線がありますよね。
例えば、今の話だと本がいっぱい売れる・売れないということ。
その線上に自分の状況を並べてしまうと、ちょっと羨ましいなとか、自分の方がましだなっていうような、そういう他との比較が生まれてくるのかなと思いましたね。
僕なんか本は出してないわけですから、そういう人間からすると本が出てるだけでもいいように思ったりするわけですが。

竹本:
僕は『わたしはなにも悪くない』はすぐ買いましたよ。出てすぐ。

小林:
ありがとうございます。それだけで嬉しいです。

竹本:
松本さんは本を出したら、Amazonレビューの順位を結構見るって以前おっしゃってましたね。

松本:
そう。あれ見ちゃいますね。編集者の手前もあるし、あとやっぱり嫌いな人の本に勝ちたいとか、そういうのもしょっちゅうある。
まぁそうは言ったって気にしなくなっちゃいますけどね。どうせ大して僕の本は売れないので。
ただ、先日評論家の荻上チキさんと一緒に池袋のジュンク堂でトークイベントをやったんですよ。
初めてで、大きな書店でだらだらとしゃべるだけ。

それは別によかったんですけど、終わったあとに僕たちのサイン会をやるんですよ。
サイン会のときに、やっぱりどちらかの列の方が長くなるわけですよ。
荻上さんの方が列ができていて、僕は先にサインし終わっちゃったので空き時間になりました。
あれは何ていうのかな、中学か高校のときにバレンタインのときにもらったチョコの数で優劣をつけられるような。
それがそのまんま自分自身に対する評価につながってくるっていう。
あれはちょっとした傷つき体験でしたね。
まぁしょうがないと思って家に帰ってわら人形作ったんですけども(笑)。

会場:
(笑)

松本:
でも、自殺に関して言うと、確かに貧困とか、そういう社会的な苦しさっていうのは自殺に関係していますが、では明治11年以降の統計の中で一番貧困だった時代に自殺者が多かったかというとそうではないんです。
例えば、明治11年以降で日本で自殺者が少なかったのは第二次世界大戦中で、社会全体が苦しいときには意外に皆耐えられるんですが、やっぱり人は格差や他の人との差で傷ついたり、あるいは昔の自分との差で傷ついたりするんだと思います。

そういう意味では比較っていうのは、われわれが傷つくキーワードかもしれないと思います。
ただ一方で、誰かを定義するとき、あるいは何かを定義するときに、実は絶対的な定義ってないんです。
例えば白っていう色を定義するときにはそれは黒ではないとか、あるいは、誰かと待ち合わせのときに自分の特徴はこうだよって言うときに、背が高いと説明したりとか、そういう風にやっぱり比較の言葉を使ってでしか定義できないんですよね。
その比較が私たちを傷つける。
だから、今回の題名についた「比較社会」っていうのは、考えれば考えるほど深い、あるいは本質的な言葉なんじゃないかと思っています。

続比較社会漂流記② ~同じところ探し・違うところ探し~ へ続く

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