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藤田真央 モーツァルトピアノソナタ全曲演奏会第2回

2021年10月15日(金)19:00
王子ホール
《プログラム》
・幻想曲 k.397 ニ短調
・アダージョ k.540 ロ短調
・ソナタ k.310 イ短調
休憩
・ロンド k.511 イ短調
・幻想曲 k. 475 ハ短調
・ソナタ  k.457 ハ短調

今年の3月から王子ホールで行われている藤田真央さんの「モーツァルトピアノ・ソナタ全曲演奏会」の第2回を聴きに行きました。第1回目に続き素晴らしいリサイタルで、まったく綻びを見せない完璧に近い技術と、自然で美しいモーツァルトの世界に魅せられた演奏会でした。「演奏には人柄が自ずと現れる」とはよく言われますが、ハートがオープンな真央さんは音楽を介してたくさんの感情を見せてくれるので、今回のような短調ばかりのプログラムであれ、会場は不思議な幸福感に満たされました。
イ短調のソナタとハ短調のソナタを中心に、ファンタジーやロンド、アダージョ等が演奏されました。演奏会を聴いて感じたモーツァルトの短調の世界は、想像していたよりずっとドラマ性を帯びていて、深い淵をさまよう孤独な魂...でした。
そんな短調の緊張感とは正反対の、とてもリラックスした腕や手から引き出される繊細な美しい音色は、ミルフィーユのように幾重にも重ねられ、孤独や哀しみといった心のひだが歌われ、表現されていきます。
後半、ロンドイ短調に続いて演奏された、エニグマティックなハ短調のファンタジーとソナタは2曲が一貫性を持ち、ソナタ終楽章の末部に現れる1オクターブ低い完全終止のバスの音形によって、確固たる信念を突きつけるような大胆さでプログラムは締めくくられました。この日はテンポやデュナーミクに適度な抑制が効いて、コントロールがとても良く、さらりとかけてしまうルバートにセンスが光っていました。
来春予定されている第3回は、k.284やトルコ行進曲付きのソナタだったかと思います。
絶対に裏切られない和声感覚、ポリフォニーの丁寧な扱い、ぶつ切れる心配のない柔らかいレガートで奏でられる旋律によって、いつでも安心して聴けることがどれだけ心地よいか、ぜひいつか体験してみてください ; )

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