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【90点】この世界の片隅に

クラファンとかでかなり話題になってましたよね。
一度見ておこうと思いつつも見れないでいたので見ました。

映画「この世界の片隅に

前情報とイラストのタッチから、幸薄系主人公の原爆体験記的な映画かなと高をくくっていたが、これね、いいですよ。面白かった。

この映画、日常系なんですね。日記みたいな感じで、主人公の女性の成長と、感じた事がその時代を生きる日常と共に紡がれているというね。
そこに、悪意とか善意とかあまりなくて、日々を生きているという感じなんですよ。
ただね、その生きている「日々」というのが、激動の時代だった。
昭和20年の真夏に、広島市には原子爆弾が投下され、その後の惨劇は日本の小中学校では義務教育内に組み込まれている事もあり認知度が高いです。
はだしのゲンとか、どの学校にも寄贈されていて、小学校に唯一あるブラックジャックとはだしのゲンは、勉強嫌いのやんちゃ坊主のベストセラーですよ。
だけどね、あの時代の原爆前の日常、何を食べ、どんな人たちが、どんな生活をしていたのか。その情報がないまま、原爆についての教育をしても、解像度が上がらなくて、SF物語を聞いているような状態なんですね。

映画「この世界の片隅に

この映画、解像度上がりますよ、当時を生きるという事の。
故に、ドラマチックな出来事は、クライマックスまで皆無です。
絵が好きなぼんやりした女の子が、頑張って生きている、という日常系なんですよ。クライマックスまでは。

だけど、その何もない日々が、見る人がその時代を解像度高く見るための礎なんですね。ぼんやり見過ごすなよ。ちゃんと見て、ちゃんと後半にたどりついたら、得るものがある映画ですよこれは。

とはいえ、こんな良い映画にも、コンテンツとしての面白さを作るために数々の伏線と伏線回収が紛れ込んでいます。そのおかげで、おお、この女の人はあのときの女の子だったのか!!みたいな、びっくり感動みたいなのが体験できるんだけど、やっぱりその部分がご都合主義で不自然に感じてしまうんだよな。そこだけはリアルじゃない。

戦争映画って激動なので面白いんですよ。
でもね、戦争ってものについての解像度が低いと現実味が無くて怖くない。
映画や漫画の中の情報の偏った戦争だけだと解像度が上がらないので、戦争楽しい!とか言い出してしまう中学生とか出てきてしまう。

かといって、戦争反対!だけを声高に叫ぶと、思考停止の先に戦争反対のみが存在する宗教的な思考に見えて気持ち悪いと思う人もいる。

必要なのはその事実の解像度をあげて、正しい情報を渡して、その上で判断は各々に委ねたうえでの総意を確認する事なのではないかと、そんな事を考えさせられる映画でしたね。90点!

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