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『家族生活』やまだないと

めんどくさいことがあったので、気分を変えてから家に帰ろう。あのカフェに行く。先日行った、諸星大二郎やねこぢる、楳図かずおといった癖のあるマンガが充実していて、20年ぶりにやまだないとの『西荻夫婦』と再会した、コーヒーもケーキもおいしい店。ドアを開ける前に「おしゃべりは小さな声で」という内容の張り紙がしてあって、客はほぼ30代以上の1人客、みんなひっそり本を読んだり、勉強をしている。今日はちょうど、やまだないとの『家族生活』が目に入る。未読。ラッキー。

96~98 年、週刊漫画アクション(双葉社)連載の未完長編を約10年振りに初単行本化。ゲイの作家カップルとその娘ヒナの、日本からヨーロッパにおよぶ逃避行。「疑似家族」三人の「旅」を通して、家族同士の距離感を独特の切り口で描いた意欲作。巻末には、現在最も注目される映画監督4人(タナダユキ・堀禎一・松尾スズキ・山下敦弘)の寄稿を収録。
家族生活 | やまだないと – 小学館コミック

12歳だったかな?の娘はゲイのお父さんに裸を撮影されているし、普通じゃない感が漂う。登場するキャラクターたちはモラルや法律に触れそうな行いをしている。エロいページを開いている時にフォークが運ばれてきて、コーヒーにミルクは要るか聞かれて、気まずい思いをする。でも店主も読んでいるだろうから、もしかしたら高度なプレイなのかもしれない。そして、そういうページばっかりだ、このマンガは。

美少女が裸になっていようと、「あんたたちこういうの好きでしょ」という読者へのサービス精神が感じられない。というか全編に読者への視線やエンターテインメント感が感じられない。やまだないとさんの内側の「描きたい」などが発現したんじゃないかなあ、と思うようなアート寄りの作品。読み終えたところで、ぼんやりする。私はどうしたらいいんだろう。巻末に文章で4人による続きが載っているのだが、誰かが「やまださん、むずかしいよ」と書いていた。わたしもそう思う。

25年前くらい前の作品でありながら、古さは全くない。(携帯電話も出てこなかったし)読者を冒険やときめきに誘うマンガではなくて、たまたま手に取ってしまった人を茫洋とさせるインスタレーションなのかもしれない。何食わぬ顔で、誰かの家、古本屋の本棚やカフェで設置された装置。

マンガ320 『家族生活』 やまだないと

やまだないと幻の長編「家族生活」が10年越しで単行本化

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