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『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!』 ちきりん

5月の連休に久々に海外旅行でベトナムに行って、外国人観光客でも簡単に安全に使えるタクシー配車アプリを使った。『Grab』というマレーシアの起業家が立ち上げたこのサービスはUBERを撤退させ、サービスを拡大し東南アジア各地で展開している。日本より全然進んでいる、もっと海外を見たいな、と思った。学生時代の安旅行からリゾートまで、30年近く、50か国以上を旅するちきりんによる、旅から気づくこと、考えることの本。

海外旅行に行くと私はよく行く美術館。大英博物館が略奪品でできているというのは有名な話だけれど、彼女はその他の美術館も成り立ちで分類する。「その地に栄えた一族が残した財宝(ハプスブルグ家の至宝を集めたウィーン美術史美術館)」「街の強みを活かす(パリという街の魅力で芸術家を集め、それらの美術品を収集したルーヴル美術館)「財力で収集(メトロポリタン美術館)」と。またその集められ方によって展示方法も異なる。ちきりんさんは、略奪品について、こうも疑問を投げかける。もし奈良の大仏の頭が切られて、どこかの国の美術館に収まっていたら?他国の略奪があったことで自国での損壊を逃れることができた場合は?大英博物館やルーブルのミイラを眺めて、「なんだかかわいそう」と他人事だと思って思考を停止していたけれど、自分の話だとして具体的に思い浮かべると見えるものがかなり変わってくる。

1992年から1993年にかけてデノミネーションが行われるメキシコシティで年越しをしたり、ソビエト連邦時代とロシア連邦になってからのモスクワの違いなど、場所の違いだけでなく、時期によってまた見えるものが変わってくるともいう。他には世界のリゾート地を見れば、どこの国が今景気が良いのかが見えてくる(景気のよい国の人たちがリゾートを楽しみにきている)なんて話も面白かった。

この本で何度も問いかけられるのは「豊かさ」について。経済的には貧しくても人が楽しそうにしている国、たくさんの札束を持ったおじさんと出会ったビルマ、同じくらいの年の子供たちが、リキシャにのって学校に乗る子供とリキシャを引く子供に分かれるインド・・・「豊かさ」とはどんなことだと感じたのか、これから豊かになっていく東南アジアについてどう感じているのか、など彼女の考えを共有してもらうことができる。彼女が実際に見てきたことが明晰な考察とともにわかりやすく紹介されていく。次の旅は彼女の視点を借りて見て回れる気がする。楽しみ!

124 社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!


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