NHK全国学校音楽コンクールと合唱と青春

今年の「NHK全国学校音楽コンクール」がコロナ禍で中止になる。残念この上ない。高校時代は、このコンクールに向けて青春のすべてを(⁉)捧げていたからだ。

私が通っていた高校の合唱部顧問は、某一流芸術大学声楽科卒業、若ハゲで太っちょの(ゴメン、先生!)男の先生だった。合唱となると大変厳しい指導で、毎年のコンクール出場に向けて、私たち部員はヘロヘロ言っていた。

しかし、それでも。私は、日本語の歌詞の奥深さ、メロディーの美しさ、仲間と一緒に作り上げる合唱に魅せられていった。どんな曲であっても、とにかく全身で歌うのが純粋に楽しかった。この楽しさが、私を合唱の世界に誘ったのかもしれない。

高校2年のとき、私は部長になった。混声合唱部としての部員をまとめる重責(⁉)を担ったのだ。ソプラノ、アルト、テノール、ベースの各パートのパートリーダーと相談して、発声練習や、身体をつくる体操メニューを考えた。他にも部内でのパート間の不和や、いざこざトラブルは日常茶飯事。どうすれば、皆の心や気持ちが一つになるのか・・・と悩む日々。

このままでは、部としてまとまらない。部長として、何一つできていないじゃないか。そんな焦る気持ちが、私の心を墨のように黒くした。

そんなある日。顧問に部屋に呼ばれた。自分の無力さや、迷路に入り込んで出口が見つからないもどかさが、ないまぜになった気持ちを顧問の前で訴えた。思わず溢れ出た涙と共に。

「自分らしくやったらいい」顧問の言葉だった。肩の力を抜いて、私らしくやることだみたいなことを言われた私は、少し元気が出た。

それから。私は、皆の悩みや考えを一人一人聞くことにした。仲間は、心の中に澱のようにたまっていたものを吐き出してくれた。そうすると、皆で共通の目標が出てきた。「Nコンの地方大会で優秀賞を目指そう」

当時、最優秀、優秀、優良賞が出場校の中から選ばれることになっていた。私たちの学校はずっと優良賞。数あるライバル校を差し置いて優秀賞を取ることは至難の業だった。

しかし、私は皆の気持ちを一つにするべく頑張った。皆も頑張った。夏休み返上で炎天下の中、蒸し風呂のような音楽室で、顧問が振るタクトにひたすら集中した。その一振りに命を懸けた。

迎えた本番の日。私たちは今まで心の中に積み重ねてきた大切なものを感じながら、一瞬一瞬を楽しんだ。100%出し切った。走馬灯のように流れる思い出と共に。

そして結果は・・・「優秀賞!」結果を聞いて、私は仲間と抱き合った。うれし涙が滂沱のごとく流れ出た。生きている瞬間を感じた。皆の顔が輝いている。顧問の瞳にも光るものを見たのは、私だけではなかったはずだ。

本当にエネルギッシュで、濃密で、ひたむきで幸せだった高校時代。お金では絶対に買えない様々なことを学んだ合唱部のことは、今の私の根幹を作っていると言っても過言ではない。


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