見出し画像

風が冷たさ纏う頃

季節を綴じたクロゼット
去年の上着を取り出して
思い出挟んだ栞には
毛玉がひとつ転がった

毎晩紡ぐ言の葉は
この先何処へ行くのやら
昔の事は忘れたと
古びた台詞が舞い落ちる

小さな心を携えて
小さな身体で生きるだけ
本当はどうでも良いんだと
黙って頷く振りをする

動かぬ山の傍に
幾億年の歳月と
共に横たうオリオンが
変わらぬ今を生きている

目覚まし時計は壊れたと
明日の予定を塗り潰し
仕様がないわと嘯いた
風が冷たさ纏う頃

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール