5年後に退職する新卒サラリーマン【第五章】 (8)
第一章 <激動の就活編> は、こちらから。
第二章 <戸惑いの新入社員研修編> は、こちらから。
第三章 <空前絶後の広島出向編> は、こちらから。
第四章 <忍び寄る海外営業部配属編> は、こちらから。
「今回、ハードウェアの新規開発は一旦見送りつつ、中国語特化ソフトウェアの専用開発・実装という新規製品プロジェクトを、本社・中国支社の共同体制により、今後進めさせていただきたく……」
中国個別会議の冒頭、まずは私から、過去3週間ずっと作っていた「本社案」を、一通り説明する。
作っていた、と言っても、パワポを作ったのが私というだけで、その案自体は鈴木課長の思惑通りになるように何度も何度も修正をさせられたもので、最初に出した「安斎案」は、もう跡形も残っていないのだが。
中国駐在員・金井営業部長が、ギラリと光る厳しい眼差しでこちらを見ていた。が、私の説明の途中で口を挟んではこなかった。
「まだ」口を挟んでいない、という表現の方が正しいのかもしれない。
その隣では、何やら、周課長が沼田さんに「これ、一体どういう意味だ?」という感じで、中国語でコソコソと話をしている。
その表情は、やや重い。
この会議の結末がどうなるか、私にはもう想像は付いている。
この会議は、炎上する。
サポートいただいたお金で「餃子とビール」を購入させていただき、今後の執筆活動に役立てたいと思います。安斎に一杯おごりたい方は、ぜひサポートをお願いいたします。