京子先生の教室11 「おれ、子どもほし~い」
給食時間に子ども達の中から「おれ、子どもほし~い」と言う声が聞こえてきました。「えっ?何?」先生はびっくりして耳をすませました。
いったい、どういうことなのでしょうか。
5年生の教室です。
「いた~だきます!」
給食時間が始まりました。今日の給食は、パン、牛乳、スパゲティーナポリタン、野菜とりんごのサラダです。給食時間は、一日の中で、子ども達が一番楽しみにしている、大好きな時間です。それと同時に、気持ちもゆったりとし、自由な楽しいトークで盛り上がる時間でもあり、あちこちから笑い声が聞こえてきます。
先生が自分の机で給食を食べている時でした。
「おれ、こどもほし~い。」
と言う声が聞こえてきたのです。
「えっ?何?」
先生はびっくりして、声のする方に目をやりました。
すると、男の子たちが3人でスパゲティーをほおばりながら話をしていました。
「おれね、こどもほしいとたい。こどもが生まれたら、赤ちゃんの頃からビシバシきたえて、世の中のきびしさをおしえてやる。そして、出世ができるように育ててやる。」
と光一君が言ったのです。
『なに、それ~。(笑)』
先生は思いました。
「おれは、子どもができて反抗期になったら、絶対許さん。おれの言うことは絶対きかせる。」
明君は牛乳を飲み終え、パックをドンと机の上に置いて言いました。
「おれは結婚して赤ちゃんができたら・・・離婚して赤ちゃんはもらう。」
翔太くんはちょっと小声で言いました。
『えっ、ど、どういうこと?・・・なんでそんなこと言うの?』
「やっぱ、子どもはほしいよね。」
「うん、子どもはおったほうがいいね。」
「でも、うるさかろうね。」
「相手してやらやらなんしね。」
「大変かも。」
「大変、大変。」
ハハハ、ハハハ。
『・・・・・。あなた達も十分うるさいけどね(笑)・・・ 』
さてさて、なぜこんな会話になったのでしょう。自分がお父さんくらいの年齢になった時のことをイメージして、未来に想いをはせているのでしょうか。今、子どもとして感じること考えることから、精一杯想像して、こんなことを話しているのでしょうね。
「子どもは何人欲しい?」
「俺は、2人かな。」
「俺は、3,4人くらいいてもいいかな。多い方が楽しくない?」
「そうだけど、育てるのたいへんだよ。」
「だね~。」
先生はスパゲティーを食べながら思います。
『ふふ、おもしろい。・・でも・・・、まずは・・・自分の子どもの話の前に・・・自分のことをしっかりやってほしいなあ。忘れ物しないとか、授業中に遊ばないとか、先生から注意されてもブスッとしないとか・・・。まだまだ、自分たちが子どもだからねえ・・・苦笑・・・。』
給食時間には、いろんな話が聞こえてきます。子ども達の本音が見えたり、生活背景が出てきたり、そんな事考えてるんだと驚かされたり。
とにかく、子ども達は大人が思いもよらないようないろんなことをたくさん話しています。その会話は楽しくて、ほほえましいです。
そして、夢がいっぱいです。
おしまい
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