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言葉と語感とラーメンズ#2 第5回公演『home』


1.無用途人間

誰か私たちに、しなきゃいけないことをください!

「しなきゃいけないこと」を考えた時、2つの言葉が浮かびます。
一つは「義務」。もう一つは「使命」。
「義務」は受動的な事のように感じるのに対し、「使命」は能動的でプラスイメージの響きがある。
同じ「しなきゃいけないこと」でも、どちらで捉えるかによって行動意識が変わってきます。
また、作中で「生きる希望」という言葉が出てきました。
さらりと流されている言葉ではありますが、生きがいを感じる上で「役割がある」というのはありがたいことなのだと思います。


2.読書対決

目は、おでこの口から顎を取り、眉間の喉に眉毛した…

有名な文学作品をこのような形で料理するとは。
芥川龍之介『鼻』がいつのまにか『ミミオとハナエット』に。
顔中のパーツだけで文章を作ると、語感だけでも面白いですが、リアルに想像するとなかなかにグロテスクですね。
他にも、ヴィクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』の「ジャンバルジャン、頑張るじゃん~」のくだり、韻の踏みがいい。
言葉遊びで、難しい文学もユニークでちょっと身近になります。


3.映画好きのふたり

さぁ、ブツは渡したんだ!早くモノ質を返してくれ!

人を捕えれば人質、モノを捕えればモノ質。
わたしも小学生の頃、よくゲーム機をモノ質にとられました。
映画好き(あるいは演劇好き)の人が集まると、その人たちのやり取りそのものが映画になるような感じがしますね。
日常の言葉も、会話ではなく「セリフ」にすることで、ストーリーが出来る。
この二人と友達になれたら、毎日面白そう。


4.縄跳び部

村のはずれの竹やぶで 大仏暴れるその前に♪

子どもの頃に遊んだ「縄跳び歌」をベースにした作品。
童謡のちょっと不安定なメロディーにのると、
「大仏暴れる」の語感の強さが増すような感じがします。
昔の童歌とかって、実は怖い内容だったりしますよね。
現代の曲の歌詞よりも、言葉の「含み」が多いのかもしれません。
また、縄跳びの一定のリズムが、作品のリズムを作っているように思います。
個人的には、もしかめの縄跳びリズムの裏打ちもツボです。


5.ファン

電車に強ぇも弱ぇもねえだろ!?
埼玉の埼に東京の京だよ。

漢字違いという勘違いから生まれる、ボケとツッコミ。
電車の最強線、線路からの脱線は当たり前で、山とかコンクリートとかぶっ壊しながら突き進みそうですね。
言葉の間違いは、新しい言葉を「生み出す」上では、間違いではありません。
「ノートルダム手なが海老オーケストラ」の新曲『あんかけプロボウラー』、聴いてみたいです。
冒頭の会話の、仁さんのどこか腑に落ちない返答もじわじわと面白い。


6.百万円

金は天下のマーライオン、ってな!

マーライオンの口から小銭がドバドバ出ているところを想像すると笑えます。
百万円があったら何に使いますか?
怖そうな人でも心優しかったり、優しそうな人でも心は悪魔だったり。
世のため人のためと言いつつ、それが正しいと思い、良かれと思って押し付ける「善魔」という言葉をふと思い出しました。
面白さの中にブラックさもある作品。


7.漫画家と担当

パン⇒牛乳⇒薬、パン⇒牛乳⇒薬、パン⇒牛乳⇒薬。プリン。

冒頭、三角食べの語感のリズム、最後のプリンがかわいい。
薬を服用するタイミングを表す言葉、「食前・食後」。
では「食間」とはいつのこと?
「食事の最中」と思っている人もいるようですが、
正しくは「食事と食事の間」という意味で、食事を終えてから約2時間後が目安のようです。
”During a meal"ではなく、”Between meals”。
日本語って、似通っていて難しいですね。
「食事の最中」と書いて「最中(もなか)」とも読めますし。


8.無類人間

オス類(るい)。オスの類(たぐい)。

「オス」は基本的に動物に使う性別分類。
「人間のオス」と言うと妙に動物感がでます。
そして「るい」を「たぐい」と読むと、俗な感じがするのはわたしだけでしょうか。
人間のオスの類(たぐい)。
なんだか理性がきかなそうな危ないにおいがします。
同じ漢字でも読み方で印象が変わるのが面白いところです。


●全体を通して

「人間味」を感じる作品が多い公演。
コントの世界なんだけど、実際にいるような人の描写もあり、
それぞれのキャラに味があります。
人間味とはなんでしょう?
喜び、悲しみ、怒り、驚き、憎しみ、恐怖、尊敬、興味、、、
人間には27種類の感情があるそうです。
その「感情の起伏」の中に、人間味が現れるように思います。
人間味のある人は、面白い。


さて、1公演分書いて思いましたが、作品によってはさらに深堀したいものも出てきますね。

一つの記事も長くなってしまいますし、一先ず一通りの公演を書き終わってからピックアップして、記事を書きたいと思います。


次回は第6回公演『FLAT』です。

ではまた。



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