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記憶を辿る36

『 軌道修正 』

自身の行動や言動に日々苛まれる生活が続いていたある夜。
急に意識が朦朧とし出し、何とも終わりの悪い1日だと感じた私は、眠りにつこうとベッドに入ったまでは記憶がある。

人は自分に都合の良いように記憶を捻じ曲げ改竄することで保身を図る事は多々あること。私の脳内でもそれは起こり、記憶を抹消するということで臭い物に蓋をしているのかもしれないが、朦朧としながらも時計を見て、惨状を確認した時間から逆算するとおよそ15分ほどだったが、未だこの時の記憶だけは戻ってこない。

当時飼っていたペットが部屋の外で吠えているのが微かに聞こえ、意識が覚醒し、起きた惨状に目を疑う。

自身で自分の首を締めていたのである。
タオルを首に当てがい、部屋はグチャグチャになっていた。

何が起こった?
どうなっている?

秒速で脳内が現状を理解することに努めるが把握できない。
目の前にあったペットボトルの水を一気に飲み干し、タオルを放り投げる。

当時をいま思い返すと、相当病んでいたのだ。
周りが自分自身の道を進んでいく中、何も作り出してこなかった現実に狼狽え、行き場のない憤りや出口のない未来への不安に焦っていた。どう考えていたのかは分からないが、両親が考える息子像や期待に応える事の出来ない現実も後押ししていた。

自身で選んだバイト先に、明日から通うことになったと父親に告げると、職種を聞いては今すぐに断ってこいという事や、代わりに選んだ職種が”発掘作業員”だったりというようなが今までにも何度もあった。
親御心だったのだろうが、無言の期待と圧力が重くのしかかっていた。


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