RPAは将来に向けて本当に有効なツールなのか。

DXと一言で言っても様々な方法論があると思います。
私の会社でも、トップからDX活用して効率化せよと指示が下りて、慌てて対応を始めた人が多くいます。

その一連の流れの中で、最初に活用されたのがRPAでした。
RPA推進課という部署ができたところもありますし、改善発表会でもRPAの事例が多くありました。

それらで報告される成果は決まって「作業時間マイナス●●時間で効率化を実現!」です。

そりゃ、人間のやっている作業を機械がやってくれるわけですから、作業時間は少なくなります。
今は少しでも業績を改善しなければいけませんから、残業が減ることによって労務費を下げるのも必要な施策でしょう。

でも、私はRPAは短期的な施策に過ぎず、これに頼るとむしろ将来に悪影響があるのではと思っています。

理由は、今の作業を是とした自動化であるが故に、
・作業がブラックボックス化され、改善されることがなくなる。
・なんでも自動化するのが効率化だというマインドになり、業務そのものの意義、課題を疑う発想がなくなる。
の2点です。

作業がブラックボックス化され、改善されることがなくなる。

RPAは人の手を介在せずにデータが出てくるわけですから、文字通りブラックボックス化されます。
例えば、その作業は、毎月の販売実績データからエラーを抽出する作業だったとします。
エラー抽出ロジック(を作業に落とし込んだもの)はRPAした時点での担当者の知見をトレースするモノですから、その時点では通用するかもしれませんが、将来は通用するかわかりません。
製品も、売り方も、そのデータを作った担当者が変われば、発生しうる事象も変わるはずですが、それにアジャストすることはできません。それによって、エラーを見逃すリスクが出るでしょう。
また、そもそも、そのエラーがなぜ発生したか考える機会が奪われます。販売する営業がデータ作成の際に注意すべきこともあるかもしれませんが、そういうフィードバックをすることもできませんから、やはりこれは会社としての業務品質を下げ続けていることになります。進化しないということは後退しているのと同義だと思います。

なんでも自動化するのが効率化だというマインドになり、業務そのものの意義、課題を疑う発想がなくなる

効率化という言葉によって、作業時間を短くするのが目的になってしまうことで、自分の仕事がなんのためにやっていることなのか、なんのために仕事をしているのか考えなくなってくると思っています。
先ほど述べたように、短期的に利益を確保すべく作業時間を短縮するのは重要です。
しかしそれはあくまで短期的なモノです。
私たちが将来に向かって社会に貢献し、存在し続けるためには、今後何をすべきか考えなければいけません。
業務の優先順位を付けた結果のRPAならばいいでしょう。でも、RPAで時間を削ることが目的ではないはずです。
やらなければいけない事を踏まえてツールを考えるなら、RPAを推進することは目的ではなく、まず業務改革を議論するステージがあって然るべきです。
しかし今はどれだけ時間を削ったかが評価のポイントになっています。
これによって、今の仕事のアプローチそのものから見直して、課題を提起していこうというマインドは一切出てこなくなっています。

データは与えられるものと思っているメンバーが少なからずいることは事実で、「何に目を向けて課題を見つけるか」を考えられなくなっています。それは人材面で大きな損失だと思っています。

RPAというものは素晴らしい技術だと思います。でも、それによって私たちが衰退しないよう、ツールに使われない事を考えていきたいですね。

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