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『錦繡』 宮本輝

私は…この本、ちょっとアレだな…。なぜ美しい話のようになっているのか、理解できない。他の人のレビューを読んでみたが、非常に評判がよい。ためしに低評価のレビューを読んでみると、だいたい私と同じ方向性の感想だった。

物語は蔵王のゴンドラ・リフトから始まる。子供の手を引きながら乗り込んだ亜紀は、ゴンドラの中で10年前に別れた夫に偶然再会する。そこから亜紀と靖明の文通が始まる。今ならSNSから相手の連絡先を割り出しそうだが、昭和57年刊行のこの物語では住所を割り出す。

なぜ愛し合っていながらも二人は離婚しなければならなかったのか、今お互いはどんな状況なのかが往復書簡の形で、文通相手と読者に明らかにされていく。「過去に何があったの?」と引き込まれるその設定、仕組みは面白い。

(ここから私の「えっ、どうしてなの??」が始まります。少しもネタバレをされたくない方、この作品がお好きな方はここで読むのを止めてください。よろしくお願いします。)

二人が別れたのは、新婚1年の靖明が妻以外の女と宿に泊まっていたことがきっかけ。女は自殺、女に刺された靖明は瀕死だと警察から連絡が入る。あれ、離婚は当然じゃないかな?書簡でその女との出会いが綴られるが、ちょっと考えれば泥沼になるのは考えられるのでは。浅はかだし、その理性をふっとばすほどの女だとは私には思えなかったんだけどな?

この本には、元妻である亜紀、靖明を刺した女、現在靖明を食わせている女の3人の女性が登場する。靖明は全員の女に対して、自分勝手な言い分を振りかざし、乱暴で全く思いやりがない。なんだこいつ?

往復書簡のやり取りをしていくうちに二人は過去を受け入れ、二人は新たな道を歩んでいく…という展開なのだが、私にとっては全く魅力のない男なので、どうして亜紀が彼を愛しているのかわからない。それに、本当に愛しているなら、周りにそそのかされようと当時離婚をせずにふんばれよ。

浮気について「男ってそんなもの」と靖明が言っていたり、亜紀の父も「浮気くらいで離婚をさせるんじゃなかった」と言ったりしている。刃傷沙汰の浮気なのに?

この本は昔の男の理想なのではないか。清楚なお嬢様を落として結婚し、別に女も作りたい。殺されそうなほど愛されている俺。どんなに身勝手でも許され、愛されたい。どんなに自分が酷いていたらくでも、言いなりになる女に寄り添われていたい。醜態を知られても、かつての女に認め許され、愛されていたい。ちなみに女には俺だけを愛していてほしい。昔の価値観を持った男にとっては理想的なシチュエーションだと思う。

181.『錦繡』 宮本輝


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#錦繡 #宮本輝 #小説 #読書   #読書感想文

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