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『とわの庭』小川糸

その日、私はとても疲れていて、甘やかで優しい何かに包まれたくて、書店にいた。『とわの庭』小川糸。小川さんなら夢のように軽く、ふわっと優しく包んでくれるだろうと、本をレジに持っていった。

話はそう簡単ではなかった。主人公は盲目の少女 十和子。母親と二人っきりで暮らしている。家の外には出たことがない。私からしたら人生のリセットボタンを押したくなるような環境で彼女は成長する。

そんな彼女が、再生していく。彼女は決して自分を哀れんだりしない。世界に溢れる豊かな香りを味わい、喜びに満ちたパートナー、信頼できる友人たちを得て日々を過ごしていく。

途中まで「まずい本を選んでしまった」と思いつつもページをめくる手は止まらなかった。途中から、十和子の感覚を通じて、豊穣で優しい世界に身を浸せるようになった。本屋での選択は正しかった。とても甘やかな本。

『とわの庭』小川糸

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