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願いは叶う…。

流行り病がおさまり
思春期のイベントを余儀無くされた多くの人々が
ようやくわだかまりなく笑顔で空を見上げた連休。
対照的にワシと生年月日が同じの20年来の悪友が
肩を落としうつむき加減で覇気のない声を
カウンターの中で佇んでポソリ…と

一昨日かみさんからさ…
「大阪の裁判所から封筒が届いてるけど…
 パパ…大丈夫なの?」
大阪簡易裁判所と書かれた分厚い封筒を手渡された
出頭命令だ。。。
「ん…。ああ大丈夫だよ…。。。」
そうに答えるしかなく
平然を装ってはいたが封筒を受け取る手に感覚はなかった。

にゃ?
ワシは変な声を出してしまった。
だいたい北関東の田舎町で齢50も過ぎた男に…
ましてや伴侶はしっかりとした正看護師に従事し
年頃の子ども二人を養い善きパパであるはずなのに
なんの裁判だ…?

カウンターから離れた彼が持ってきたものは…
本当に分厚い封筒だった。
特別送達
庶民には聞き馴染みのないその封筒には多額の切手が貼られていた。

しかも…未開封だ。。。

「どうにか受け取ってないことにできんかな…?」
現実逃避だ。
どうやら本人は思い当たる節があるみたいだ。

しかもこんな恐ろしいモノを放置しようなんて…
恐怖でしかない…。。。
本人は誰よりも怖れおののいているに違いない。

中身は民事訴訟の訴状だった。

半年くらい前から大阪局番から電話が切り失く掛かってきてたが、完全無視を決めてたら訴状が届いたと言うことだ。
単純な話、
カードの支払いが滞ってますよ?
どうされましたか?
の相手からの確認電話に出なかったので…

これだけのご利用履歴があって、お支払がこれだけされてますが、ご利用履歴に対してこれだけのお支払がまだお済みではないのですがどうされましたか?こちらの言い分に対して何かしらの嘆願若しくは言い訳は何か御座いますか?
の書面をとりあえず郵送手渡しファックス等で下さいよ。
その上で
◯月△日✕✕時◯◯分に第△法廷に出頭してね。

よくよく読むと買い物のカード決済の…
支払方法はリボルビング。。。
支払い請求額は諸々含めてだいたい
 金1,200,000円ちょっと。。。

「そんな金ねーし。。。」

わかるわかる…。
田舎町の小さな飲食店。
料理は彼が全部つくりカクテルもつくり…。
たまにお手伝いに来てくれる女の子に
1日数千円のお給金を払ったら利益でてるの?
みたいな飲食店。。。

流行り病で常連客も来店回数が減り…
ワシも前から年に2~3回程しか来店しないが
それでも高校をドロップアウトしてからは
飲食の道一筋で一軒家を持ち家族を養う彼には
やはり憧れはあった。カッコいい…と。

そんなリアルが発覚する前の話になるが…
ワシが顔を出すのは日曜日の深い時間だった。
同じ生年月日の彼と昔話や近況報告等、取り留めない話をしたいからだ。
毎回と言ってもいいくらい店を後にするのは朝方だった。
最近の話は怪談話だ…。

ワシはYouTubeで知った怖い話をする人たちをよく紹介していた。
しかしながらワシは大の怖がりなので夜に独りでは怪談のYouTubeは観れない聞けないのである。
しかし彼は違う…。。。

怪談話を真っ暗な部屋の中で独りで視聴していて、
子どもたちに…
「パパなにしてるの?」
「なんでお部屋が真っ暗なの?」と聞かれたときに
どんな怪談師のお話も恐怖を感じたことのなかった彼はつい子どもに…
「パパはね、怖くなりたいんだよ。」
と答えてしまったらしい。

気づいているのかどうかは分からないが
彼は願いを叶えてしまっている。
この事実に誰よりも恐怖し興奮が止まらないワシである。。。




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