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急展開の都知事選を考える

5月27日午前、衝撃的な報が入ってきました。
立憲民主党の蓮舫参院議員が7月の東京都知事選に出馬を表明。1週間ほど前に安芸高田市長の石丸伸二氏が出馬を表明し話題を呼んでいたとはいえ、無風と言われてきた都知事選が一気に混戦模様となりました。蓮舫氏の知名度は現役政治家の中でもトップクラスであり、現職の小池氏と同様に女性であることからもバチバチの選挙戦が予想されます。
この記事では蓮舫氏出馬のニュースから感じたことをひとまず雑にまとめておくこととします。

まず、蓮舫氏の出馬がどれほど大きいものかについて、過去2回の都知事選から見ていきます。
まずは2016年。小池氏が自民党を抜け出し独自体制で選挙を突破した回です。

◎小池百合子 2,912,628
○増田寛也        1,793,453
○鳥越俊太郎     1,346,103

この選挙戦では、保守系無所属の小池氏、自公推薦の増田氏、野党統一候補の鳥越氏の三つ巴という構図でした。当初は鳥越氏優位との声も多かったものの、蓋を開けてみれば小池氏の圧勝。これは根本的に小池氏が圧倒的な知名度を誇っていたこと、また地方選挙で滅法強い女性という属性であったこと、さらには鳥越氏にスキャンダルの報道があったことなどが要因として挙げられるでしょう。

続いて2020年。コロナ渦での選挙戦となり、現職小池氏は街頭での活動を一切しないというやや特殊な選挙だった記憶です。

◎小池百合子  3,661,371
○宇都宮健司     844,151
○山本太郎              652,277
○小野泰輔              612,530

主要5候補による混戦が予想されましたが、結局は前回を超える勢いで小池氏の圧勝。と言いつつも予測できた結果でもありました。やはり小池氏の知名度やコロナ渦で継続都政の必要性が叫ばれたこと、さらに野党推薦候補が分裂したことによって票が分散され、ただでさえ強い小池氏に勝つ道は絶たれていました。

さて、この2つの選挙で注目したいのは主要候補者の肩書です。以下にその一部を示します

小池百合子(2016)→元環境大臣,防衛大臣,自民党総務会長
増田寛也(2016)→元岩手県知事,総務大臣
鳥越俊太郎(2016)→報道ドキュメンタリー番組『ザ・スクープ』司会
宇都宮健司(2020)→オウム真理教犯罪被害者支援機構理事長
山本太郎(2020)→れいわ新選組代表,元俳優
小野泰輔(2020)→元熊本県副知事

もちろんこれらが全てではありませんが、特徴的な肩書を挙げてみました。こう見ると、増田氏と小野氏は地方出身で東京での知名度は期待できず、鳥越氏,宇都宮氏,山本氏は非政界からの参入です。有権者は候補者の政治家としての実績をある程度加味して投票することを考えると(非政界出身の元都知事である青島幸男や石原慎太郎も都知事選出馬時には既にある程度の国会議員キャリアがありました)、経験と知名度を両立している小池氏に票が集まるのは自然なことでしょう。

そして、蓮舫氏の肩書を見てみます。

蓮舫(2024)→元内閣府特命担当大臣行政刷新担当,民進党代表

先述した候補たちと比べてみても、内閣ポスト及び政党代表経験を両方持つのは蓮舫氏のみ。蓮舫氏もかつてはタレントを本業としていましたが、今や政治家としての印象の方が圧倒的に強いでしょう。そして行政刷新担当ではいわゆる「事業仕分け」で大きな注目を浴び、民主党下野後も与党に対して強い口調で切り崩していく蓮舫氏はメディアにもよく取り上げられていました。
近年の都知事選で、知名度と政治家としての実績をここまで高いレベルで両立している候補はいませんでした

以上のように、蓮舫氏の出馬によって都知事選は一気に面白いものになりました。これは選挙ウォッチのしがいがありますね。

ここからはそんな状況となった都知事選について、気になったことを書き連ねていきます。

各政党の動向

国政政党のみなさん、どうするんですか…という話。

まず自民公明は小池氏を推すのか、独自候補を擁立するのか。ここは大きい論点ですが、私的には今の自民党に独自候補を擁立するだけの体力はないと踏んでいます。今年は国政地方ともに大事な選挙で負けに負けを重ねており、都知事選でも推薦候補を通すことができなければいよいよ岸田首相の責任問題に発展することは避けられません。ここは前回同様に小池氏を推薦して蓮舫氏との一騎打ちに持ち込み、心中覚悟で突っ込む可能性が高いかと思います

一方で、もはや「岸田おろし」をする体力すらなくなっている可能性も否定できません。派閥騒動で岸田首相への党内対抗勢力は全く成長しておらず、都知事選で負けようがノーダメージだ、と言われたら納得してしまいそうです。むしろここで人気が落ち目の小池氏を見限り、強い対抗馬を出せれば一気に流れを変えられるともいえます。候補としては丸川珠代参院議員あたりでしょうか。出なそうだけどね…

続いて、日本維新の会
蓮舫氏を推すことは絶対にないでしょう。かといって小池氏にフリーライドすることも考えにくく、独自候補擁立か石丸氏推薦かの2択を迫られています
石丸氏の姿勢は維新の党是である「身を切る改革」に通ずるところがあり、政策的には推薦しても全くおかしくありません。しかしながら、石丸氏はどう考えてもスタンドプレーを好む性格なので場合によっては維新のイメージに傷をつけることも考えられるのです。石丸氏推薦は諸刃の剣といえます
一方で独自候補擁立となれば、それなりに知名度がある候補を用意する必要があります。となると第一に挙がってくるのは音喜多駿政調会長でしょう。すでに衆院東京1区への出馬を表明し、選挙区内での運動もガンガンしていますが、まあ都知事選に出たところで彼のイメージは傷つかないかと思います。あとは、猪瀬直樹元都知事を持ってくるウルトラCは……さすがにないか。

国民民主党にいきます。国民は最近立憲との距離をやや縮めつつあり、蓮舫氏を推す可能性は十分にあるでしょう。もともと国民民主党と立憲民主党は同じ民主党であったことから、党以前に人として蓮舫氏に恩を感じている議員も多いのです。ファーストとの協力関係もあることを考えれば、自主投票が最も可能性が高そうです

共産党。野党共闘として蓮舫氏を推すのか、独自体制で進むかの2択です。とはいえ、共産党も足元が揺らいできており、この都知事選でまともに勝負できる独自候補を擁立することはまず不可能でしょうから、蓮舫氏を推薦することは確実でしょうか

れいわ新選組はきっと独自候補を持ってくるでしょう。山本太郎代表がやってきたらとんでもないことになります。選挙区で得た参院議員の席を簡単に明け渡すとは思えないものの、この選挙戦で勝負できるのは彼しかいないのも事実です。どちらにせよ当選は厳しいでしょうが、党を存続させるためにもここで知名度をもう一度広めることは大切になってきそうです。

参政党はどうでしょうか。最近は内紛が相次ぎ足元がぐらっぐらですが、まず候補を立てることができるのか。出せたとしても日本第一党の桜井誠氏に持ってかれるとは思いますけどね…

最後に、日本保守党についても触れておきます
先日の東京15区補選では飯山陽氏を擁立しましたが、都知事選でも再び彼女を担ぐ可能性は否定できません。知名度を上げる絶好のチャンスですので、飯山氏クラスのビックネームを誰かしら出してくるとは思いますが、それが誰になるのか…。百田氏自ら、という線も全然ある気がしますね。

石丸氏の評価軸どうする

ここまで石丸氏についてあまり触れてこなかったので、このあたりで触れておきましょう。彼は安芸高田市で市長を務めており、特に有名なのが議会の切り抜き動画。石丸氏が市議を「論破」する様子が話題になり、一定の人気を誇っています。
一方で彼の半独裁的な手法には批判も多く、若さゆえの強引さを危惧する人もいます。
41歳の若さが一番の武器であり、投票率、特に若い世代の関心が集まれば当選の可能性も上がってくるでしょう。

ちなみに石丸氏についてはまた別で単体の記事を書く予定です。

シミュレート

本格的な票読みはまだしませんが、参考までに過去の選挙の得票から今回の都知事選を見ていきます。

まず直近の国政選挙である東京15区補選から。

◎酒井菜摘 49,476 (立憲公認,女性,30代,元区議)
◯須藤元気 29,669 (元立憲,40代,元格闘家,スピリチュアル系)
◯金澤結衣 28,461 (維新公認,教育推薦,女性,30代)
◯飯山陽    24,264 (保守公認,女性,40代,SNS知名度○)
◯乙武洋匡 19,665 (国民,都ファ推薦,40代,身体障碍,一般知名度○)

括弧内には党派と、投票行動に影響しそうな属性を挙げました。こう見るとだいぶ若い候補が並んでいましたね。
自公が擁立を回避したこともあり、シンプルに党派だけで票を見ることが難しい選挙でしたが、注目すべきは乙武氏の得票。連日小池都知事が応援に入っていたことを考えるとあまりにも寂しい票数です。報道の通り、小池氏の求心力は大きく落ちていることがわかります

この傾向はつい昨日投開票があった東京都議補選にもあてはまっています。目黒区選挙区での選挙結果は以下の通り。

◎西崎翔  19,526 立憲民主党 
◎青木英太 13,538 無所属
○井沢京子 11,039 自由民主党

小池都知事は自民公認の井沢氏を支援していましたが、僅差で落選。立憲民主党公認候補がトップ当選を果たしました。また、この他にも共産党公認候補も7000票以上を集めており、共産党は蓮舫氏支援が確実なことを考えると小池氏にとってはかなりの逆風といってもいいかもしれません。

最後に、蓮舫氏も出馬していた2022年参議院選挙東京選挙区を見ていきましょう。

◎朝日健太郎 922,793 自民,40代,元スポーツ選手
◎竹谷とし子 742,968 公明,女性
◎山添拓   68,5224 共産,30代
◎蓮舫    67,0339 立憲,女性
◎生稲晃子  619,792 自民,女性,元アイドル
◎山本太郎  565,925 れいわ,40代,元タレント
○海老澤由紀 530,361 維新,女性,40代
○松尾明弘  372,064 立憲,40代
○乙武洋匡  322,904 無所属,40代
○荒木千陽  284,629 ファースト,40代

記憶に新しい激戦です。この選挙では、蓮舫氏が4番手に沈んだことが最も大きいトピックでしょう。2016年選挙の際はトップ当選だったこともあり、蓮舫氏の人気に陰りが見えてきた、という論も見られました。一方、ファーストの会荒木氏は惨敗を喫しており、小池氏の人気も低下していたことも考慮すべきです。この選挙は直前に安部元首相の銃撃事件があったことからある意味参考にはしにくいのですが、単純計算だと
自民+公明+ファ+乙武=2,893,081
立憲+共産=1,727,627

となります。この後に自民党の裏金問題が発覚したこと、そもそも候補者の数や質が全く違うこと等考慮したとき、この数字はどう映るでしょうか…
その答えをこれから考えていこうと思います。

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