見出し画像

What are you working for? #僕たちはヒーローになれなかった

はじめに

2019年11月22日、「僕たちは世界を変えることができない。」の著者で
医師・作家の葉田甲太さんが、新刊を出版しました。

新刊は「僕たちはヒーローになれなかった。」

「僕たちは世界を変えることができない。」を刊行し・著書が映画化され、
映画が大ヒットしてから8年後の葉田さんの新しい歩みを描いた物語です。

著書については後述しますが、2019年12月21日に葉田さんと私の友人である医師の嶋岡 鋼さんが栃木の会場で出版記念の講演を行いました。

画像1

先日はそんな嶋岡さんとの出会いについて膨大な昔話をしてしまいましたが
この記事では、おふたりの講演についてお送りします。

今回は出版記念講演。
新刊の内容にも触れているものもあったためネタバレとならないよう
完全なレポート形式ではなく、おふたりの講演を通し心に響き忘れられないメッセージをメインに記そうと思います。

講演について

画像4

1. 新生児蘇生法を発展途上国に伝える大切さ・葉田さんとの出会い
2013年立ち止まらざるを得ない絶望を抱え、心身のバランスが崩れた嶋岡さん。
そんな中、唯一握りしめていたアイデンティティである新生児蘇生法を携え、アフリカから研修に来た助産師さんへ講習をする機会に巡り合いました。

その時の助産師さんの受講者の真剣な表情や・姿勢に接したことで
「救えるはずの命を救うための術を伝える必要性があるんだ」という気付きと
「世界で僕のことを必要としてくれる人がいる」と強く感じたということです。

ここでデータをひとつ。(UNISEFより)

世界の新生児が死亡する割合
毎年260万人の赤ちゃんが生後1年未満で死亡。
そのうち100万人はその日のうちに死亡してしまうそうです。

赤ちゃんの命が失われる主な原因
早産・出生児の合併症 … 全体の35%
分娩中の問題(新生児仮死など) … 全体の24%
敗血症・髄膜炎 … 全体の15%
先天奇形 … 全体の11%

スクリーンショット 2019-12-23 0.52.15

この新生児の死因の大部分は、条件が整うと防ぐことができると考えられています。

1.「新生児蘇生法」を用い、赤ちゃんに適切な処置を行うこと
2.  治療ができる医療環境を整えること
3.  医療環境を整えた後も継続して環境を保持すること

嶋岡さんはこの「新生児蘇生法」を途上国の分娩に関わる全てのスタッフへ伝え続けることを決意。

来日したアフリカの方への講習を皮切りにブータンへ渡航し講習を実施し続け
2016年にはブータンの保健省主催の会議に参加し講師として携わるまでに。

そんな活動を行っている中、2017年にある医師と出会うことになります。
「僕たちは世界を変えることができない。」の著者であり、著書を出版後に新たな奮闘をしていた葉田甲太さんでした。

2.葉田さんが新生児蘇生法と出会うまで
葉田さんは、学生時代にカンボジアで学校を建設し・医師となりカンボジアでの支援を続けている中で
生後22日目で赤ちゃんが亡くなったこと・赤ちゃんのお墓の前で母親が流していた涙に遭遇しました。

その後スーダンを訪れ・医療支援を行っていた川原さんと出会い、多くのことを学んだあとに
再びカンボジアに行き、赤ちゃんを亡くした母親と会い、近況と共に改めてお話を聞いたとのこと。
その時の様子は、肺炎にかかった我が子を病院に連れていくために急いで向かいたかったけれど救急車が高く、10ドルのバイクタクシーで移動中に赤ちゃんは呼吸をしておらず既に亡くなり…
結局家族にはバイクタクシーを呼ぶための借金だけ残ったということでした。

医療は不幸を減らす仕事なのに…
赤ちゃんを失って幸福な人は世界中ひとりもいない。
これまで自分が出会った人で赤ちゃんを失った人が涙を流していない人を見たことがなかった
そして、その涙は「適切に行動すれば救えること」を当時わかっていなかったことをこの時に知ったということでした。

帰国後長崎大学熱帯医学研修課程でマラリアなどの感染症や公衆衛生の知識や熱帯医学の基礎を学び、技術や基礎や知識だけでは支援は足りないことを知り・足りないことをクリアにしていくためのNGO団体とのご縁が生まれ、
再びカンボジアへ病院を建設する活動を開始することとなり・ご自身もNPO団体を立ち上げ・嶋岡さんと出会いました。

現実と限界を知った・だけどただ「行動を止めない」という選択をした。
この選択が嶋岡さんの「新生児蘇生法講習」をカンボジアで実施するに至り
そこからさらにタンザニアの新病院の開院・ラオスでの新生児蘇生法講習の実施の医療支援活動へ繋がっていったのでした。

おふたりのメッセージについて

画像3

嶋岡さん
「世界の果てで赤ちゃんを救うために頑張っている仲間がいる」

「僕には現地の医療者を育てていく使命がある」

「生まれてくる命にチャンスを。
 世界を変えていくのは・赤ちゃんがその国の未来なのだから」

「僕一人ではこれ以上できることはないかもしれない。
 だけど僕はもっともっと多くの命を救うことができる」
葉田さん
「僕には社会貢献をすることで聖人になりたいとか・
 世界平和を実現したいだのそんな壮大で崇高なものなんてないんです。
 ただ、人の笑顔が見たい、その気持ちが僕を突き動かしているんです」

「本を出版して・医師になって目的と手段を誤っていることに気づいた。
 人の命を救いたいから・人の笑顔を見たいから医師になったんだ、と」

「僕たちは医師として直接手にや体に触れ治療を施すことができる。
 だけど、医師ではなくてもみなさんにはできることがあるんです。
 勿論お金でできる支援以外でも・たとえば途上国の環境で施設を運営し
 医療を行える環境を整えるための手段やノウハウを提供することも支援。
 直接触れて治療を行う行為以外でもできることは必ずあります」

嶋岡さんは新生児蘇生法の講習時に受講者に必ず語りかけています。

やるべきことの手を全て尽くしても救えないこともある。
取った行動が正しかったのか・そうではないのか・なぜ救えなかったのか
絶望や疑問や葛藤がいっぱい降り注ぎ、動けなくなることがある。

だけど、そんな時にこそ自分の胸に語りかけてほしい。

 "What are you working for?(僕たちは何のために)" 

貴方のその手は未来を担っていて・未来を支えているんだ。
そしてあなたの仕事に自信を持ってほしい、と。

おふたりの言葉は、とてもあたたかく・ひとつひとつ響くものでした。

NPO法人 あおぞらについて

2017年に葉田さんが設立したNPO法人「あおぞら」は
救えるはずの命を救うこと・悲しんでいる人の涙を止めること
そのために物資支援活動・医療支援活動・講演活動を行っている団体です。

最近の活動はクラウドファンディング。
タンザニアの僻地での新病院プロジェクトを開始し・達成しました。

寄せられていた葉田さん・嶋岡さん・大竹さん・中西さんの記事は
プロジェクトが終了しても色褪せることはありません。

私も久しぶりに読み返しました。ぜひみなさまに読んでいただきたいです。

医療関係の仕事に携わらなくても出来ることもたくさんあります。

私もクラウドファンディングでわずかばかりですが支援しました。
生まれて初めてのクラウドファンディングでした。

これからもNPO法人あおぞらを応援していくと共に
笑顔に繋がること・支援をこれからも出来る時に私も継続したいです。

「僕たちはヒーローになれなかった。」について

「僕たちは世界を変えることができない。」を刊行し・著書が映画化され、
映画が大ヒットしてから8年後の葉田さんの新しい歩みを描いた物語です。

どんな言葉と・どんな思いと・何を携えて自分はどう動く?

早ければ小学校高学年のお子様から読めるほどとてもわかりやすい言葉と
温かく優しい文章や写真で紡がれています。

ぜひ書店で本を手に取ったり・Kindleの本棚に並べていただきたい1冊です。
(無料のKindleのアプリもありKindle端末がなくても購入できます)

おわりに

画像5

この日の講演は嶋岡さんのご家族や親子でお世話になっている方々を始め
彼の人柄に惹かれたお仕事繋がりの方々・葉田さんの著書で活動に感銘して駆けつけた若者や、私のような医師の顔以外で繋がっている人…
多くのご縁で繋がった方々とも出会うことができました。

画像6

はがねちゃんとのセルフィー(よく見たら右端に葉田さんがいた…笑)

画像7

新刊の巻末にいただいたメッセージ、大切にします。

はがねちゃん、人生の後半は多くのメッセージを伝え続けることの決意と
「イマノオモイ」をたくさん聞かせてくれてありがとうございました。

葉田さんは、私にとってはじめましてのお方でした。
私は葉田さんの講演でのあの第一声を聞くまで
国際支援というものは高い志や信念や崇高なものがないと出来ないんだと思っていました。

自分が目にし・感じたことを「自分のもの」とした瞬間は大きな意味を持ち
そして大きな原動力になることもあの講演でお話をうかがえたことも
私にとってもそれはとても大きな意味を持つものでした。

…その感情の喜怒哀楽の種類がどうであれ、これからの自分に置き換えたとしたら一体どんなことができるのだろう?
当分このことについて私はきちんと向き合おうと決めました。

葉田さんは真摯な姿勢と繊細さ・そして優しい心の持ち主です。
そしてとてもいまどきの無邪気な若者の一面もあり…(笑)
講演後に何人か囲んでのお食事にご一緒させていただいたのですが
色々な顔のあるとても人間味溢れる非常に魅力的な方でした。

そんな素敵な葉田さんが47都道府県を回る
「僕たちはヒーローになれなかった。」出版記念全国ツアーの今後の情報はこのURLからぜひチェックしてみてください。

2019年もあと数日で終わります。
 
"What are you working for?(僕たちは何のために)" 
 "What are you living for?(僕たちは何のために)" 

私はこの問いかけを連れて新しい年を迎えようと思います。

この記事が参加している募集

#イベントレポ

26,232件

記事や写真を好きと伝えてくださったり、ここがきっかけで繋がれると嬉しいです。※SNSへの記事のURLのシェアはOKですが、記事や写真自体を他媒体へ転載したい場合は必ず事前にご一報ください。