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5年後に退職する新卒サラリーマン【第三章】 (13)

第一章 <激動の就活編> は、こちらから
第二章 <戸惑いの新入社員研修編> は、こちらから


次長から説教をされている最中、気になって、気になって仕方がなかった一つのこと。

次長の鼻から飛び出た、鼻毛ミステリー・ワンダーランド

真実は、いつも一つ。


しかし、安斎はその「真実」に触れぬまま、次長に「ありがとうございます」と言って会議室を出た。


正論は、刃物だから。

正しいことを言えば、みんなが認めてくれて、周りが付いてきてくれるわけじゃない。そうなんだ。



つい先日も、大阪王将の仙台のお店が、従業員の暴露で炎上していたね。


この「元従業員」の人は、正論を言っているんだと思うよ。

正しいことをしているんだと思うよ。恐らくだけど。

でも、「正しさ」は、凶器になる。
「正しさ」は、時として、人を傷つける。



私は、この「元従業員」の人が不幸な結末を迎えないことを祈っているよ。



だから……
私は言わなかったんだ。

次長には。

鼻毛のことを。


「お前、さっきから偉そうなこと言ってるけど、鼻毛でてんぞ」って。

言わなかったんだ。


夏の広島。

真実は、瀬戸内海へと消えていく。


そして、その日から、新卒営業マン・安斎の戦いの日々が始まった。

「いらっしゃいませ!!
  あッ!! 西田さん! いつもありがとうございます!!!」

「あら、安斎さん、今日も頑張ってますねぇ」

「いえいえ、いえいえいえいえ! 仕事ですから!!」

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