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『移民の宴』 高野秀行

「異国ごはん」というグループを同僚と作って外国料理の店に通っていた。一緒に楽しんでくれそうな友達とごはんを食べに行くときは、和食やビストロではなくて、トルコ、ロシア、中国民族、ネパール料理、イスラエルのファラフェルといった異国のごはん屋さんを選ぶことも多々ある。私には食べたことのないおいしいものを食べたいという欲求が強い。私が食べるのは「お店屋さん」による売り物だけれど、高野さんが食べるのは日本に住む外国人による「普通の料理」。お金を出してもありつけない料理たち。うらやましい。

『アヘン王国潜入記』を書いた高野さんが、日本に200万人以上すむ外国人たちのコミュニティを訪ね、祖国の食事を一緒に作ったり食べたりする本。

ハワイに日本の神社仏閣があるように、成田にタイのお寺「ワット・パクナム日本別院」があるらしい。ここに日本に住むタイ人たちがお供え物としてそれぞれの出身地方の食事を持ち寄り、作り、共に時間を過ごす。24時間オープンで出入りができ、泊まるところも食べ物も相談する人もいるというタイのお寺はまさに「よりどころ」で、子連れやデートでも行くんだとか。ここで会ったタイ人たちはどうやって日本に来たのか、何をしているのか、そもそもこのお寺はどうやってできたのかなどを高野さんは聞きだしていく。

タイに限らず、ロシアやスーダンの家族、中華学校、モスクなど、興味津々な場所で高野さんは食らい、酒を飲み、語らい、仲良くなる。このインタビューは2011年東日本大震災の頃に行われていて、高野さんは南三陸町のフィリピン女性たちのところにも足を運ぶ。津波で、家も日本の家族も流された彼女たちはそれでもジョークを飛ばす。

高野さんはこう書く。

これから日本が外国の人たちにとって、もっともっと住みやすい国になることを祈って止まない。なぜなら、そういう国は明るく気さくであるはずで、日本人にとっても住みやすいはずだからだ。

私も高野さんほど海外を旅したり住んではいないが、私もこの考えにとても共感する。イギリスに住んでいたことがあるが、もし私がひどい差別を受ければ、私はイギリスを大嫌いになっただろう。そしてイギリス人も大嫌いになり、そのようなことが積み重なれば町の雰囲気も悪くなるだろう。

今の日本は外国人にとって住みやすい国だろうか。なんとなく外国人にとっても、日本人にとっても住みにくくなっているのではと感じてしまう。う〜ん、どうしたらいいのかな、とちょっとの間考えてみたら、重苦しく八方塞がりな気持ちになった。改めてこの表紙を眺めてみる。「美味しそう!楽しそう!行ってみたい!食べてみたい!話してみたい!」という気持ちが沸き起こる。その軽い気持ちで「美味しそうですね!すっごく食べてみたいです。よかったら今度参加させてもらえませんか?お話も聞きたいです」とニコニコしながら「移民(この言葉を選んだ経緯も本の中に書いてある)」の人々に声をかけてみたらいんじゃないか。それがゆくゆくは住みよい国に繋がる気がする。

189.『移民の宴』 高野秀行

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2019年読んだ本:77冊
2019年読んだマンガ:86冊
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#移民の宴 #高野秀行 #本 #読書感想文

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