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万博パビリオンの歩き方

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「2025年の大阪・関西万博って、どんなパビリオンができるの?」 このマガジンは、そんなあなたの疑問を“少しだけ”解消するために作られました。 開幕は2025年4月。海外の国…
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「万博パビリオンの歩き方」始めます!

2025年大阪・関西万博開幕まで500日を切りました。共同通信大阪支社では、普段は大阪の行政や経済を担当している記者が中心となって万博についても取材をしています。 万博を巡っては、2度の会場整備費の上振れや、海外パビリオンの建設遅れなど、マイナスイメージのニュースが多いですよね。取材する私たちも、次々と舞い込む「バッドニュース」に忙殺される日々です。政府や大阪府・大阪市が主体的に関わり、多額の税金が投入される万博について、課題や税金の使われ方を取材するのは、報道機関としての

5カ国が巻き起こす渦~北欧パビリオン~

今回紹介するのはフィンランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、アイスランドの5カ国による「北欧パビリオン」です。北欧5カ国が共同出展するのは2005年の愛知万博(愛・地球博)以来なんだとか。(冒頭画像は©The Nordic Pavilion) 北欧パビリオンのテーマは「ノルディック・サークル」。それぞれ異なる特色を持つ5カ国が一つになり「最善の力を結集させ、まだ見ぬ新しいつながりを創り出す」というメッセージが込められています。日本国産の木材で作ったパビリオンの正面に

英語版「万博パビリオンの歩き方」も続々、掲載中/English version follows!

大阪・関西万博の開幕が迫る中、共同通信・大阪支社noteでは各国のパビリオンの魅力を伝える「万博パビリオンの歩き方」を配信しています。 実は、日本語に加えて、英文記事を執筆している本社の海外部でも英語でパビリオンを紹介しています。今回のnoteは、海外部の中西里彩子記者が担当。知られざるその仕事とやりがいについて教えてもらいました。 ▽ Kyodo News Plus海外パビリオンの記事を読めるのは、英文無料サイト Kyodo News Plus (KNP)です。すでに、

目玉はウイーン少年合唱団!~オーストリアパビリオン②~

2023年12月にチラ見せしたオーストリアパビリオンの情報を更新します!まずは第1弾の復習から。 その特徴は、何と言っても楽譜を連想させるらせん状のオブジェが目を引く外観ですよね。今回加わったのは、その材質です。万博会場全体のシンボルとなる巨大環状屋根「リング」と同様、現代建築における世界的なトレンドとなっている木材を使います。職人技を詰め込んだ工法により、台風にも耐える強度を兼ね備えているそうです。 パビリオンの中身についても、新たな情報が加わりました。展示内容のスムー

小さな都市国家が示す大きなビジョン~シンガポールパビリオン~

突然ですが問題です。シンガポールの国土面積、どのくらいだと思いますか?①東京都中央区、港区、千代田区の合算くらい②山手線の内側くらい③東京23区くらい―。 正解は③!東京23区よりやや大きい720平方キロメートルです。 シンガポールはいわゆる都市国家です。国土面積は小さくとも人口密度はトップクラス。世界的ハブ(拠点)空港であるチャンギ空港や、一度は行ってみたい高級リゾート「マリーナベイ・サンズ」、めざましい経済成長…。大阪も、シンガポールを参考にして関西空港の機能強化や日

ダイナミックな大海を表現~ポルトガルパビリオン~(隈研吾さん事務所設計!)

こんにちは。今日、ご紹介するのは、日本が初めて出会った西洋の国とされるポルトガルのパビリオンです。カタールと同じく、世界的な日本人建築家・隈研吾さんの事務所がデザインを手がけました(冒頭画像は隈研吾建築都市設計事務所提供)。 在ポルトガル日本大使館によると、1543年にポルトガル人が鹿児島県の種子島に漂着して以来、両国の歴史的な交流が始まりました。 ポルトガル人との歴史ある交流の跡は今の私たちの生活にも残っています。たとえばパン(pão)、タバコ(tabaco)、カステラ

破壊と再建から生物多様性を描く~ブラジルパビリオン~

こんにちは。今日は日本から地球のちょうど反対側に位置するブラジルのパビリオンについてご紹介します(冒頭画像は©Bia Lessa team)。 ブラジルは当初、参加国が自前で建設するパビリオンの「タイプA」を希望していました。ですが日本との時差や距離がネックとなり、2025年4月13日の万博開幕までに完成が間に合わない恐れが浮上。昨年11月、日本国際博覧会協会(万博協会)が建設を代行する簡素なパビリオン「タイプX」への移行を表明しました。移行により、フロアは複数から一つに絞

「生まれ変わり」を体験、大阪ヘルスケアパビリオン

大阪府と大阪市は2050年の都市生活を体験できる「大阪ヘルスケアパビリオン」を出展します。テーマは「生まれ変わり」を意味する「REBORN(リボーン)」。健康や医療分野の最先端技術に触れることができます。*冒頭のイメージは提供:(公社)大阪パビリオン 場所は、会場最寄りの地下鉄・夢洲駅を降りてすぐの好立地です。メインの「体験ルート」では、来場者はまず心血管や筋骨格などの健康データを測定。データから予想される25年後の姿をした自分のアバター(分身)と対面します。そして、協賛企

帆船モチーフ、白い幕で包まれたカタールパビリオン (隈研吾さん設計!)

カタールはアラビア半島にある中東の国です。首都ドーハは、日本のサッカーファンには「ドーハの悲劇」(さらには「ドーハの歓喜」)でおなじみです。 木造の建物全体を真っ白な幕で包むデザインのカタールパビリオンは、ダウ船と呼ばれるカタールの伝統的な帆船がモチーフです。設計したのは東京の国立競技場を考案した建築家隈研吾さん。隈さんは「ペルシャ湾に面したカタールは、日本と同じ海に近い国。両国を象徴する船をモチーフにした」と4月に行われた起工式で話しました。 パビリオンは池に囲まれ、ま

赤い糸が結ぶ「愛の賛歌」~フランスパビリオン~

ボンジュール! 今回お届けするのは愛と美食の国、フランスパビリオンです。(冒頭画像は©Coldefy & Carlo Ratti Associati)。 パビリオン紹介の前に、ちょっとした豆知識をご紹介。みなさんはフランスの一大観光名所であるエッフェル塔が、万博をきっかけに作られたということをご存知でしょうか。 フランスで初めて万博が開催されたのは第1回のロンドン万博から4年後の1855年。そして、フランス革命100年を祝う年である1889年のパリ万博に向けて建築されたの

砂漠に覆われた「神秘」の国がもたらす出会い~トルクメニスタン館~

中央アジアに位置するトルクメニスタンは旧ソビエト連邦を構成していた国の一つです。 パビリオンは3階建てで、黄色や緑の電飾が華やかに外装を彩ります。国土のほとんどを覆うカラクム砂漠の自然をイメージしています。大きな白馬をあしらったがデザインが印象的です。 国力を支えるのは豊富な天然ガス。首都アシガバートにもパビリオンさながらの白亜の大理石建造物が建ち並んでいます。荘厳な街並みは、近未来SFのようです。 大統領による強権的な国家運営で「中央アジアの北朝鮮」と呼ばれることもあ

巨大スクリーンでK-POP鑑賞も~韓国パビリオン~

今回紹介するのは、日本でもなじみ深い韓国のパビリオン。最近は文化や料理だけでなく、音楽(K-POP)やファッションの分野でも注目が高く、旅行先としても大人気ですよね。 筆者の私も実は大の韓国オタク。落ち込んだときには弘大(홍대、韓国・弘益大学)近くのライブカメラを動画サイトでぼーっと見るのが習慣になっているほどです。交換留学の経験もあり、新型コロナウイルス禍の前は何十回(!)も現地を訪れていました。 あのピリ辛の韓国風屋台おでん、特大サイズのアイスアメリカーノ、学生街のフ

生態系のつながりを体験し、感受性を呼び覚ませ~河森正治プロデューサーの「いのちめぐる冒険」~

万博の8人のプロデューサーによるテーマパビリオン第3弾です! 今回の万博の至る所に掲げられている「いのち」 そもそも「いのち」って一体なんでしょう。 アニメーション監督の河森正治さんは、発展途上国の子どもたちの輝く目を見た時、「いのち」を感じたそうです。(冒頭画像© 2022 Shoji Kawamori/Office Shogo Onodera, All rights reserved.) 「現代人が眠らせている観察力や感受性を呼び起こしたい」 そう願う河森さんが手が

鏡で覆われた“変幻自在”のパビリオン~落合陽一プロデューサーのnull²~

「ぬるぬると動く巨大な生き物みたいなパビリオン」 メディアアーティストの落合陽一さんは自身の手がけるパビリオンを、そう表現しています。(冒頭の画像©2023 Yoichi Ochiai / 設計:NOIZ All Rights Reserved.) 来場者は、鏡のような膜で覆われた建物の前に立つと、自分の姿や会場の風景がゆがんで映し出され、未知の感覚を体験できるそうです。 なぜ、ゆがんで映し出されるのでしょうか。仕掛けは、鏡面仕上げの膜の裏側に設置された機械で、それによっ