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京子先生の教室6「みんなの世話が行き届いてない。」

 4年生の教室では、ノースポールの苗作りをしています。
ごま粒ほどの大きさの種を、2㎝四方に区切られた200個以上の小さなのマス一つ一つに植えて芽をださせ、そこから、苗作りをするのです。教室の後ろの日当たりのいい窓際に置き、毎日みんなで水やりをしながら育てています。 

 ある日、2㎝ほど育った芽の中に枯れ始めた芽があるのを先生が見つけました。
「きのう、ノースポールに水をあげた人?」
「は~い。あげました。」
「おととい、水を上げた人」
「はい、ぼくたちがしました。」
「・・・・・、最近、ノースポールに水をやった人」
「はい。」「はい。」「・・・はい。」

「そうなのね・・・、みんな、ちゃんと水やりをしてるのね。毎日水をやっているのに、この隅っこの芽が水不足で枯れ始めてるんだけど、どうしてだろう。」
明らかに周りに比べて土が乾燥していました。

「え~!」「どれ?どれ?」

バタバタ、バタバタ。
みんなは一斉に苗の周りに集まりました。
「ほんとだ~。」「何で~」
みんなはビックリしました。すると、島田君が

「先生、もしかすると世話が行き届いてないんじゃないですか?」

 と言いました。
「えっ、『行き届いてない』??」
「何それ?」
「どんな意味?」
みんなは島田君が言った言葉の意味がピンと来ない様子でした。

 先生が、
「島田君、いいこと言ったね。よし、言葉の意味を調べてみようか。みんな、辞書出して。『行き届く』を調べてごらん。


「先生、ありました!」
「じゃ、橋口さん読んでみて。」
「行き届くの意味は・・・、『すみずみまで心を配ること』と書いてあります。」

「へ~~~、なるほど。」
「だから・・・、すみずみにも、きちんと水をかけるということか。」
「そっか!つまり・・・端っこの芽まで気を配ってなくて、水をやったつもりでもそこにはみんなやってなかったんだ。」
「なるほど~~。」
「確かに!!ここ乾いてる!あっ、ここも」
「かわいそ~~~。」

 この出来事の後、みんなの水かけは劇的に変わりました。
子ども達は水をやりながら、
「すみずみにまで、行き届かせる・・・っと。はい、オッケー。」
一つ一つの芽に対する心配りが変わったのです。

 10日ほど経ちました。
「先生、葉っぱが出てきました!」
隅っこでしわしわになっていた芽は、その間から小さな緑の葉を出して来たのです。みんなの世話が「行き届き出した」証拠です。たくましく命を吹き返しました。


 「植物を育てる」活動は、「世話をしながら成長を見守る」というゆっくりとした時間の流れの中で、子ども達にたくさんの事を教えてくれます。

                             おしまい

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