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世界一「夜中の卵がけごはん」がおいしく食べられる器 陶芸家・井上茂インタビュー vol.2

自由が丘「CLOTH &CROSS(クロスアンドクロス)」の企画展「お茶の時間」にも参加中の陶芸家・井上茂インタビュー後編。〈vol.1はこちら〉
「クロスアンドクロス」といえば、モデルやデザイナーとして活躍する雅姫さんのお店。インテリアや生活雑貨のセンスに定評がある彼女も、井上さんの長年のファンだという。「土もの系」と呼ばれるその器には、どんな魅力があるのだろうか?

>その人の歴史が刻まれるような器を

器がちょっと欠けたりすることを「育つ」っていう言い方を僕らはするんです。使っていくと、水だとかご飯だとかによって、器の表情が変わっていくんですよね。今は「硬い」ような雰囲気なんですけど、使っていくとどんどん良くなっていく。革のバッグと一緒で、10年使ったお茶碗って、その人の10年が刻まれるんですよ。僕はそういう風に使っていただける器を作りたいと思っています。

僕は食器が作りたかったので、アーティスティックなものが作りたいとは思っていません。特別な時に使う器ではなくて、毎日使ってくださるような日常のものが作りたい。それが僕の役目というか、使命というか。せっかくこうやって並んで買っていただいた人たちに、ずっと長い間楽しんでいただけるような物作りがしたいなって思っています。

>SNSでつながる陶芸ファンたち

昔と違って、今はSNSという発信の場もありますよね。写真に撮ったものを誰かに見てもらって、それに「素敵」って共感してもらえる時代。(SNSを通して)僕の器を使ってくださる人同士が仲良くなるっていうこともあるので、それも全然ありだと思うんですよ。「あの人はあの器をこんな風に使ってるんだ」とか「こんな風に料理が映えるんだな」とか。それが心の安らぎになったり、花を生ける楽しみになったりしているのであれば。

>卵がけごはんがおいしく感じる器を

今は女性の方もすごく夜遅くまで働いてみえるような時代。そういう時に器って、強い力を発揮すると思うんです。変な話、こういうのってレトルトでもすごくおいしく感じるんですよ。見た目ってすごく大事。レトルトのプラスチックの器のままだと味気ないんだけど、それをこれに載せるだけで「ちょっとおいしく感じるよね」「今日一日がんばったよね、私」みたいになれれば、この器の役目はそれでいいと僕は思っているんです。

これにすごく豪華なものを載せる人もいれば、卵がけごはんでもいい。僕的にはそっちの方がいいかな。だからあまり目立つわけでもなく、丈夫で扱いやすいっていうところを考えて作っています。

僕はある程度、古典的なことをやっているんだけど、今の食生活に合わせてワンプレートで使いやすいものとか、オールマイティに使えるものだとか、現代に沿ったようなものを作りたいですね。


現在、代官山「無垢里」で5月8日(水)まで開催中の企画展「春のむくりのお茶じかん2019」にも参加中の井上さん。その後は5月25日(土)より京都「テノナル工藝百職」にて個展。来秋には、アメリカの西海岸、サンディエゴでも展示会やワークショップを開催するそう。海外ファンも注目するご本人のインスタグラムで日々、情報が更新されるのでぜひチェックを。

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