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「のろい」と「おまじない」

好きなおにぎりの具はツナマヨです。

Spotifyで、漫画『呪術廻戦』についてお坊さんとトークする番組を聞いた。呪いの根源ともいえる負の感情との向き合い方をはじめ、とても興味深い内容であった。
結果、触発されて電子で漫画を一気読み。
今更ながらハマったくちである。

さて、「呪い」には読み方が2つある。

「のろい」と、「まじない」。

2つ言葉の違いは、明確ではないものの、目的で分けると以下のようになる。

「のろい」=他者の不幸を望んでかける
「まじない」=自分の幸福、他者の幸福(もしくは不幸)を願ってかける

「まじない」の中には限りなく「のろい」に近いものもあり、専門家の中でも捉え方が異なるケースも多いらしい。

「のろい」と言うと、藁人形に五寸釘を打ち付ける「丑の刻参り」が思い浮かぶ。
エネルギーのイメージとしては、「負」「マイナス」。
「まじない」はあまり使わない言葉かもしれないが、「おまじない」というとちょっと身近になる。
転んで怪我をした子どもに「痛いの痛いの飛んでけ~」って言う、あれを思い浮かべる。(案外、小さい子どもには効いたりするのよね)痛みが飛んで元気になると考えれば、エネルギーとしては「正」「プラス」といったところか。
あまり良い例が浮かばなかったが、「呪い」は読み方によって「正」「負」の両面のエネルギーを発する面白い漢字だ。

呪術廻戦には、狗巻棘(いぬまきとげ)というキャラクターが登場する。
発した言葉が相手にそのままふりかかる術、言葉の呪術を使う一族の呪言師である。
相手に「弾けろ」と言えば爆発するし、「潰れろ」と言えば潰れる。
この術には、放つ言葉の強さ(呪力)の分だけ自分の喉にも負担がかかるという特徴がある。
作中において、意味の強い言葉や、強敵に対して「ぶっとべ」と言った狗巻は血を吐いて倒れた。
漫画の世界とは言え、これを考えると「死ね」という言葉がどれだけ恐ろしい言葉かよくわかる。
その術の力ゆえ、狗巻は普段「しゃけ」「おかか」「明太子」などおにぎりの具でしか話さない。
言葉の持つ力にゆえに、自身で言葉を制限しているようだ(これも一族の「のろい」か)。
狗巻は呪術の力を持つ者であるが、世の中に「言霊」という言葉があるように、決して遠い存在では無いのかもしれない。

話を戻して、実生活において誰かを励ます時にかける言葉、「頑張れ」。
この「頑張れ」もまた、「のろい」にも「おまじない」にもなり得る言葉だ。

相手を追詰め、こころを縛り付ければ「のろい」。
相手を鼓舞し、やる気を引き出せば「おまじない」。

言葉の使い手の意図、受け手の捉え方、双方の関係性にもよるが、そんなイメージ。
状況によりエネルギーが「正」にも「負」にもなる言葉は他にもあるだろう。(大丈夫、とかね)
思い返せば、知らず知らずのうちに「頑張れ」という「のろい」をかけてはいないか。
誰かに対して、あるいは、自分に対して。
言葉そのものの良し悪しということではなく、その言葉とどう付き合うか、どう向き合うか。
必要なのは、頑張る以前に、まず「頑張っているね」と現状を認めてあげること。
いまの状態・存在を認めて、そっとかける言葉は、きっと「のろい」を解く「おまじない」になるのではないだろうか。

そんなことを考えながら食べたツナマヨおにぎりは、いつもよりしょっぱかった。
でも美味しかったから良しとする。

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