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「だって」最強説

前回につづき、今回も「ナッジ」について。

(前回)

「ナッジ」とは、おおざっぱにいうと、
「人間の心理を利用して行動を促すさりげない仕掛け・優しいテクニック」
を指す。

禁煙プログラムなどで、「将来の自分に手紙を書く」というワークが行われることがある。
参加者は、「未来の非喫煙者としての自分」に向けて手紙を書く。
これが自分に対するコミットメントとなり、禁煙を心理的に後押しする。
これもナッジの一種だ。

今回のテーマは、「ビコーズ(なぜなら)の活用」。

人間は理由が与えられると、その理由の妥当性を深く考えることなく、行動や判断を容易に受け入れる傾向がある。

テレビの通販チャンネルで、
「このフライパンを使えば料理が上手くなります。なぜなら、プロのシェフも使っているからです。」
的なうたい文句をよく聞く。
よく考えるとプロのシェフが使っているからといって自動的に視聴者の料理の腕が上がる理由にはならない。
冷静になってみるとおかしいのだが、視聴者はこの手の宣伝文句に弱い。

このナッジは
「ビコーズ・バリデーション」
と呼ばれる。

忙しい脳が「なぜ?」と疑問を持ったとき、「なぜなら(ビコーズ)」という理由があると、その中身は何でもよくなるという現象が、「ビコーズ・バリデーション」。

以下は有名な実験だ。

コピー機の順番待ちをしているところに
「先にコピー機使っていい? だって(ビコーズ)コピーしないといけないから」
こういって割り込むと、順番を譲られ、すぐにコピーできる。

よく考えると、「コピーしないといけない」は理由になっていない。
ほかの人もコピーしないといけないのは同じだ。
だが、理由を口にすることで、みんな順番を譲ってくれた。

理由を告げずに「先に使っていいですか?」とだけ言うより、この無意味な「だって」を付け足したほうがずっとうまくいく。

この「ビコーズ・バリデーション」を協会に応用するとしたら?

まず、細々した応用を挙げると、

会員勧誘:
「多くの人が協会に参加しています。なぜなら、みんながしているから」

「みんながしているから」という理由は深い意味を持たないが、社会的証拠として機能し、新規会員の参加を促す可能性がある。

イベント参加促進:
「このイベントには毎年多くの会員が参加します。なぜなら、それが伝統だから」

伝統という理由は具体的な価値を示さないが、参加を正当化しやすくなる。

寄付の募集:
「多くの会員が寄付しています。なぜなら、協会が毎年お願いしているから」

寄付の理由としては弱いが、習慣的な行為として受け入れられやすくなる。

規則遵守:
「すべての会員がこの規則を守っています。なぜなら、それが正しい行動だから」

正しい行動という理由は実質的な意味を持たないが、規則遵守を社会的標準として位置づけ、遵守を促す。

以上が細々した応用の例。

しかし最大の応用は、

「なぜ協会を作ったのか」
「なぜこの講座をやっているのか」
という理由を公開すること

だろう。

「受講したらこんな知識やスキルが学べる」
「受講したらこんな認定が得られる」
などの「効果効能」しか語っていない認定講座をよく見かける。
認定講座を作った理由は、語られていない。

「会員になったらこんな良いことがある」といった「効果効能」しか語っていない協会もよく見かける。
認定講座を作った理由は、語られていない。
その協会を設立せざるを得なかった経緯や理由が語られていない。

わざと語っていないのではなく、そこを語ろうという発想をしていない。
かなり、もったいない。

「なぜ協会を作ったのか」
「なぜこの講座をやっているのか」
という理由を語ろう。

理由を語るだけで、印象は大きく変わる。





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