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『僕は僕のままで』タン・フランス

日本版『クィア・アイ』を見て、すっかりFab 5が好きになった私。みんな優しいし、かっこいい。中でもグッときたのはヒーロー(変身するターゲット)が、言葉にならない思いを少しずつ口にしていく様を、じっと見つめながら、手を握ったりしながら決してせかすことなく、待っている彼らの姿。その眼差しに愛を感じたし、その奥にある彼らのタフな人生もうっすらと感じた。好きな人が同性というだけで、タフな経験を経てきただろう彼ら。加えて人種差別も味わっているファッション担当タンの自伝を読むことにした。

タンはイギリス生まれのイギリス育ちなのでイギリス人だが、血筋はパキスタンで見た目は白人ではない。親族はムスリムで同性愛に対しリベラルな対応ではない。私は、見た目が一重瞼で薄い顔なので、日本において人種的な切り口での外見差別を受けたことはない。(小学生の頃「デブ」と言われたけれど、言った男子をぶつような強いデブだったので、深刻にはならなかった)イギリスに留学したときも、あからさまに差別はされなかったので、思い出すのはロンドンのマクドナルドでタチの悪い白人のティーンエージャーに、すれ違いざま頭をぶたれたくらい。(ムカついたので「FxxK!」とだけ捨て台詞を言った)タンの自伝を読むと、「パキ」と別称で呼ばれたり、近所にいるタチの悪い若者たちにえげつないいじめを受けている。クラスメイトは「タンは好きだけど、パキは嫌い」と仲良くはしてくれるけれど、それって白人同士だったらそんな発言出てこないよね、という言葉がついてくる。こういうことは、個人として認識できる誰かから聞かないと、私は思い描くことができない。

そんな彼はファッションを好きになり、おじいちゃんの工場でもらった材料で服をリメイクし、初アルバイトのお給料で自分好みの服を仕立てる。ボリウッドの役者になろうとして挫折しながら、元々好きだったファッションの道へ。恋人ができたり、アパレル会社を興したり、イギリスとアメリカの遠距離恋愛を実らせて結婚へ。仕事のし過ぎでメンタルを病み…と彼の人生は盛りだくさん。それらをイギリス人ならではというか、なんというか、タン・フランスならではの口調で語っていく。とても読みやすい。

白人であれば、例えばアントニの発言は「アントニの発言」として認識されるのに、タンが発言すると「南アジア人代表」として属性を背負った発言になってしまうといった重みのほか、テレビに出て変わったこと、セレブとの付き合いなどは、想像はできても私には実感がわかないけれど、彼が「自分らしさを出す」ときにいつも戦っている、その気持ちはよくわかる。私よりも、もっと痛い目にあってきているだろうし、影響力も大きいから、タンの勇気の量はもっとすごいだろう。

そういったシリアスな話のほか、Fab 5のメンバーそれぞれの第一印象(カラモの話が面白かった)や、ファッションTips、旦那さんの写真やのろけ話なども組み込まれた自伝。いつか空港かどこかで会ってハグとかしたい。「私はあなたを好きだよ」と伝えたい。

148 『僕は僕のままで』タン・フランス

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私の『クィア・アイ in Japan』の感想

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