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【食エッセイ】貧相だけど至福で贅沢なラーメン

 この世にはいろんなごちそうがある。そして人の数だけごちそうは違う。食べると幸せでほっとして、生きてて良かったと思える味。辛い時に支えてくれた味。家族やパートナーが作ってくれる手料理。ごちそうの定義もたくさんあるだろう。とにかく、人を前向きにしたり、生きる活力になるのがごちそうだ。

 私にもたくさんのごちそうがある。地元の老舗イタリアン「メランツァーネ」の看板メニュー「メランツァーネ(なすとニンニクとアンチョビのパスタ」、熊本発祥の「桂花ラーメン」、フレンチならジビエやフォアグラなど数えきれない。どれも好物であり、食べると元気になる味だ。

 しかし、私にとって本当のごちそうとは、誰の目も気にせず好きなものをたくさん食べられること。どんな味付けでも周りから茶々を入れられることなく存分に好きな味と量を楽しめる時間は背徳感があり、より一層の美味しさを感じられる。

 この至福の時間をくれるのが、袋麺のサッポロ一番シリーズだ。はじめて知ったのは祖母が作ってくれた塩らーめん。以来すっかりサッポロ一番シリーズの虜になり、いまだによく食べている。


 全て美味しいけど、ここ最近はみそらーめんがたまらなく好きだ。うちの彼も休日にはよく作ってくれる。野菜炒めやゆで卵をトッピングに、それらに合わせてラー油とかも入れちゃって巧みな味変をしてくれる。愛マシマシの一杯は、彼に「将来サッポロ一番で店だしたら?」と言うほどクオリティーが高い。

とある日。この日は違うみそラーメンだった。チャーハン付き!

 彼が作るラーメンはピカイチだけど、自分ひとりでひっそり食べるサッポロ一番みそらーめんもごちそうだ。

 では、具材をご紹介。

 卵1個。
 以上!

 それだけと驚くかもしれないが、卵だけである。私は昔から素材そのものの味を堪能するのが好きで、ラーメンも麺とスープをしっかり味わいたい派。なので具材は好物の卵だけで良し。卵はラーメンとの相性抜群なので絶対に欠かさない。

 麺の上に溶き卵をかけて蓋をして煮込む。やや麺が伸びるけど、卵が固まって(私は卵料理の全てにおいて完熟派)麺にスープの味がしっかり染みこむ。余計なものを入れずに麺とスープの美味しさをじっくり味わえる喜び。周りからすれば物足りなくても、私はこのスタイルが好きなのだ。

本日のサッポロ一番みそラーメン。
やや伸びてたけど、その感じがまた良し!

 たまたま今日は青梗菜があったから入れたけど、いつもは入れない。青梗菜を入れても入れなくても、なんとまぁ映えない見た目。ひとりで食べるときは見た目なんて関係ない。好きなものを好きなように好きなだけ食べる! これが私のごちそうである。

 今日の背徳ポイントは卵だ。いきがって2個使ったのだが、タンパク質だからいっかと開き直った。もちろんスープも最後の一滴まで飲み干した。なんの制約もなく好きなものにがっつけるほど贅沢なことはないだろう。

 誰からもとやかく言われることなく自分の本当に好きな味を満喫する。質素でも、見た目が貧相でも、自分が幸せならそれでいい。

 これはごちそうだけに限らない。自分が本当に満足できればどんな状況だって構わない。人の目や意見よりも自分の喜びを優先させる。この姿勢が人生も豊かにするものと私は確信している。

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