バックオフィス系SaaSで業務フローをスマートにした話(其の四)


はじめに

このシリーズ第4弾は、法人カードサービスのUPSIDERです。これは、従前ショボショボだった信販会社系カードとは一線を画したサービスで、支払いまわりで完全になくてはならないSaaSになってくれています。

導入の背景

UPSIDERカードの導入前、Oricoが発行するコーポレートカードが存在するにはしていたのですが、利用限度額が低く、本来カード支払を利用したいサービスの金額の合計には遠く及ばない状態でした。そうした状況の中で

  • 請求書払いで対応いただけているところは請求書払い

  • カード払いを行うところはオペレーション講座を持っている銀行のデビットカードを利用するため、即時に引き落としがかかる

という状況となっており、以下のような問題が生じていました。

  • 何よりも資金繰りに対しての悪影響。掛けもしくはカード払いなら翌月落ちるところが、即座にキャッシュアウトしてしまう。

  • 銀行のオペレーション口座→MF会計に仕訳が自動連携しているので、引き落とし1件1件に対してMF会計上で仕訳が走り、1つ1つ入力していかなければならず煩瑣。

こうした問題を一足飛びに解決してくれるのがUPSIDERカードということで、比較的初期から導入、活用させてもらっています。

サービスの特徴

私が申し上げるまでもなく、サービスの特色として記載されていますが、以下のようなサービス上の特徴の恩恵を受け、また活用させてもらっています。

  • Moneytree連携などを活用した、既存の信販会社では到底なしえない与信枠の設定

  • 加盟店での決済から利用明細が立つまでの早さが圧倒的に早い

  • バーチャルカードを無数に発行できるので、後々の仕訳等の会計側での処理まで考えて非常に楽!

中でも、一にも二にも与信枠の拡大が圧倒的でした。Moneytreeにより預金残高のリアルタイムな共有がなされることで、返済余力を透明性高く評価いただけて、信販会社系のカードだとかなり枠を絞られてしまうスタートアップ企業でも十分に使えるだけのカードになっています。

導入に際して行ったこと

主要な加盟店ごとに専用のバーチャルカードを発行

弊社の場合は主に仕入れ関係が多いですが、よく使う加盟店についてはその加盟店専用のバーチャルカードを発行し、そのカードで発生する決済はすべてその加盟店のものという状態を作っています。これにより後々の仕訳作業が楽になります。取引明細をcsvでダウンロードした際、いろいろな加盟店での決済がごちゃまぜになっていると、内容の判別に時間がかかってしまいますが、そこが最初から分かれていることで、例えば店舗の取引履歴を表示した画面と決済が同じ順で並んでいる、というような状態が作れます。それにより、内容を見ながら仕訳していくのが格段に楽になります。このメリットは当初から想定していましたが、担当の営業さん曰く、30枚ほどバーチャルカードを持っているウチはかなり細かく使えているほうだそうです。

カードが発行されたら、各店舗の決済情報を更新していく。

加盟店によって「次回からこのカードを使う」というような保存機能を有している場合は、そのカードをUPSIDERで発行したバーチャルカードの番号に更新または新規登録していく必要がありました。これは最初だけ「産みの苦しみ」ではありますが、一度設定してしまえば継続的に使用することができます。

取引先の限定がかけられるものはかける

UPSIDERカードに標準搭載されている機能で、カードごとに使用できる加盟店を限定することができます。すべてが当てはまるわけではないのですが(特にECショップでの登録が多い弊社の場合は対象外であることがしばしば)、できるところはこの限定を掛けておくと不正利用対策になります。同様に、利用限度額についても必要に応じて設定することができるようになっています。

運用開始後

既存の信販会社系カードに比べて圧倒的に与信枠を出してもらえるので、多くの場面でUPSIDERカードを使うことができ、資金繰りに大きく貢献しています。
また、UPSIDERカードはVISAカードですが、3Dセキュアの新しい方式に対応できるまでは決済を拒絶されてしまうケースが少なくなかったのですが、現在はこの問題も解消しています。
弊社のOP上なくてはならない決済インフラですが、細かいイシューとしては以下のような論点・対応が生じました。

MF会計との連携では課題あり(特に適格請求書に関して)

UPSIDERカードは、MF会計の自動仕訳連携機能があります。決済1件1件について、MF会計に飛んでくるのですが、ここで以下のような問題が生じます。

  • 仕訳の取引先が自動では入力されない

  • 適格請求書発行事業者であるかどうかが判定されない

これは、UPSIDER上で適格請求書の証憑紐付けができるものの、あくまでMFに仕訳が出るのは決済成立時であり、後から証憑紐付けをしてもその情報が更新されるわけではないという構造になっているためと思われます。よって、UPSIDER上で適格請求書の証憑紐付けを行ったとしても、明細をcsvで発行し、さらにMF会計の仕訳帳にインポートする際に適格区分や取引先名称は自前で入力してデータを整える必要があります。
インボイスを考えなくてよい間は自動連携機能でも問題ありませんでしたが、2023年10月以後、自動連携は使わずに別途生成したcsvを使ってMF会計にはデータを渡しています。
このあたりは、実際、取引先マスタがあって仕訳ごとに適格/非適格の判定ができるバクラクカードの方が、会計ソフトとの連携という点で軍配があがります。

バーチャルカードは1Passwordと相性良さそう

弊社では、出張があるスタッフは少なく、担当者レベルでカードを割り当てて使用するというようなシチュエーションはありません。よって、リアルカードは1枚も発行しておらず、すべてバーチャルカードで間に合っています。
そうなると、カード情報も1Passwordに保存しておいて、必要なスタッフがアクセスできるようにしておき、決済時に使用するという使い方が可能です。カード情報の管理も容易になり、カード番号、有効期限、CVV等の無用な流出も防ぐことができます。
外回りの営業さんが多いような会社では、出張経費の精算をUPSIDERカードでやってもらうという利用方法はそこそこメジャーな気がして、リアルカードの発行ニーズもあると思いますので、この点は使い勝手が変わってきそうです。

不正利用の被害に遭ったことも

これはUPSIDERカードだからという話ではないのですが、いろいろな加盟店で使用しているからか、カードの利用明細の中に身に覚えのない決済があり、カードを停止する事態になったことがありました。こうしたときに、加盟店ごとに独立したカードを使用しておくことで、影響範囲を限定することができるのもUPSIDERのメリットのひとつです。ただ、こうした被害にあうのは、独立させるほどでもないところで汎用的に使うカードに起こりがちなのですが。。。
不正利用については、全額補償をうけることができ、(再発行→再登録という手間を除いて)実損を被ることはありませんでした。

承認申請フローとの連携

UPSIDERカードの機能として、利用申請というものがあります。決済カード、決済予定金額、内容などの情報を記載して、事前に承認申請を上げることができる仕組みです。
これについて、弊社では先に紹介したバクラクを汎用ワークフローシステムとして統一的に使用しているので、UPSIDERカード内のこの機能は使っていません。バクラクで購買申請を上げる際に支払い方法として法人カードを指定する、にとどまっています。ここは、WFをバクラク申請を前提する限り、バクラクカードを使ってバクラク申請と連動させる方が、全体のワークフローをすっきりさせるためには望ましいでしょう。予実管理等をきっちりやるというガバナンス観点からは、将来的に整理が必要なポイントとして認識しています。

おわりに

UPSIDERカードを使用できるようになってから、決済の軽やかさ、資金繰りなど革命的に変化し、会社の運営基盤強化に大きく貢献してもらいました。今後、先に触れたようにインボイス制度の対応部分で追加開発をお願いしたいところがポロポロ出てきているので、そのあたりが一層強化されていくことを切に願いますが、引き続き決済インフラとして活用させていただきたいと思います。
会社のコーポレート担当者としては、バーチャルカードの発行と管理を細かめに行い、UPSIDERカードのメリットが十二分に発揮される運用を構築されると、しっかり使い倒せるのではないかと思います。
またサービスの改善が図られた際には、変化等について追記しようかなと思います!

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