見出し画像

バスに乗って

悲しい奴は悲しみに
気付く間も無くバスに乗る
席を譲って吊革に
善意と悪意をぶら下げて
卑猥な微笑の喉元を
スマホに隠して流し込む

寂しい奴は寂しさに
向き合う前にバスに乗る
英雄豪傑お好みで
中身は三度の飯の後
とっぽい夢の黄昏に
仮想敵国産み落とす

哀れな奴は哀れみに
噛み付きながらバスを待つ
バスに時刻も駅も無い
いつも何処かで走ってる
バスが決まって止まるのは
乗りたい奴が居る所

バスに乗れたら一安心
そこで世界は閉じるから

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール