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万博パビリオンの歩き方

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「2025年の大阪・関西万博って、どんなパビリオンができるの?」 このマガジンは、そんなあなたの疑問を“少しだけ”解消するために作られました。 開幕は2025年4月。海外の国…
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2023年12月の記事一覧

「万博パビリオンの歩き方」始めます!

2025年大阪・関西万博開幕まで500日を切りました。共同通信大阪支社では、普段は大阪の行政や経済を担当している記者が中心となって万博についても取材をしています。 万博を巡っては、2度の会場整備費の上振れや、海外パビリオンの建設遅れなど、マイナスイメージのニュースが多いですよね。取材する私たちも、次々と舞い込む「バッドニュース」に忙殺される日々です。政府や大阪府・大阪市が主体的に関わり、多額の税金が投入される万博について、課題や税金の使われ方を取材するのは、報道機関としての

鏡で覆われた“変幻自在”のパビリオン~落合陽一プロデューサーのnull²~

「ぬるぬると動く巨大な生き物みたいなパビリオン」 メディアアーティストの落合陽一さんは自身の手がけるパビリオンを、そう表現しています。(冒頭の画像©2023 Yoichi Ochiai / 設計:NOIZ All Rights Reserved.) 来場者は、鏡のような膜で覆われた建物の前に立つと、自分の姿や会場の風景がゆがんで映し出され、未知の感覚を体験できるそうです。 なぜ、ゆがんで映し出されるのでしょうか。仕掛けは、鏡面仕上げの膜の裏側に設置された機械で、それによっ

数学も音楽も芸術もカオスから生まれる~中島さち子プロデューサーのクラゲ館~

1996年、インド。17歳の中島さち子さんは、世界中の高校生らが数学の超難問に挑む国際数学オリンピックインド大会で、日本人女性初の金メダルを獲得しました。金メダル獲得者の中には、その後に数学界のノーベル賞「フィールズ賞」を受賞したり、世紀の難問「ポアンカレ予想」を解いたりした人もいます。 中島さんの興味は数学だけにはとどまらず、ジャズピアニストや教育専門家など多様な肩書を持ちます。万博で手がけるテーマパビリオンは「いのちの遊び場 クラゲ館」。海で刺されると痛いアイツです。ク

未来社会の作曲家はアナタです♪~オーストリアパビリオン~

モーツアルトやシューベルトなど多くの有名作曲家を輩出し、ウィーン交響楽団やウィーン国立歌劇場がある「音楽の都」ウィーンが首都のオーストリア。まさに音楽の国にぴったりな、音符が弾む楽譜に見立てた真っ赤なリボンのオブジェが印象的です。 パビリオンのテーマは「Composing the future(未来を作曲する)」。館内には音符型の画面が並び、オーストリアの技術や研究を通して「未来への解決策」を学ぶことができます。終盤には「未来のための大聖堂」という部屋があり、中央の大きな楽

「静けさの森」では命や自然と対話を

会場に向かうとすぐ目に入ってくる木造の大屋根「リング」の内側には、甲子園球場の半分ほどの広さとなる、2・3ヘクタールの森が作られます。その名も「静けさの森」。来訪者でにぎわう各国のパビリオンに囲まれた憩いの場となるはずです。 森の木は各地から植樹されます。中には1970年の大阪万博の会場だった万博記念公園(大阪府吹田市)から移植される木もあります。池も作られ、立ち寄った人は緑の中をゆっくり散策することができます。 「70年大阪万博からの命のリレーだ。静かに命や自然と対話し

春が訪れ、川の氷も人々の気持ちも動き出す~カナダパビリオン~

太平洋と大西洋、さらには北極海にも面しているカナダは、世界第2位の広さの国土面積を持ちます。日本から直行便で行けるトロントの緯度は北緯43度台で、札幌市よりも北に位置します。ということは、冬はとても寒い! カナダのパビリオンは、そんな厳しくも美しい自然環境にインスパイアされています。 外観のイメージ図(駐日カナダ大使館提供)で目を引くのは、直線で構成された鋭角なデザインではないでしょうか。何を思い浮かべましたか?「氷」と答えたアナタは鋭い!カナダのパビリオンは、厳しい冬の

世界一軽い?アルプスの自然と「魔法」の球体~スイスパビリオン~

スイスと言えば、アルプスの大自然。アルプスの大自然と言えばハイジ。どこから吊られているの?と不思議になる大きなブランコの映像と陽気なあの音楽がたちまち思い浮かびます。大阪・関西万博で披露されるスイスパビリオンもそんな「軽やかな」イメージにぴったりです。 スイスアルプスの草原と無数の花々の中に現れるのは5つの大きな球体。時計やチョコレートといった銘品を生み出したスイスの「魔法」を表現します。素材には特殊はフィルムを使用。担当者は「これまでで一番軽いパビリオンになる」と自信たっ

ビールだけじゃないよ!~チェコパビリオン~

「ビールの国、ボヘミアガラスの国、ドヴォルザークの故郷…。チェコに対する、そういう日本人のイメージを大阪・関西万博でアップデートしたいんだ」。チェコパビリオンを担当するオンドジェイ・ソシュカ政府代表は、そう意気込んでいました。(冒頭のビジュアルは大阪万博2025年チェコ政府代表事務局提供) ソシュカさんは「チェコはバイオテクノロジーやナノテクノロジーが進んでいる。(イーロン・マスクの米宇宙企業)スペースXに部品を供給している会社もあるほど宇宙産業も盛んだ」とも語ります。

共にエネルギー問題の解決を図る場~オランダパビリオン~

日々、建設の遅れが指摘されている海外パビリオン。だけど、オランダは違うようです。自国の建築事務所と日本の建設会社がタッグを組んで設計から完成までをマネジメントしているので「順調」なんだとか。マーク・カウパース総領事は(余裕の?)ほほえみを浮かべていました。「どんなに美しいプランがあっても実現できなければ意味ないだろう?」。「世界一高身長」と言われる国だけあって、総領事も2㍍くらいありそう。デキるビジネスマン感がすごい。(冒頭の画像:Copyright Plomp) 鎖国下の

イタリアパビリオン「アートは命を再生する」

チャオ!ボナセーラ!最初にご紹介するのはイタリアです。地理で習う地中海性気候によって育まれたワイン畑…ではなくてブドウ畑を思い浮かべると、それだけで心が弾んできますよね。イタリアといえばプラダ、グッチなどのブランドや、フェラーリ、ランボルギーニといった高級車に代表されるように、ワイングラスを片手にとにかくおしゃれなイメージ。 あと忘れてはいけないのが、14世紀にイタリアで始まったルネッサンス。直訳すると「再生」で、古代ギリシャ・ローマ時代の生き生きとした人間性を取り戻そうと