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食と気候変動の話(後編①) 〜畜産業界の脱炭素化企業"FutureFeed"の紹介〜


はじめに

今回は前回の記事に続き、食に関連する気候変動・脱炭素の話について書かせていただきました。前回は前編として、食に関する領域の気候変動に関する課題を書かせていただきました。今回から後編として、前編の課題の解決に挑戦するスタートアップ企業を紹介させていただきます。

前編で食の領域の課題、後編で課題に挑戦するいくつかのスタートアップ企業の紹介と2つの記事で完結するつもりでした。しかし、1つのスタートアップ企業の紹介だけでそこそこの長さになってしまったため、後編を後編①、後編②のように複数の記事に分けて書かせていただきます。ややこしくしてしまい申し訳ありません。
現時点では後編①、後編②、後編③と3つのスタートアップ企業を紹介させていただく予定ですので、お楽しみお持ちください。

後編①の今回紹介させていただくのはFutureFeedというスタートアップ企業です。

FutureFeedの会社概要

設立:2019年1月
資金調達額:29.3M$
調達ラウンド:シリーズA
創業者:Michael Battaglia
HP:https://www.future-feed.com/

参照元:crunchbase
https://www.crunchbase.com/organization/futurefeed-pty-ltd

FutureFeedとは

Future FeedはAsparagopsis(カギケノリ)という海藻を使用した家畜用飼料原料の商品化を目指すオーストラリアのスタートアップ企業です。このAsparagopsis(カギケノリ)は牛などの反芻動物のゲップに含まれるメタンの排出を大幅に削減する効果があります。Future Feedの発表では、乾燥飼料飼料1kgあたりたった約5gのAsparagopsis(カギケノリ)を混ぜることで80%以上のメタン排出量を削減できるとされています。

また、牛などの反芻動物からのメタンの排出を抑えるということは気候変動への対策という側面だけでなく、食糧問題への貢献という側面もあります。反芻動物からの発生するメタンというのは、その動物が食べた飼料の一部が胃内の微生物によってメタンに変えられ、ゲップとして空気中に出るというもので、具体的には約12%の飼料がメタンに変わっていると言われています。そのため、このメタンへの変化が抑えられることはすなわち、より少ない飼料で反芻動物を育てられるということを意味します。つまり、飼料用農地の一部を人の食糧生産に当てられるようになるかもしれません。

メタン削減飼料の課題

このFuture Feed以外の企業も含め、メタンの排出を削減する飼料にはまだ大きな課題が残っています。それはメタンの排出を削減する飼料はまだコストが高いということです。
昨年から今年にかけて、穀物の価格上昇によって飼料価格が高騰しました。この事態に対し、日本政府から緊急で交付金*を支給するなどの対策が取られました。
この例からわかるように畜産農家さんにとって飼料の価格が上がることは畜産業を続ける上での致命的な問題になります。
そのため、実際にメタン削減飼料を多くの畜産農家さんに導入してもらい、世界の反芻動物からのメタン排出を削減していくためには飼料コストを下げていく必要があると言えます。

交付金*→https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/l_zigyo/shiryo.html

課題の解決策

飼料のコストを抑えるための方法の1つとして今注目されているのがカーボンクレジットです。
カーボンクレジットは温室効果ガスの排出削減活動によって削減された排出量をクレジットとして認証し、自社の排出量を削減したい企業に売買する排出権取引のことです。
この飼料においては、既存の飼料からメタン排出を削減する飼料に変えたことによって削減されたメタンの排出削減量をクレジット化し、企業に売買します。そのクレジットの売上により、既存飼料よりも高くなった分のコストを埋め合わせることによってコストを抑えることができます。
また、飼料のコストが低くなるもしくはクレジットの価格が上がるなどすれば、コストを抑えるだけではなく、畜産農家さんの新たな収益源にもなります。
現状ではまだ、畜産農家さんの新たな収益源になる水準には至っていませんが、今後のブレイクスルーにより新たな収益源となり、メタン削減資料が環境にも畜産農家さんにもプラスになることを期待しています!

最後に

最後まで読んでいただき本当にありがとうございます!
次回も食の領域の気候変動の課題に挑戦するスタートアップ企業をご紹介します!
気になることやご意見等ありましたら、お気軽にTwitterにてご連絡ください!
Twitter→https://twitter.com/mikan238Tirol

今回の記事はFutureFeedのホームページを参考に書かせていただきました。
https://www.future-feed.com/

おまけ

他にも畜産におけるメタンガスの削減に取り組むスタートアップをいくつか載せておきますので、ご興味を持たれましたら、調べてみていただけると嬉しいです!

Rumin8:https://rumin8.com/
Mootral:https://mootral.com/
SeaForest:https://www.seaforest.com.au/
FYTO:https://www.fyto.us/


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