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【食エッセイ】そりゃ記念日に行きたくなる。太宰治が愛した味@若松屋

こじゃれた飲食店や会員制レストラン、行ったら箔が付くようなお店に行くのが好きな私だが、「〇〇御用達」みたいなところはあまり興味がない。

しかし、ここだけは別だ。
東京都国分寺市にある老舗の鰻屋「若松屋」。
太宰治ゆかりの店だ。

個人的には、太宰治はそこまで好きではない。作品云々ではなく、女好きでだらしないからだ。いくら作品が素晴らしくても人間性の部分で個人的にはマイナス評価になる。

とはいえ、やはり文豪が愛した味は気になる。自分も食べたら彼の才能にあやかれるのではと一縷の望みを抱いてしまう。

しかし、私はそこまで鰻を食べるほうではない。

おいしいと思うけど、心からおいしくてしょうがないと思ったことがなかった。母は鰻が好きで、よく駅ビルの食品街で鰻を買ってきて鰻丼やうなたま(鰻にゴボウなどを入れて卵とじにしたもの)を振る舞ってくれた。うなたまは好きだったけど、鰻丼は自分から食べようと思わなかった。多分、子どもにとっては味が濃すぎたのだと思う。

行ってみたいものの行く機会がない。どうしようかと悩んでいる中、食べに行く絶好の機会が訪れる。

彼の誕生日だ。

彼はよく飲み、よく食べる人。家にあるものをバキュームカーのようにあっという間に食べてしまう。好き嫌いがなく何でもよく食べるが、これという好物は少ない。

しかし、鰻だけは違う。
鰻という文字が目に入るだけですぐさまテンションが上がる。物欲がなく、オシャレな飲食店が苦手な彼でも若松屋なら絶対に喜ぶはず。

私も行ってみたかったので予約した。

国分寺は、国分寺崖線という独特な地形によってエリアによって高低差が激しい。国分寺駅南口をしばらく歩くと坂があり、若松屋は坂を下って歩いた先にある。

太宰治とのツーショット

昭和23年に三鷹で創業。太宰は仕事の後や編集者との打ち合わせでよく立ち入っていたという。

若松屋の1代目と太宰は親友だったとのこと。太宰が行方不明になってからは捜索活動に参加し、川から太宰を引き上げたのは1代目というから驚きだ。舌だけでなく、太宰を日頃から支えていたことがわかる。

太宰の一周忌の料理・裏方を仕切ったのも同店。れっきとした太宰治ゆかりの店だ。

前置きが長くなったが、早速本題の鰻重へ。

鰻は国産、炭火焼き。タレは初代から受け継ぐ昭和の味だ。

感動したのは、鰻がふわっと柔らかいこと。鰻に詳しくないので焼き方や捌き方がいかに妙かわからないけど、絶対に妙! 匠の技! 心から鰻重をおいしいと思ったのはこれが初めてだった。

あっという間に完食して、もっと食べたくなった。鰻をがっつきたくなったのもこれが初めてだ。

彼も目の前でうまいうまいと喜びながら頬張っていた。

こちらは確か中串重(3/4匹)で、税込3,660円。お吸い物の香の物がつく。

丸1匹の大串重は税込4,020円、1匹半の2段重は税込5,250円。老舗だし、毎朝仕入れている国産鰻だからもっと高いと思っていたので良心的なお値段だと思う。
(※価格は食べログに掲載されていたメニューの写真より)

味だけでなく、店内に漂う空気も良い。昭和の落ち着き感というか、風格というか。その感じもたまらなくて、特別な日に行きたくなる雰囲気だ。一昨年の彼の誕生日に行って以来、彼のお義母さんの誕生日、昨年の彼の誕生日と続けて行っている。歴史が詰まった奥深い味は特別な日に味わいたくなる。

また、こちらはツマミもおすすめ。鰻がメインなので種類は多くないが、飲兵衛にはたまらないラインアップだ。

くらげ酢。ここのくらげ酢がめっちゃうまい!
充実感あるあん肝!
海鮮サラダや卵焼き、牡蠣のアヒージョなどまだまだあるぞ!

ちなみに店内には芸能人のサインがズラリと飾られている。太宰治好きで有名なピース・又吉も来店したとのこと。

鰻好きや太宰治好きにはぜひとも行っていただきたい。また、私のように鰻が好物でなくても行ってほしいお店である。

国分寺にはおいしいお店がたくさんあるが、こちらは名店中の名店。一生に一度はぜひ行っていただきたい。私自身、これからも記念日や誕生日には訪れようと思う。


若松屋
042-325-5647
東京都国分寺市東元町2-13-19

https://tabelog.com/tokyo/A1325/A132502/13116875/



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