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星を愛するヒト


その紳士は70代くらい。

柔らかい口調で、宿泊客に星空を説明するガイドをしている。


標高約900mの場所にある宿泊施設のテニスコートで行なわれる星空ガイド。

当日の天気予報から、星を見られるのは諦めていたが、運良く晴れた。

私達はディナーの時間をゆっくりと過ごしていた事で星空ガイドの時間には間に合わなかったが、会場である夜の真っ暗なテニスコートへ向かった。

テニスコートには、1組の夫婦と星空ガイドの紳士。後方にホテル従業員が1名見守っていた。




テニスコートから夜空を見上げると、満点の星空!

プラネタリウムなんて比にならない、無数の星!

壮大な天の川も、肉眼で見える!

天体望遠鏡で観察する土星はいつぶりか!

流れ星を見られたのはいつぶりか!

感動が止まらなかった!



そんな感情の中、紳士は私達をそっと出迎え、淡々と説明を始めた。

口調から、星をまっすぐに愛しているのだとすぐに分かった。

愛溢れる感情と共に、ひとつずつ、星が紹介される。

その紳士の話しに吸い込まれ、まるで流れ星を浴びているかのような心地良い気分になった。



紳士は星に対して愛があり、星を観る者に対しても愛があった。

慈愛に勝るものはない。

愛は、心を動かす。



紳士から、そして星空から、ほんの少しの時間で生き方を導いてもらった感覚になった。

星は、自分のルーツと未来を辿れる。

星を想うことは、生き方を知ること。

人生のすべては、愛情が寄り添うことでスムーズに解決していく。



付かず、離れず、追わず。

情熱を注ぐことに対する愛を、他のヒトにも注ぐ。

私は紳士から、大切なことを学ばせてもらった。



星を愛するヒトは、そこにいるだけで柔らかな光を放っていたが

山を降りて遠く離れた今も、星を愛するヒトを感じられる。

ヒトとヒトは、そうして繋がっているのだろう。




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