京都大学学術出版会 月間ニュース No.5 (2024年2月)
いつもご愛読ありがとうございます。
2024年1月〜2月の新刊、イベント情報をまとめてお届けします。どうぞよろしくお願いいたします。
・概要
新刊4冊、近刊9冊をご案内いたします。動画は2本更新しました。
・新刊案内
『戦場に忘れられた人々:人種とジェンダーの大戦史』
『「大学の森」が見た森と里の再生学』
『基礎政権:中国農村制度の諸問題』
『森の来歴:二次林と原生林が織りなす激動の物語』
・近刊予告
『アエタ 灰の中の未来:大噴火と創造的復興の写真民族誌』
清水 展
『アンチ・ドムス 熱帯雨林のマルチスピーシーズ歴史生態学』
安岡 宏和
『変動帯の文化地質学』
鈴木 寿志
『自己否定する主体 一九三〇年代「日本」と「朝鮮」の思想的媒介』
郭 旻錫 (2月末〜3月初旬発売予定)
『哲學研究 第六百十一號』
京都哲學會 編 (2月下旬発売予定)
『作田啓一 生成の社会学』
岡崎 宏樹 (3月上旬発売予定)
『昆虫の休眠』
デビッド・L・デンリンガー/沼田 英治・後藤 慎介 訳 (3月中旬発売予定)
『統治されない技法:太湖に浮かぶ〈梁山泊〉』
太田 出 (3月中旬発売予定)
『「私と汝」の教育人間学:西田哲学への往還』
高谷 掌子 (3月中旬発売予定)
・今月の一冊
『東アジアは「儒教社会」か?』
いまだに私たちの社会の中にある「男中心」の構造や倫理観・価値観は,「東アジアに共通する儒教的伝統」だとしばしば説明されます。しかしそれは本当なのか――そもそも儒教の教義とは何か? それが各時代の文脈でどのように解釈され実践され,変容して行ったのか? 本書は,丁寧な歴史学的資料考察と文化人類学/社会学的フィールドワークで,私たちが「儒教的伝統」と考えてきた事柄,特に家族のあり方に,鋭く再考を迫ります。驚きのカバーデザインは著者たちの挑戦の強い志を示しています。
言うまでもなく「儒教」は中国に始まりますが,その教義は乱世を力で収めた荒々しい人々に,支配者としての倫理を教えるものでした。それが中国では明代(14~17世紀)に,社会的上昇を目指す人々の実践の中で,ある種の歪みをもって社会全般へ普及しました。また朝鮮/韓国,日本,琉球,ベトナムといった周辺社会が「近世」を形作る中では,それぞれの社会の政治経済文化的文脈に応じて,様々なかたちの「儒教化」が起きました。たとえば日本では,もともとの儒教では強く重視されなかった「忠・孝」(特に「忠」)が強調される「武士道儒教」が支配層に普及する一方,庶民レベルでは「家業」の継続という文脈の中で独特のジェンダー構造が定着します。またベトナムのように,「儒教的」観念の中では救わない死者の魂を宥めるための,独特な祖霊崇拝が生まれるという実践もありました。
近代になると,そうした儒教を巡る構築/脱構築は,さらに複雑になっていきます。最近の韓国のように,ジェンダー平等が制度として認められる例がある一方,中国のように,西洋中心主義への対抗,個人主義(自由主義)に対する家族主義の見直しとして,「儒教」が再評価されている現実もあります。「儒教資本主義」などの概念はその現れでしょう。こうした中で,私たちの社会は今後どのようになっていくのか。
東アジアが大きく変動した近世から近代の,制度,法,家族,実践に鋭く焦点を当て,中国,日本,朝鮮/韓国,台湾,琉球そしてベトナムの多様な「家族主義」とジェンダー構造に迫ることで,再構築と脱構築を繰り返してきた「儒教」と私たちの「家族」の未来を展望します。
・SNS/イベント情報
◉YouTube動画更新
下記、それぞれのリンクよりご視聴ください。
[天]第4回①大地のへそ(おこしやす! 西洋古典叢書)
[人]第1回 耳で楽しむラテン詩の世界(おこしやす! 西洋古典叢書)
◉書店フェア 開催中
『西洋古典名言名句集』刊行記念フェアを各地で開催中です。詳細な開催情報はこちら。
最後までお読みいただきましてありがとうございます。
ご紹介しました書籍は、小会webサイトのほか、全国の書店・大学生協・ネット書店を通じておもとめいただけます。
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京都大学学術出版会 月間ニュース No.5
2024年2月14日 配信
(毎月 第3水曜日 配信予定)
発行:一般社団法人京都大学学術出版会
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