きよもりよりもよき

古賀にこみです。のんびり平家物語の各章段を最初から順番に1Pまんがにしています。現在ブ…

きよもりよりもよき

古賀にこみです。のんびり平家物語の各章段を最初から順番に1Pまんがにしています。現在ブログからnoteに引っ越し中。あまりにのんびりしすぎてもう10年以上経ってしまいました。いとやばし。

記事一覧

【平家物語】巻04_05 信連

冒頭に以仁王が十五夜の月を見ながら不安を語る場面があって、その後「子の刻」に追捕の兵が屋敷に押し寄せています。旧暦8月で日が落ちるのが遅いであろうこともあわせて…

【平家物語】巻04_04 鼬之沙汰

タイトルは「いたちの沙汰」。ほっこり動物ランド感がありますが、なかなかシリアスな内容の章段です。 そういえば、むかし、地方にある、昔からのすごく立派なお屋敷に仕…

【平家物語】巻04_03 源氏揃

いよいよ以仁王登場です。 以前に私は源頼政主役の短いまんがを描きましたが、そこではこの物語とは逆、決起を以仁王のほうが頼政に持ちかける形で描きました。 当時の私の…

【平家物語】巻04_02 還御

高倉院の遠足は、2章段も使ってるわりに、あっさり終了。 この章段の本題はおそらく即位の儀のほうなのですが、そのシーンは前回描いちゃってますので、今回は遠足中のほ…

【平家物語】巻04_01 厳島御幸

ついに巻四に突入しました。 この巻から本格的に戦闘シーンが始まります。 ようやく軍記物語っぽくなっていくぞ~!と私もワクワクです。 そんな巻四冒頭では、安徳天皇登…

【平家物語】巻03_19 城南之離宮

大人の高倉天皇は初登場ですね。治承3年(1179年)時点で18歳。 最初、もうちょっと大人っぽい、かつ暗い容姿で考えてたのですが、でも華やかな滋子の息子だしなぁ…と、…

【平家物語】巻03_18 法皇被流

近臣をイケニエに差し出しながらものらりくらりと清盛の怒りをかわして来た後白河院ですが、重盛の死への扱いが最終的な引き金になって清盛はマジギレ。後白河はついに窮地…

【平家物語】巻03_17 行隆之沙汰

しょっぱなは物騒なエピソードから始まります。 大江さんはこの章段のなかでは基房の部下として紹介されていますが、同時に八条院暲子内親王とも関係が深く、彼女の所領の…

【平家物語】巻03_16 大臣

保元の乱以来の、藤原さんちの兄弟の確執は続いてます。 頼長の息子である師長のほうはむしろ戦線離脱気味で、忠通の息子達の血縁でエキサイトしてるわけですが、このあと…

【平家物語】巻03_15 金渡

福原へ赴いて清盛をなだめようとした静賢への、清盛の反論は主に 1)身を粉にして国事に尽くしてきた重盛が亡くなったのに、後白河院は管弦の遊びや御幸などに興じ、哀し…

【平家物語】巻03_14 金渡

さて、前章段から引き続き「重盛さよならエピソード」です。 「え…あんた、日本の大臣として宋国の医療は受けられませんって言うてたやん…。医療はダメだけど御祈祷はOK…

【平家物語】巻03_13 燈炉之沙汰

前章段で重盛は亡くなりましたが、「重盛今までありがとう特別番組」的に、彼の生前のエピソード紹介が続きます。このあとにも2つエピソードが続きます。作者、どんだけ重…

【平家物語】巻03_12 無文

1179年の春に俊寛が鬼界ヶ島で死去。 5月に辻風、その後熊野詣に行って、その夏に重盛は亡くなってしまいます。この章段で語られるのはそのちょっと前の話ですね。 未来を…

【平家物語】巻03_11 医師問答

いよいよ重盛の最期が近づいています。 清盛との対立描写が繰り返されていたので、胃は痛めていただろうと思われましたが、身体の不具合描写があったわけではない重盛。こ…

【平家物語】巻03_10 ツジカゼ

「鹿ケ谷の陰謀」首謀者処分のエピソードは終わり、ここからは重盛の死に向かってお話が進みます。 さて、この辻風ですが、同時代の貴族の日記等からみると、実際に起きた…

【平家物語】巻03_09 僧都死去

巻3前半の主役格・俊寛がついに亡くなりました。 成経たちが熊野詣ごっこをしているときも参加しなかった俊寛が、最期に殊勝に念仏を唱えて死んでいくというのが、ああほ…

【平家物語】巻04_05 信連

冒頭に以仁王が十五夜の月を見ながら不安を語る場面があって、その後「子の刻」に追捕の兵が屋敷に押し寄せています。旧暦8月で日が落ちるのが遅いであろうこともあわせて考えると、けっこうギリギリの脱出です。そりゃ笛も忘れるわ。 敵の大太刀&大長刀相手に奮戦する信連の姿も魅力的ですが、このあとしばらく戦闘シーンを描く機会はあるので、今回は以仁王の笛の場面のほうにしました。 女装の以仁王がぴょんと溝を飛び越えるのを見て、通行人が「はしたない女房だな!」と思った……とか、ちょっとした小ネタ

【平家物語】巻04_04 鼬之沙汰

タイトルは「いたちの沙汰」。ほっこり動物ランド感がありますが、なかなかシリアスな内容の章段です。 そういえば、むかし、地方にある、昔からのすごく立派なお屋敷に仕事で行ったとき、そこの奥様が「いたちが屋根裏を走り回ってて、うるさくて…」と困り顔だったのを思い出します。旧いお屋敷あるあるなんですかねぇ。 この奥様が「古い屋敷だから残してほしいとみんな言うけど、お金を出してもらえるわけでもなし。私だってシステムキッチンと床暖房の最新のおうちに住みたい…!」とおっしゃっていたのが今も

【平家物語】巻04_03 源氏揃

いよいよ以仁王登場です。 以前に私は源頼政主役の短いまんがを描きましたが、そこではこの物語とは逆、決起を以仁王のほうが頼政に持ちかける形で描きました。 当時の私のなかでは、頼政が率先して決起を提案するイメージが持てなかったんですよね。むしろ、八条院の莫大な資産を背景に(以仁王は八条院の養子)できる以仁王のほうが高倉帝が譲位して次の代に皇位継承権が移ってしまったこのタイミングで魔が差したのかなと。 平治の乱で平家側に就いて今の地位を手に入れたものの後ろめたさがずっと拭えなかった

【平家物語】巻04_02 還御

高倉院の遠足は、2章段も使ってるわりに、あっさり終了。 この章段の本題はおそらく即位の儀のほうなのですが、そのシーンは前回描いちゃってますので、今回は遠足中のほのぼの1コマを漫画にしました。 藤原邦綱はお金持ち。不動産持ちであったようで、高倉天皇の里内裏は彼のお屋敷のひとつです。このとき、58歳とかそこら。内侍、…もしたパパ活!?邦綱には娘が何人かいまして、有名どころでは、重衡の奥さんであり、安徳天皇の乳母でもある藤原輔子。 なので、ちょっと似た目元にしてます。小さすぎてわ

【平家物語】巻04_01 厳島御幸

ついに巻四に突入しました。 この巻から本格的に戦闘シーンが始まります。 ようやく軍記物語っぽくなっていくぞ~!と私もワクワクです。 そんな巻四冒頭では、安徳天皇登場です。 本文では三歳と出てきますが、彼は治承2年の11月生まれですから、生まれて2ヶ月ほどで2歳。 治承4年2月時点では、今の1歳半とかそこらですね。 が、この時点ではまだ神器の移動が行われただけで、即位の礼は行われていません。 漫画ではわかりやすくバックに高御座を描いてますが、実際に新帝がここに立つのは4月の即

【平家物語】巻03_19 城南之離宮

大人の高倉天皇は初登場ですね。治承3年(1179年)時点で18歳。 最初、もうちょっと大人っぽい、かつ暗い容姿で考えてたのですが、でも華やかな滋子の息子だしなぁ…と、ちょっと可愛い系にしてみました。 さて、「どんなにめちゃくちゃやってた人に対しても、落ちぶれたら全力で美化して同情する」という平家物語のいつものクセそのままに、今回も後白河院が全力同情されてます。 末尾の、離宮の寂しい冬景色の描写とか、しんみりくるわけですが、どうなんですかね。そんなしんみりしてたような気がしな

【平家物語】巻03_18 法皇被流

近臣をイケニエに差し出しながらものらりくらりと清盛の怒りをかわして来た後白河院ですが、重盛の死への扱いが最終的な引き金になって清盛はマジギレ。後白河はついに窮地に陥りました。 ついて来いという院の命令に宗盛が従わないというシーンがありますが、常に弱者側に同情的なのが平家物語の地の文ですから、ここでも院に同情的です。でも、直前の章段を見てると、今になって「重盛はちゃんとしてたのに宗盛は頼りない」みたいなコト言ってる後白河院に対して、「いやいやいや、そのちゃんとしてる重盛の遺領

【平家物語】巻03_17 行隆之沙汰

しょっぱなは物騒なエピソードから始まります。 大江さんはこの章段のなかでは基房の部下として紹介されていますが、同時に八条院暲子内親王とも関係が深く、彼女の所領の管理にも携わっていたようです。八条院といえば、彼女の猶子のひとりがあの以仁王。また、彼女の側近の女性を平頼盛(清盛の異母弟で、清盛とはやや対立気味。のちの平家都落ちにも加わらなかった。)が妻にしています。そんな感じで、八条院は清盛とは非友好関係にあります。 清盛は、鹿ケ谷の始末でもそうでしたが、八条院だったり後白河院だ

【平家物語】巻03_16 大臣

保元の乱以来の、藤原さんちの兄弟の確執は続いてます。 頼長の息子である師長のほうはむしろ戦線離脱気味で、忠通の息子達の血縁でエキサイトしてるわけですが、このあともずっとこの陰湿な争いを続けていくわけです…もうそれがアイデンティティなんだろうけど。。。 ちなみに、藤原頼長の息子3人は保元の乱後に配流になり、唯一生還したのがこの師長。説話集などに残る彼のエピソードを読んでいると、なるほど兄弟のなかで彼だけ生き残ったのもわかる、みたいなとこがあります。アーティスト脳というか、マイ

【平家物語】巻03_15 金渡

福原へ赴いて清盛をなだめようとした静賢への、清盛の反論は主に 1)身を粉にして国事に尽くしてきた重盛が亡くなったのに、後白河院は管弦の遊びや御幸などに興じ、哀しみ嘆く様子もない。 2)1)でありながら、重盛の知行であった越前国を死後にとっとと召し上げた。 3)中納言の欠員があったときに、清盛娘婿である藤原基通を推薦していたのに、関白藤原基房の子(師家)を中納言にした。 4)鹿ケ谷の陰謀も、院の近臣が勝手にやったことではなく、院の承認があってのことのはず。 です。 このシーン

【平家物語】巻03_14 金渡

さて、前章段から引き続き「重盛さよならエピソード」です。 「え…あんた、日本の大臣として宋国の医療は受けられませんって言うてたやん…。医療はダメだけど御祈祷はOKってどんなダブスタ…」などと思うわけですが、平家物語の語り手はそんなツッコミは一切しません。これはプライベートな依頼なのでセーフ、ってことなんですかね。 このお話の中では「今も重盛の往生を願う祈りは続いてます」と〆てますが、21世紀を生きる我々は中国でそんな祈りなんて続いてないことを知ってるわけでして。 ただ、彼の

【平家物語】巻03_13 燈炉之沙汰

前章段で重盛は亡くなりましたが、「重盛今までありがとう特別番組」的に、彼の生前のエピソード紹介が続きます。このあとにも2つエピソードが続きます。作者、どんだけ重盛大好きなんだ… これは重盛の深い信心を褒め称える章段なんですけど…ですけど… 現代感覚で「コンパニオンの美女軍団を各地のモデル事務所からかき集め、極楽を再現」って置き換えると、 おっさんの極楽かよ!! と突っ込みたくなります。重盛は大真面目なんだと思いますが。 清盛のほうは、厳島神社といい港の建設といい、装置のス

【平家物語】巻03_12 無文

1179年の春に俊寛が鬼界ヶ島で死去。 5月に辻風、その後熊野詣に行って、その夏に重盛は亡くなってしまいます。この章段で語られるのはそのちょっと前の話ですね。 未来を予見…みたいに書かれてるけど、ノイローゼ状態であらぬ幻覚を見てたんじゃないかと心が痛む…。 春日大明神というのは、藤原さんちの氏神です。その神様に父親の首がとられる夢を見る…って、予知夢というよりも、父親と、貴族&院たちの間に立って精神すり減らしてたんじゃないだろか。 彼と同時期に、「摂関家の財産をかすめとった

【平家物語】巻03_11 医師問答

いよいよ重盛の最期が近づいています。 清盛との対立描写が繰り返されていたので、胃は痛めていただろうと思われましたが、身体の不具合描写があったわけではない重盛。ここに来てついに心労が体に伝わっちゃたんですようかね、倒れてしまいました。 この章段の前半は、前章段での占い結果通りに身を慎んで熊野詣する重盛のお話。めちゃめちゃながい一人台詞(お祈りなんだけど)に、彼のストレスフルっぷりが表れているようでもあります。 ・己の倫理観と、清盛から求められている立場の齟齬が苦しい ・このま

【平家物語】巻03_10 ツジカゼ

「鹿ケ谷の陰謀」首謀者処分のエピソードは終わり、ここからは重盛の死に向かってお話が進みます。 さて、この辻風ですが、同時代の貴族の日記等からみると、実際に起きたのは『平家物語』で記載されているよりも1年後、治承4年の4月末のできごとでした。『方丈記』の第二段にも「治承四年卯月のころ、中御門京極のほどより、大きなる辻風おこりて、六条わたりまで吹ける事侍りき。」と記載されていますが、『平家物語』での描写は方丈記にそっくり。 方丈記の記述を平家のほうがパクったのではないかと言われて

【平家物語】巻03_09 僧都死去

巻3前半の主役格・俊寛がついに亡くなりました。 成経たちが熊野詣ごっこをしているときも参加しなかった俊寛が、最期に殊勝に念仏を唱えて死んでいくというのが、ああほんとに燃え尽きちゃったんだな…と悲しい。 興味深いのは有王の性格です。 バカ正直な人なんですよね。精神的に参ってる俊寛に、妻子が死んじゃったのをつぶさに語るのは、まぁ仕方なかったとしても、帰京後には姫君に、「お手紙を読んで、お父上はいよいよ弱って亡くなりました」と報告。 ……おいおい! もうちょっとオブラートに包めん