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ショートショート 「悲しいパフェ」

ここは、刑務所のなかの喫茶店です。
塀の外から、小学生の女の子が喫茶店の中に入ってきました。
女の子はメニューをみて、注文しました。
「悲しいパフェください」
女の子はお店の人に、お父さんの写真を見せて言いました。
「おとうさんと会う約束してるの」
悲しいパフェは、お父さんが昔、雪の降る外国で、働いていたときに、
食べていた、雪だけでできたパフェです。
チンとベルが鳴って、悲しいパフェのオーダーが入ると、
雪が降り始めました。
しばらくするとお父さんがやってきました。
女の子はお父さんと雪の降る庭に出て、
楽しくて笑いながら、
パフェのグラスの中に、雪をあつめます。
白い雪がいっぱいになって、悲しいパフェが完成すると、
お父さんは消えました。
「悲しいパフェください」
もういちど、女の子は、お店の人に言いました。
チンとベルが鳴って、大雪が降ってきて、お父さんがまたやってきました。
女の子はお父さんと大雪の降る庭に出て、
パフェのグラスの中に、大雪をあつめます。
さっきよりもたくさん、雪が降ってきたので、
あっという間に、パフェグラスの中は雪でいっぱいになりました。
悲しいパフェができると、お父さんは消えました。
お父さんと笑う時間もありませんでした。
「悲しいパフェください」
女の子は、また、お店の人に言いました。
前がみえないほどの吹雪で、あたり一面が雪景色になりました。
女の子は、首まで雪に埋もれました。
お父さんがまたやってきて、
女の子に「楽しいパフェ」を注文するように言いました。
楽しいパフェは、女の子のお母さんの友達がつくっているパフェに似ています。
お母さんの友達は、お母さんと結婚する男の人です。
「楽しいパフェください」
お父さんは女の子の頭を撫でて、さよならを言いました。
#ショートショート   #小説


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