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これからの岩手のワインを最高にする方法を考える vol.6 〜GI(地理的表示制度)〜

さて、Vol.6は「GI(地理的表示制度)」について。
GIとは”Geograpical Indication”の略であり、産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し、保護する制度が「地理的表示保護制度」です。

各国には「ワイン法」という、どの地域で、どの品種を使って、どういう製法をして、などといった基準を守らないとその銘柄を名乗れないという法律があります。
そしてワイン関係の資格の勉強というと、まさにこれらを頭に叩き込みます。

銘柄を名乗ったり有名産地の名を冠せば販売力により強く結びついてくるものの、それを置いてまで生産者として表現したいものがあればより自由にワインを造れる地域で造ったり、そもそも名乗らなければいいだけです。ただ、そうするためには逆にブランド力や販売ルートなどがないとなかなか為せないのですが。


日本でも近年「GI」の動きが活発です。

日本では「日本ワイン」のルールが制定されたのは平成27年10月とごく最近のことで、それまでは「日本で醸造」さえしていれば海外からブドウ液を輸入しようがブレンドしようが自由でした。

ゆえに、無法地帯だったので、日本ワインは日本で栽培されたブドウで造られたワインのみを「日本ワイン」と呼ぶ、とルールが制定されました。

2021年、まさに今年、山形、長野、大阪の3府県産が北海道と山梨に続き日本の地理的表示(GI)保護制度に登録されました。
土地固有の風味を出すため、原料ブドウや醸造法に細かい生産基準を設けるためのGIですが、基準を見てみると、時期尚早な気もします。

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品種は50種、ブドウの特徴から察するに地域特性は何処に、と。
”それが地域特性だ”と言われてしまえばおしまいですが。


やはりこれに負けじと岩手でも「GI岩手」を登録しようとする動きもありました。
岩手はワイナリー数は山梨、長野、北海道、山形に次ぎ全国5位なので、まさに考え得ることですが、県内の各生産者にアンケートを取るなどした結果、見送ることになりました。

というのも、県内にワイナリーが散らばっていて、「GI岩手」でまとめようがないというものだからでした。

岩手はそもそも本州一面積の大きい県で、東京・埼玉・山梨・神奈川の4都県とほぼ同等の面積を誇ります。
さらに、内陸と沿岸では明らかに全く環境が異なり、北部と南部でもこれまた全く環境が異なります。
岩手は岩手ですが、4つのエリアに分けないと、そもそもテロワールを語るのであれば話になりません。
環境も違えば文化も異なるので、「GI岩手」で岩手をくくることは到底無理なのだと、いうことです。

甲府と横浜とではまるで環境が違うのに一つにくくろう、ということと同義です。

そもそも私は県単位のGIに意味は全くないと思っているので、今回見送ったことはむしろ良かったのではないと思っているところです。

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しかし、もう少しGIが一般に定着するまでに、GI登録するとしたら岩手は岩手でもせめて2つのエリアに分けてGI登録をしたほうがいいのではないかと、考えています。

それが、「GI花巻・紫波」と「GI三陸リアス海岸」です。

「GI花巻・紫波」においては、岩手の主要ワイナリーらも存在し、歴史とテロワールを反映したGIと成ります。そして日本でも稀有な石灰土壌、早池峰石灰を存分に活かせます。
メジャーリーグで活躍している大谷選手や菊池選手の影響もあり、花巻=岩手の認識はもう全国に知らしめられているはずなので、わざわざ”岩手”と名乗らなくてもいいでしょう。それに、あまりGIの範囲を広げすぎてそれこそワインやブドウの産地でない地域までGIに含まれても、GIであることの意味が無くなります。

「GI三陸リアス海岸」は登録されれば宮古以南から南三陸町まで、岩手と宮城県の「県をまたぐ日本初のGI」と成ります。
日本最大のリアス式海岸に沿って続くこのGIは、海のテロワールを強く反映したGIと成ります。地域性や文化性も似ているので、GIを取得することの意味づけが明白で、さらに全線開通したばかりの三陸自動車道に沿って大いに観光が見込めることでしょう。
また、三陸ジオパークゆえに、市ごとで土壌が全く異なるので、そこも付加価値を産むはずです。

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さて、そもそも、GIの範囲は上記に述べたように、もっともっと小さくてもいいはずです。
日本で良いブドウが作れる場所は限られているし、そういった場所がGIで登録されれば新規参入者の指針にもなるはず。

なんのための”GI”なのか、「GI岩手」ではなく、やるのであれば「GI花巻・紫波」と「GI三陸リアス海岸」の制度を進めることによって、ワインの精度も高まってくるはずです。

ついでに、誰かこれを一緒に実現してくれる仲間が集まらないかな、ということでちょっと載せてみました。


以上、Vol.6でした。Vol.7に続く。

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